2007/07/10

『理想の結婚』"An Ideal Husband"

☆軽く、洒落ていて、的を射た台詞が小気味よく飛び出す。

まるでシェークスピア劇を見ているような展開。
とんでもない偶然が重なり、観客は「違う!後ろ、後ろ、ちゃんと見て!」とヤジを飛ばしたくなるような局面にヤキモキする。あっちで誤解を生みこっちで誤解を生む展開だが、人物像がはっきりしているので理解しやすい。似てはいるけれど、シェークスピアより、感情移入しやすいと思って見ていたところで出てきた。劇中劇のカーテンコールでオスカー・ワイルドが紹介されて、皮肉を言う。そうか、彼の作品だったのかとここで気がついた。

正しさにこだわり、理想的であろうとする紳士・淑女をおちょくってはいるが、その姿を愛してもいる人の作品。原題は「理想の結婚」ではなく「理想の夫」だ。理想の夫を求める女性も、ただ求めているだけでなく、自己主張があり自分の考えがあり、またそこが滑稽で、変に窮屈だったりする。イギリス人が好みそうな作品だと思った。

イギリス英語がよくわかる人と一緒に見ていたら、アーサーとメイベルの会話に笑いこけていた。もちろん訳語でもおもしろいことはわかるが、そこまで軽妙で洒落た会話なのかと、うらやましく思った。

1999年/監督:オリヴァー・パーカー/ケイト・ブランシェット「シッピング・ニュース」「シャーロット・グレイ」「ギフト」「リプリー」「エリザベス」「オスカーとルシンダ」/ミニー・ドライバー「グッド・ウィル・ハンティング」/ルパート・エベレット「ベスト・フレンズ・ウェディング」」/ジュリアン・ムーア「フォーガットン」「めぐりあう時間たち」「シッピング・ニュース」「ハンニバル」「クッキー・フォーチュン」「マグノリア」「マップ・オブ・ザ・ワールド」「サイコ」「ビッグ・リボウスキ」/ジェレミー・ノーザム「ゴスフォード・パーク」

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2007/02/05

『恋愛適齢期』"Something's Gotta Give"

☆安心して楽しく見ていられる、落ち着いた世代向けのロマンティック・コメディ。

ダイアン・キートン演じるマリンを見ていると、ときおり、「ダイアン・キートンもこんなに老けちゃったんだ」と思わせられる。しかし、それが吹き飛ぶように、はっとするほど美しい瞬間がある。また、変に若ぶっていない素朴な可愛らしさがある。ストーリーが進展していくと、点のようにちりばめられたそんな魅力が徐々に全体を覆っていくようになる。

ハリウッド映画も、美しく年を重ねること、ピークを過ぎた女性の美しさを見せることを考え始めているのだなと思う。そして、それが成功している。

ただ、ジャック・ニコルソンが演じる63歳のプレイボーイ、ハリー魅力をもう少し掘り下げて理解するためには、過去の女性達に聞いてまわった話について、もう少し語らせてほしかったという気がしてならない。もちろん、そんなことなしでも、彼には優しさと格好悪さが混じり合った魅力が存在することはよくわかるのだが……。

脇役達もそれぞれに魅力的。

2003年/監督:ナンシー・メイヤーズ/ジャック・ニコルソン/ダイアン・キートン/キアヌ・リーブス「マトリックス」「コンスタンティン」「恋愛適齢期」「マイ・プライベート・アイダホ」/アマンダ・ピート/フランシス・マクドーマンド

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2006/09/12

『ホーカス・ポーカス』"Hocus Pocus"

☆ひとにお薦めできるような映画ではないのに、ハマってしまった。

子どもが見るには教育上悪いところがあるし、小さな子は怖がりそう。何か啓発される面があるかというと、ないわけではないが…という程度。といって、大人が見るには、ただただB級のミュージカルもどき。

それなのに、10年ほど前、たまたま見た時の印象が強烈で、また借りてしまった。大きな声では言えないが、この映画、完全に私の趣味。

なぜ好きかと考えてみると、悪い魔女3人が、それぞれに個性豊かで、魔力もすごいのに、間が抜けているから。すぐ騙されてしまう。その騙され方がなぜか素直で純真だから、憎めない。

