2006/01/07

『Mr.& Mrs.スミス』"Mr.& Mrs Smith"


劇場で見たのだが、いっぱい入っていた観客があまり笑わない。しかたなく、体を震わせながら、クククッと1人笑いをこらえて観た。あまり受けていなかったのかな。

倦怠期の夫婦が2人でセラピーを受ける場面から始まる。しかし、その2人、実はプロの殺し屋で、お互いそのことを隠して結婚生活を送っている。そして、時々、そしらぬ顔をしてフル装備で仕事に出かける。

何度かセラピーを受ける場面が出るのだが、「撃ち殺してやりたいと思うときがある」などという表現が、この2人の場合、ことばそのままなのだから笑えない…というところが笑える。

見ていて、少々やり過ぎ感があり、辟易した面もあったが、あそこまで内容の空っぽさに徹するというのも良いのかも。スカッとはしました。

昔、『ローズ家の戦争』という映画があって、見そびれてしまったのだが、こういう感じだったのだろうか。リメイクで、マイケル・ダグラスとキャサリン・ゼタ=ジョーンズが演じるらしい。もしかすると『ローズ家の…』のほうがおもしろいのかもと思ってしまった。

2005年/監督:ダグ・リーマン「ボーン・アイデンティティ」/ブラッド・ピット「オーシャンズ11」「セブン・イヤーズ・イン・チベット」/アンジェリーナ・ジョリー「17歳のカルテ」

Mr.&Mrs.スミス@映画生活

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2005/11/22

『コンスタンティン』"Constantine"


友達に、「昨日、おもしろい映画を見た」と言ったら、どういう映画だったのかと聞かれた。

以下ネタバレなので、反転させて読んでください。ここから→「ヒーローは15歳からタバコを吸い続けていて、それが原因で、肺が真っ黒の末期癌なのね。おまけに、自殺して死にかけたから、その罪で地獄行きが決まってる。悪魔払いをして善行を積もうとするのだけれど、カウントしてもらえないの。最後に、自己犠牲の善行によって、天国に昇りかけるのだけど、サタンが出てきて、肺にぐいぐい手を入れて、真っ黒な肺ガンを抜き取ったので、この世に引き戻され、ヒーローは禁煙ガムを噛みながら、天を仰いで感慨に浸るって映画。」←ここまで
「どこがおもしろいの?」
「ヒーローはクールで格好良いし、ガブリエルも不思議な存在感あったし、壮大なストーリーで、なによりヒーローが単細胞の筋肉マンじゃなくて、暗く悩んでいるところが良くて……(ダメだ、説明できない)」

2005年/フランシス・ローレンス/キアヌ・リーブス「マトリックス」「コンスタンティン」「恋愛適齢期」「マイ・プライベート・アイダホ」/レイチェル・ワイズ「ナイロビの蜂」「ハムナプトラ」「スターリングラード」「輝きの海」/シア・ラブーフ/ジャイモン・フンスー「アイランド」/マックス・ベイカー/ブルイット・テイラー・ヴィンス「シモーヌ」「海の上のピアニスト」/ティルダ・スウィントン「ザ・ビーチ」

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2005/08/31

『アイランド』"Island"


--完全にネタバレ--

設定が大変興味深いので、描かれていないことまでいろいろ考えて、想像をふくらませてしまった。自分の臓器が必要になった時の保険として莫大な料金を払いクローンを作って育てておく。実におもしろい設定だ。

何百億ドルというお金を払える人たちだから、それぞれに何かしら特異な才能を持っているはず。そのDNAを受け継いだ個性的なクローンを大量に、大過なく、正しく禁欲的な生活で"飼って"おけるはずがない。たとえ「アイランド」という夢を与え、外が汚染されているという恐怖を与えたとしても難しい話だろう。しかし、体は大人であっても、純粋培養されて生まれ、まだ数年しか生きていない人たちの精神は実に純粋だ。

…というところには引き込まれ、魅せられた。しかし、この映画、アクションものなのだ。いやぁそこまではやらないだろう。え!…あそこをどうやって生き延びてきたんだ。なんで彼はまだ普通に歩けるんだ……の連続。

この映画、ニューヨークのタイムズスクエア近くの映画館で見たのだが、観客の反応が良いので楽しみが倍増した。私が、「まさかそれはないだろう」と思うと、同じように思っている観客がちゃんとそういう笑い声を上げてくれるのだ。手に汗握りつつ、夢あり、恋あり、冒険あり、そこまでやるか、まさかぁというところも、スカッと楽しませてもらえた。これは反応の良い観客と一緒に大スクリーンで見る映画としては最高だ。

