2006/05/01

『翼のない天使』"Wide Awake"


物事を深く考える子どもは可愛らしい。この映画の場合、可愛らしさを通り越して痛々しくさえあるのだが…。

可愛がってもらっていた祖父に死なれ、死後の祖父を心配するあまり、神の存在を疑い、信仰について悩み出す少年。苦しみは彼の年齢には深すぎる。両親も、カトリックの学校の教師達も、神父様でさえ、答えを示すことができない。しかし、まわりの大人が暖かく、真摯に向き合い、幼い子どもの悩みを見守る様子はとても良い。

NHKのこどもニュースの制作者が番組の制作意図について語ったのを聞いたことがある。「こどもニュース」はこどもだけを視聴者として想定して作っているわけではなく、こどもの疑問という形を取ることによって、抵抗なく、大人の疑問にもわかりやすく答えることを考えて作っていると。

この映画はそれに似たところがある。子どもの目を通すことによって、ナイト・シャマラーン監督は、自分の語りたかった宗教観をていねいに描き出すことができたのではないだろうか。後の作品に流れる思想が素直な形で読み取れる作品だ。

1998年/監督:M・ナイト・シャマラン「ヴィレッジ」「サイン」「アンブレイカブル」「シックス・センス」/ジョセフ・クロス/ロージー・オドネル/デニス・リアリー

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2006/02/10

『セント・オブ・ウーマン ~夢の香り~』"Scent of a Woman"


ストーリーそのものより、いくつかの見せ場を楽しむ映画。

全盲の退役軍人フランク(アル・パチーノ)と日本語にするなら「玉を転がすような」という表現がぴったりの上品な笑い声の女性ドナ(ガブリエル・アンウォー)と踊るタンゴ。「本当は踊りたいのだけれど、失敗するのが恐いから…」という女性を、ていねいにエスコートし、徐々に大胆に美しく踊らせていく。この場面、男としてのフランクの魅力が輝いて見える。

そして、クライマックスも。大きな見せ場がある。

フランクの女性観は今ひとつ好きになれないが、使っている香りを言い当てられてうれしくなる女性の気持ちはわかる。

エリート校モノ、『モナリザ・スマイル』『卒業の朝』の後、これを見た。エリート校で、親のお金で学ぶ上流のお坊ちゃま達の中で、苦労して奨学金をもらい、アルバイトしながら学ぶチャーリー(クリス・オドネル)の持つ、品の良い笑顔が実に良かった。

1992年:監督:マーティン・ブレスト/アル・パチーノ「シモーヌ」「ゴッドファーザー」/ジェームズ・レブホーン「ミート・ザ・ペアレンツ」「リプリー」「インディペンデンス・デイ」クリス・オドネル「クッキー・フォーチュン」/フィリップ・シーモア「リプリー」「マグノリア」「パッチ・アダムス」「ビッグ・リボウスキ」「ツイスター」
*「 」内は見たことのある作品名

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2006/01/25

『卒業の朝』"The Emperor's Club"


地味な映画だ。しかし、内省的で穏やかなその主張は『華氏911』より厳しく、アメリカの社会と政治腐敗に一石を投じるものだと感じた。『華氏…』と違って、その一石は派手なマスコミにではなく、観る人ひとりひとりの心の底に投じられたのだが。

ハンダート先生(ケビン・クライン)は古代地中海史を通して、人間の正しい生き方を考えさせようとする背筋をピンと伸ばした厳格な教師。エリート男子校で学ぶ生徒達もそれぞれに可愛い。そこに来た異分子、下院議員の息子ベル。

厳格な教師が人間らしさをもってした小さな「間違い」。それはやはり間違いだったのか…。熱血教師モノのような安易な解決をせず、それぞれの人間がすべてを抱えて生きていかなくてはならないことを描いている点が共感できる。

先日、教師モノのエリート女子校版『モナリザ・スマイル』を観たので、今回はエリート男子校版『卒業の朝』を観てみたのだが、対比できないほど重みの異なる映画だった。モナリザのほうはあのヒラリー・クリントンの体験を書いた本から発想を得ているというのだから、むしろ逆の立場と言えるほどかけ離れたものだったのかもしれない。

2002年/監督:マイケル・ホフマン/ケビン・クライン「デーヴ」「遠い夜明け」「

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2006/01/18

『モナリザ・スマイル』"Mona Lisa Smile"


専業主婦であることが重要であった時代、保守的な女子大に進歩的な思想を持ち込んだ女教師キャサリン・ワトソン(ジュリア・ロバーツ)の話。それなのに、私はその進歩的教育より、ボストンの名門女子大ウェルズリーで行われていた保守的な花嫁教育のすばらしさに感銘を受けてしまった。

上流階級の主婦となるのにふさわしい教養と、さまざまな局面で機転を利かす知恵、それらを教える名門女子大のすばらしさ。そこで学ぶ女子学生達の勤勉さと頭脳。これがアメリカの古き良き時代の伝統の元となっていたのではないだろうか。

しかし、よく考えてみると、キャサリンは「進歩的になれ」と教えたわけではない。価値観にとらわれることなく、自由な目で物事を見、自分の頭で考えることの大切さを説いただけだ。もしかすると、現代を生きる女性達もまた別の、新しそうな匂いのする呪縛にとらわれているだけなのかもしれない。

中にいくつか面白い場面があった。まず、最初の授業での新人教師いびり。どうせ新人いびりをするなら、こうでなくてはと、見ていて爽快だった。そして、感動的だったのは、ギゼル(マギー・ギレンホール)がベティ(キルスティン・ダンスト)を強く抱きしめる場面。

知的で、考え深げなジュリア・ロバーツがぴったりの役所を演じる一方、若手女優の演技を見るのも楽しかった。

*エリート校モノとしては他に『卒業の朝』『セント・オブ・ウーマン~夢の香り~』『翼のない天使』『クルーエル・インテンションズ』『グッド・ウィル・ハンティング』などがあります。

2003年/監督:マイク・ニューウェル/ジュリア・ロバーツ「オーシャンズ11」「ノッティングヒルの恋人」「グッドナイト・ムーン」「ベスト・フレンズ・ウェデイング」/キルスティン・ダンスト「エターナル・サンシャイン」「ヴァージン・スーサイズ」「ワグ・ザ・ドッグ」「ジュマンジ」「若草物語」/ジュリア・スタイルズ「恋のからさわぎ」/マギー・ギレンホール
モナリザ・スマイル@映画生活

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