2008/02/14

『アメリカン・ドリームズ』"American Dreamz"

☆うすっぺらで、最後はめちゃくちゃなパロディなのに笑える

パロディの元となったTV番組「アメリカン・アイドル」はよく見ていた。特に、イギリス人審査員、サイモンの真実を突いた的確な毒舌が好きだったし、それによって毎週出てくる出場者の才能の芽がどんどん伸びていく様子を楽しんで見ていたので、ヒュー・グラントの俗物的ニセモノらしさには大笑いだった。

いつも英国英語の理路整然とした表現に言い負かされているアメリカ人にとって、こういう英国人を笑いものにすることには特別な快感があるのかもしれない。

幼児のように頼りない大統領の様子は、ブッシュ大統領なら、さもありなんと思わせてしまう。テロリストはかなりまぬけ。イラク帰還負傷兵の愛国心も愛もまじめになればなるほど滑稽。その内容はうすっぺら過ぎるのに、そのうすっぺらさが笑いをもたらす。

ただ、本家本元の「アメリカン・アイドル」はお笑い番組ではないのに、かなり笑える部分があって、この映画がそれを超えられていないところはちょっと哀しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005/09/18

ブロードウェイ・ミュージカル『アベニューQ』"AvenueQ"

まいった。あの子供番組、「文科省推奨」みたいな『セサミ・ストリート』をここまで大人(アダルト)な番組してしまうなんて。冒涜だ!と言いたいところなのに、よくできている。

写真がないのですが、公式サイトを見ていただくと様子がわかります。

あっけらかんと「みんなちょっとは人種差別者」なんて楽しく歌われると、本当にその通りとうなずいてしまう。大学を出たばかりで就職した途端に会社の倒産で失業してしまうプリンストンはアベニューQで出会った人々の中で、人生の意味を考え始める。そして、『セサミ・ストリート』の単語を覚えるシーンを模したテレビ画面で何度も"purpose"の意味を考える。

パロディのようでいて、原作を笑うだけに終わらない。おおっぴらには語られない世の中の裏やその真実をまるで子供に語るかのように教えてくれる。それは結構、深刻だったり、暗かったりするはずなのに、語り口は明るい。その明るさは『セサミ・ストリート』そのもの。

あのクッキー・モンスターにそっくりのトレッキー・モンスターという人形が出てきて、「コンピューターはポルノばっかり」と歌ったり、子供のヒーローのケアベアそっくりのくまが悪事に誘うくまだったりと、夢を壊すことばかり次から次へと展開していくのに、終わってみると、やっぱり生きていくことは楽しいと思えてくる。大作のミュージカルではない。「良作」と言うには目を覆うシーンが多すぎる。それでもニューヨークにまで行って見る価値のある作品だと思った。

隣の席に、中学生か高校生くらいの男の子がガールフレンドを伴って両親に連れられて来ていた。始まる前には教育熱心そうな母親に「携帯を切れ」と口うるさく言われ、「わかってる、わかってる」と不機嫌そうに答えていた。その子、人形が大胆に演ずるアダルトなシーンに、椅子から飛び上がらんばかりに前後に体を揺すって喜び、まじめなシーンになると退屈そうに、隣の女の子の膝に手をやっていた。舞台だけでなく、観客にもアメリカの中産階級を感じた。

プリンストン、ロッド…BarrettFoa/ブライアン…FordanGelber/ケイト・モンスター、ルーシー…Stephanie D'Abruzzo/ニッキー、トレッキー・モンスター…ChristianAnderson/クリスマス・イブ…AnnHarada/ゲイリー・コールマン…NatalieVenetiaBelcon/ミセス・T、くま…JenniferBarnhart

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005/07/08

『最狂絶叫計画』"Scary Movie 3"


こういうばかばかしいものを見て笑いたい気分だったので、見てしまった。大いに笑った。

「マッドTV」のようなテレビのパロディは好きで、たまに見るのだが、映画でパロディを見たことがなかったので、この映画の笑いの質が高いのか低いのかさっぱりわからなかった。

シンディは『ザ・リング』のストーリーに、ジョージは『サイン』のストーリーにいるのに、2人がそれなりに知り合ってカップルになっていくというメイン・ストーリーがなんとなく破綻せずにできあがっているところに感心した。そのほか、『マトリックス』『アザーズ』『8 Mile』のパロディが出てくる。

DVDの「特典メニュー」がまたおもしろかった。パロディを作る時は元の映画にお金を使わないといけないため、制作費が抑えられてしまう話。演じる人は「笑わせてやろう」などとは考えずに監督の指示に従ってただまじめにやるとうまくいくという話。そして、「ヤバすぎる真実」編。最初は、「え?」となって、次に爆笑してしまった。

この映画を見たあとでは、『ザ・リング』は笑ってしまって、見られなくなるだろう。『サイン』のほうもやや危ない。でも、『8 Mile』を見るのには影響なさそう。ホラーは演出する側だけでなく、観るほうがほんの少しチャンネルを変えただけでお笑いになってしまうのかもしれない。

2003年/監督:デビッド・ザッカー/シンディ:アンナ・ファリス/大統領:レスリー・ニールセン/ジョージ:サイモン・レック

| | コメント (0) | トラックバック (0)