まいった。あの子供番組、「文科省推奨」みたいな『セサミ・ストリート』をここまで大人(アダルト)な番組してしまうなんて。冒涜だ!と言いたいところなのに、よくできている。
写真がないのですが、公式サイトを見ていただくと様子がわかります。
あっけらかんと「みんなちょっとは人種差別者」なんて楽しく歌われると、本当にその通りとうなずいてしまう。大学を出たばかりで就職した途端に会社の倒産で失業してしまうプリンストンはアベニューQで出会った人々の中で、人生の意味を考え始める。そして、『セサミ・ストリート』の単語を覚えるシーンを模したテレビ画面で何度も"purpose"の意味を考える。
パロディのようでいて、原作を笑うだけに終わらない。おおっぴらには語られない世の中の裏やその真実をまるで子供に語るかのように教えてくれる。それは結構、深刻だったり、暗かったりするはずなのに、語り口は明るい。その明るさは『セサミ・ストリート』そのもの。
あのクッキー・モンスターにそっくりのトレッキー・モンスターという人形が出てきて、「コンピューターはポルノばっかり」と歌ったり、子供のヒーローのケアベアそっくりのくまが悪事に誘うくまだったりと、夢を壊すことばかり次から次へと展開していくのに、終わってみると、やっぱり生きていくことは楽しいと思えてくる。大作のミュージカルではない。「良作」と言うには目を覆うシーンが多すぎる。それでもニューヨークにまで行って見る価値のある作品だと思った。
隣の席に、中学生か高校生くらいの男の子がガールフレンドを伴って両親に連れられて来ていた。始まる前には教育熱心そうな母親に「携帯を切れ」と口うるさく言われ、「わかってる、わかってる」と不機嫌そうに答えていた。その子、人形が大胆に演ずるアダルトなシーンに、椅子から飛び上がらんばかりに前後に体を揺すって喜び、まじめなシーンになると退屈そうに、隣の女の子の膝に手をやっていた。舞台だけでなく、観客にもアメリカの中産階級を感じた。
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