2007/01/04

『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』"Proof"

★好きです。こういう、ぱっとしないけれど、まともに考えることのできる、知性で生きる人。

狂ってしまった天才数学者をアンソニー・ホプキンスが演じているので、その天才という面が狂気と同じくらいにリアリティをもって感じられる。一方、その血を引いているかもしれないという不安から、自分の天才的な部分さえも肯定できないでいる彼の娘キャサリン(グウィネス・パルトロウ)。

その数学的大発見は彼女がなしたものか、父親が狂気の隙間で解いたのかというミステリーじみた展開がまずおもしろい。さらに、父の教え子ハルが彼女の真の理解者、そして恋人になれるのかなれないのかという展開に、"常識的"な姉の雑音が入りハラハラさせられる。

私が特に興味深いと思ったのは、知的な彼女にとって、"愛"は論理を超えた気持ちで示されないと安心できないものであるのに、それと同時にやはり論理的にも証明されないと安心できないという点。最後のベンチのシーンを見ながら、「ほらね」と心の中でクスッと笑ってしまった。

*数学者モノとしては他に、「博士の愛した数式」「ビューティフルマインド」「グッドウィル・ハンティング」がある。

2004年/監督:ジョン・マッデン「恋におちたシェイクスピア」/グウィネス・パルトロウ「愛しのローズマリー」「リプリー」「恋におちたシェイクスピア」「スライディング・ドア」「セブン」/アンソニー・ホプキンス「白いカラス」「9デイズ」「アトランティスのこころ」「ハンニバル」「ハーモニーベイの夜明け」「ジョー・ブラックをよろしく」「羊たちの沈黙」「日の名残り」/ジェイク・ギレンホーク「デイ・アフター・トゥマロー」「遠い空の向こうに」

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2006/07/10

『博士の愛した数式』

☆優しい気持ちを乗せたことばの繰り返しは心地よい

こんなに素敵な映画だったとは。ここ数年、流行している「記憶モノ」制覇のために見たのだが、そんな理由は吹き飛んでしまうほど、心温まる、美しい、良い映画だった。

80分しか記憶が続かない数学の博士。10歳の息子と2人暮らしの家政婦は、博士の家に行く度に「新しい家政婦です」から始まる挨拶をする。博士は靴のサイズを聞く。そして24センチは4の階乗で潔い数字だと誉める。

同じことの繰り返しであっても、優しい気持ちの繰り返しは実に心地よい。同じことがきっかけで違う形で表れても、それは博士の純粋で優しく、知的で感受性豊かな気持ちのバリエーション。

数式の奥深さと心の奥にある優しさとがぴったり合って、細やかな深淵を覗くことができる。配役が5人ともぴったり。音楽もすばらしい。

原作のほうも読んで、数式の世界にもう少し触れてみたいと思った。
[追記] その後、原作を読んだ。映画と違っているところもあったが、映画はもとの味を損なわずに描いていると思った。

2005年/監督:小泉堯史/寺尾聰「阿弥陀堂だより」/深津絵里/斎藤隆成/吉岡秀隆/浅岡ルリ子
博士の愛した数式@映画生活

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