少ししか出てこないスティーブ・ブシェミの存在感はすばらしかった。教育を受けないために何も知らないクローンが「神って?」と問うのに答えて、「こうあったらいいなあと胸の奥底から願った時、かならずそれを無視するやつのことさ」と答えたセリフがクスッと笑えた。

2005年 監督:マイケル・ベイ(『アルマゲドン』『ザ・ロック』)/ユアン・マクレガー(『ムーラン・ルージュ』)/スカーレット・ヨハンソン「真珠の耳飾りの少女」「ロスト・イン・トランスレーション」「理由」/スティーブ・ブシェミ(『ビッグ・フィッシュ』『ビッグ・リボウスキ』『アルマゲドン』『ウェディング・シンガー』)/ショーン・ビーン「フライトプラン

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2005/05/30

『コラテラル』"Collateral"


 ロサンジェルスの日没から夜明けまでの時間が、きれいな映像と魅力的な音楽によって表され、映画全体を覆う。そして、大きすぎる人造物である大都会が、小さな人間の夢もその生い立ちも飲み込み、人々を疲弊させていく。大都会という舞台装置が、映像と音楽が映画全体を包み込む。

 ストーリーはサスペンスとアクションに満ちている。筋の運びと、妙に交錯する場面の切り替わりにハラハラさせられる。ストーリーも音楽も緩急に満ちている。「急」の部分に挟まれる「緩」の部分である殺し屋ヴィンセントとタクシー・ドライバー、マックスの会話ひとつひとつが味わい深い。同じテーマの会話が別の人物とでは少しだけ違う形で繰り返されたり、同じ人物が違う状況で、少し違った文脈で再び語られたりする。

 夢も能力もあるのに動き出せないマックス。最初から夢を持つ環境に育たなかったヴィンセント。2人はどこかで響き合い、わずかなミクロのひずみ程度のささやかさでわかりあい始める。だからマックスはあんなすごい役目も果たすことができてしまうのだろう。それと同時に、殺人マシンのようなヴィンセントにも、どこかヒビが入り始めるのだ。

 都会の道路を横切るコヨーテの目が光る。実に象徴的だ。

2004年/監督:マイケル・マン「ショーシャンクの空」"The Shawshank Redemption"マジェスティック」「グリーンマイル」「プライベート・ライアン」
/ヴィンセント:トム・クルーズ「ラスト・サムライ」「マイノリティ・リポート」「バニラ・スカイ」「アイズ・ワイド・シャット」「マグノリア」「レインマン」/マックス:ジェイミー・フォックス/アニー:ジェイダ・ピンケット=スミス「マトリックス・リローデッド」「マトリックス・リボリューション」

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2005/01/23

『クローン』 "Impostor"

-=-=-ネタバレは下のほうで反転表示-=-=-

 ケンタウリ星人との戦いにより、環境が破壊された地球。ひとびとはドームに守られた都市での生活を強いられている。主人公スペンサーは優秀な科学者。

 そのスペンサーにケンタウリ星から送り込まれた人間爆弾ではないかという嫌疑が掛けられる。権力の手によって生きたまま心臓から爆弾がえぐり取られそうになるが、危機一髪のところで逃げ出す。この人間爆弾というものは攻撃対象となる人物の近くで反応すると、自爆するという仕掛けがされていること以外は、記憶も肉体もDNAもすべて元の人間と同じに作られている。

 スペンサーは自分が人間なのか、あるいは人間だと信じるようにプログラムされている人間爆弾なのか不安を持ったまま逃げることになる。

 納得できないところはいっぱいあるのに、ゲイリー・シニーズの真剣に苦悩する表情と、薬による幻想とも薄く残っている記憶ともつかないフラッシュバックのような映像を見ていると、「自分は何者なのか」という根元的な不安がしっかりと伝わってくる。

 ここからネタバレ、反転させて読んでください→爆発する仕掛けが、実は「自分が何者かを知った時」であったことに気付いた時、私は絶句してしまった。だから、「俺は爆弾じゃない!」と叫んでいる被疑者から心臓をえぐり取って、爆弾を処理する必要があったわけだったのか。
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2001年
監督:ゲイリー・フレダー
スペンサー/ゲイリー・シニーズ(「白いカラス」「二十日鼠と人間」「フォレスト・ガンプ一期一会」「アポロ13」「ミッション・トゥ・マーズ」「スネーク・アイズ」「グリーン・マイル」)
マヤ/マデリーン・ストーン
ハサウェイ/ヴィンセント・ドノフリオ(「ザ・セル」「マルコムX」「メン・イン・ブラック」)
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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2005/01/17

