2006/06/29

『夏休みのレモネード』"Stolen Summer"

☆相手の宗教に土足で踏み込むようで納得いかない部分も残ったが、考える子どもは文句なく可愛い

宗教について考える子どもをテーマとした作品。(「神様追求子どもモノ」と命名)

「子どもの持つ素朴な疑問」という形を取ることが、宗教をテーマにする映画にとって、有効な手段であることはわかる。なにしろ「子どもの持つ素朴な疑問」なのだから、宗教的タブーに触れても許されてしまう。

しかし、異教徒を改宗させるというのは奇想天外を通り越して、ちょっとやりすぎではないだろうか。私が、ユダヤ人とカトリック教徒が混在する複雑な地域に住んだことがあるから過敏に反応しているだけだろうか。そこでの生活で、私は"相手と混じり合わないこと"によって微妙な均衡を保つことが、生活の知恵として生み出されたものであることを実感した。

カトリックの大家族に生まれたピートとユダヤ教のラビの息子ダニーとの交流自体は微笑ましい。また、ラビの、異教徒の子どもや自分の子どもに接する態度には心を打たれる。

しかし、自分の子どもが十字架を切る、それもよくわからないままにその行為をしているのを見る時のラビの驚愕には想像できないほど、痛ましいものがあると思う。「子どもの持つ素朴な疑問」という隠れ蓑を被った上でのやりすぎがあるように思えて、心からは楽しめない部分が残った。

*「神様追求子どもモノ」には、他に『翼のない天使』や『ぼくの神様』があります。

2002年/監督:ピート・ジョーンズ/エイダン・クイン「ミュージック・オブ・ハート」「プラクティカル・マジック」/ボニー・ハント「グリーン・マイル」「ジュマンジ」/ケヴィン・ポラック/ブライアン・デネヒー

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2006/05/01

『翼のない天使』"Wide Awake"


物事を深く考える子どもは可愛らしい。この映画の場合、可愛らしさを通り越して痛々しくさえあるのだが…。

可愛がってもらっていた祖父に死なれ、死後の祖父を心配するあまり、神の存在を疑い、信仰について悩み出す少年。苦しみは彼の年齢には深すぎる。両親も、カトリックの学校の教師達も、神父様でさえ、答えを示すことができない。しかし、まわりの大人が暖かく、真摯に向き合い、幼い子どもの悩みを見守る様子はとても良い。

NHKのこどもニュースの制作者が番組の制作意図について語ったのを聞いたことがある。「こどもニュース」はこどもだけを視聴者として想定して作っているわけではなく、こどもの疑問という形を取ることによって、抵抗なく、大人の疑問にもわかりやすく答えることを考えて作っていると。

この映画はそれに似たところがある。子どもの目を通すことによって、ナイト・シャマラーン監督は、自分の語りたかった宗教観をていねいに描き出すことができたのではないだろうか。後の作品に流れる思想が素直な形で読み取れる作品だ。

1998年/監督:M・ナイト・シャマラン「ヴィレッジ」「サイン」「アンブレイカブル」「シックス・センス」/ジョセフ・クロス/ロージー・オドネル/デニス・リアリー

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2004/12/09

『ぼくの神様』"Edges of The Lord"

-=-=-[作品のメッセージ] ネタバレなし-=-=-

 ナチスのユダヤ人強制連行を逃れるため、11歳のロメックは、ポーランドの片田舎の農家に、ただ1人預けられる。

 心の中ではユダヤの神を信じていることを隠しながら、カトリックとしての生活を送るロメック。彼の、神父の部屋での一場面。神父は心のうちを語るロメックに正餐式のために用意したパンをすすめる。ロメックは、キリストの肉を意味するパンを口にすることはできないと、たじろぐ。その心を理解した神父は、これは丸いパンの型を抜いたあとのはじっこ(=edge)だから大丈夫だと言う。

 一方、ロメックが預けられた家の子、トロは、村人がナチスに虐殺される現場を見てしまったことをきっかけに、深く傷つき、犠牲者としてのキリストに自分を同化させようと、奇怪な行動を取るようになる。

 最後の場面に、このトロの行動と、はじっこ(=edge)の場面とを重ね合わせると、キリスト教とユダヤ教の共存の図式が、子ども向けの絵本のように単純な形で浮き出してくることがわかる。

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2002年
監督:ユレク・ボガエヴィッチ
トロ/リアム・ヘス
ロメック/ハーレイ・ジョエル・オスメント(「シックス・センス」「ペイ・フォワード」「A.I」
ヴラデック/リチャード・バネル
神父/ウィレム・デフォー(「イングリッシュ・ペイシェント」「ルル・オン・ザ・ブリッジ」)
2002年
*「 」内は、その人の作品で見たことのあるものの題名。


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