『ジョンQ 最後の決断』 "John Q"

-=-=-[背景と感想]ネタバレなし-=-=-

 日本の保健制度とは全く違う、アメリカの保険制度への批判が底に流れている映画。アメリカでは、掛け金の高い保険料を払える人は、良い病院に入ることができるし、より高度な治療が受けられる。難しい病気になると、まず自分の入っている保険制度ではどこまでの治療が受けられるのかを調べるところから始めなければならないのだ。保険がその治療をカバーしていないのなら、莫大な医療費を払うことになってしまう。結果的に治療をあきらめざるをえない人が出てくる。

 結局、ジョンQはあきらめきれず、心臓病の息子を救うために人質を取って病院を占拠することになる。そして、そこに至るまでの地道な活動もきちんと映画の前半で描かれる。この部分があってこそ、後半が説得力のあるものとなる。拳銃を持ってのただの暴力的な人質事件の映画でないところが、この映画をひと味もふた味も違ったおもしろいものにしている。

 三者三様の人質達の様子や、考え方の変化もまたうまく描かれている。
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2002年
監督:ニック・カサヴェテス
ジョンQ /デンゼル・ワシントン(「トレーニング・デイ」「マルコムX」「遠い夜明け」「)
フランク/ロバート・デュヴァル(「シビル・アクション」「ディープ・インパクト」「地獄の黙示録」「ゴッドファーザー」)
レイモンド医師/ジェームズ・ウッズ「ヴァージン・スーサイズ
レベッカ/アン・ヘッチ(「サイコ」「6デイズ/7ナイツ」「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」「ラストサマー」「リターン・トゥ・パラダイス」「奇跡の詩」)
モンロー/レイ・リオッタ
*「 」内はその人の作品のうち見たことのある作品の題名

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2005/01/08

『エントラップメント』 "Entrapment"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 鍛え抜かれた身体で、思い切った盗みを働く女大泥棒ジンと、切れる頭脳と的確な判断が持ち味で、ロマンスグレーの魅力的な大泥棒マック。信頼しあっているのか、惹かれあっているのか、騙して利用しようとしているだけなのか。微妙な2人の駆け引きの緊張感の上に、奇想天外な盗みの手口が展開する。

 軽くて、すかっとしていて、ユーモアがあって、ロマンスがあって、はらはらどきどきがあって、洒落たストーリーが最後の最後まで楽しめる。

 キャサリン・ゼタ・ジョーンズの美しさが目一杯引き出されている。そして、70歳になってもロマンスのヒーローを演じるショーン・コネリーのなんともいえず素敵なこと。

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1999年
監督:ジョン・アミエル
マック/ショーン・コネリー(「小説家を見つけたら」「ザ・ロック」「グッドマン・イン・アフリカ」「理由」「薔薇の名前」)
ジン/キャサリン・ゼタ・ジョーンズ(「ターミナル」「シカゴ」「ディボース・ショウ」)
*「 」内はその人の作品で見たことのあるものの題名。

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2005/01/04

『トレーニング・デイ』 "Training Day"

-=-=-[あらすじと感想] ネタバレなし-=-=-

 ずっと希望していた麻薬捜査官に抜擢されたジェイク。初日は先輩刑事アロンゾによるトレーニング・デイだった。アロンゾは、麻薬捜査官になるには、どう猛な狼にならなくてはいけないと、ジェイクに麻薬を吸わせる。普通のモラルを破るところから教育を始めるアロンゾ。

 ここ数年「汚れ役の黒人」というのはタブーだったが、デンゼル・ワシントンはすばらしい迫力で過不足なく演じる。イーサン・ホークは、頼りなさの中にある純粋で正確な目を演じる。麻薬で朦朧としながらも、細かい観察をするジェイクの目の光の変化はすばらしい演技。2人の持ち味が細かなところで光っている。

 「悪をもって悪を制する」が正しいことなのか。純粋な正義感でそれを超えることができるのか。正義感ゆえに悪の道を進まなくてはならなかったアロンゾが哀しい。

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2001年
監督:アントニー・フュークワー
アロンゾ/デンゼル・ワシントン(「ジョンQ 最後の決断」「マルコムX」「遠い夜明け」「)*アカデミー賞主演男優賞受賞
ジェイク/イーサン・ホーク(「ヒマラヤスギに降る雪」「ガタカ」)

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