こんなB級映画に好印象を持つのは、その後も大活躍のペット・ミドラーと「セックス・アンド・ザ・シティ」で大ブレークするサラ・ジェシカ・パーカーの魅力によるのかもしれない。

*魔女モノとしては他に「プラクティカル・マジック(1998年)
」「イーストウィックの魔女たち(1987年)」などがあり、どれも「自由に生きようとする女」という主張がどこかに漂っているように思える。

1993年/監督:ケニー・オルテガ/ペット・ミドラー「ステップフォード・ワイフ」「ファースト・ワイフ・クラブ」/サラ・ジェシカ・パーカー「ファースト・ワイフ・クラブ」

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2006/09/05

『バッドサンタ』"Bad Santa"

☆これは笑えないと何度も思ってしまった

季節はずれのクリスマスものを見ている。今なら借りやすいので、まとめて見て、比較できる。

ところが、最初に見たバッドサンタは許容範囲を超えたバッドぶりで、何度か希望を見出してはすがろうと試みたが、私にはダメだった。下品さも、差別的な笑いも、それを通しての主張がわかればだいたい許容範囲なのだが、これはダメ。

キレイゴトで語られすぎるクリスマス映画を、逆から描いて主人公の成長ぶり、純粋な子どもの姿に感動させたいという意図だろうが、その意図が成功したとはとても思えない。

消化不良を起こしたような気分で、他の人はどういう感想を持ったのだろうと、他の人が書いたブログを散策してみた。結構、好きな人もいるんだ。「こんなサンタいいのかなぁ」「子どもにはとても見せられない」なんて思いながら楽しむというあたりが正しい鑑賞法かも。

そういう感想の中で、この映画を肯定的に紹介していて、特に深く頷けるものがあったので、紹介したい。

「シネトック/映画批評」の「バッドサンタ」←ここをクリック
うん、うん。世の中の嘘くさいクリスマスの持ち上げぶりの裏にある偽善を曝きたかった。そう考えると納得できる部分がある。ていねいな論評に頷きました。

[追記]ブラックな「バッド・サンタ」に対して、クリスマス映画の正統派「34丁目の奇跡」を紹介しました。パロディを楽しむには、元の形も知っておかないとね。

2003年/監督:テリー・ツワイゴフ/制作総指揮:コーエン兄弟「ビッグ・リボウスキ」「ディボース・ショウ」/ビリー・ボブ・ソーントン「ラブ・アクチュアリー」「ディボース・ショウ」「チョコレート」「アルマゲドン」「スリング・ブレイド」/バーニー・マック「オーシャンズ11」

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2006/09/04

『フォーチュン・クッキー』"Freaky Friday"

☆母親、40代、ドクター。中身はバンドに夢中のかる~い娘。そのアンバランスさがカッコイイ

母親と娘の中身が入れ替わってしまって、お互いの境遇がよくわかってというのはよくある話。もちろん、「映画の中では…」だが。
話の筋そのものより、母親役のジェイミー・リー・カーチスの演技が面白くて、上手で、画面に見入ってしまった。

50歳近い精神科医なのに、中身はバンドに夢中で、かる~いティーンズの娘。やりたい放題、言いたい放題、おまけに無知! ハラハラしたり、目を覆ったりしているのに、いつのまにかそれが格好良く見えてきて、イケてるじゃないになってくるから不思議だ。こんなふうに突き抜けた心理学者でセラピストのオバさんがいたら魅力的かも。

2003年/監督:マーク・ウォーターズ/ジェイミー・リー・カーチス/リンジー・ローハン/マーク・ハーモン

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2006/07/02

『愛しのローズマリー』"Shallow Hal"

☆ギリギリOKな笑いで描き出される差別意識。NGな人も多いかも。

容貌による差別や障害者差別、そして人種差別まで含みそうなギリギリのところを描いているのに、私にはギリギリOK。そのあたりの右と左に分かれる理由って何なんだろうと思う。

グウィネス・パルトロウがほっそりしているのに、まるで太っている人のような動作をして演じているのがすごいと思った。だから、最後のほうで同じグウィネス・パルトロウが太っているほうの役を演じていても、違和感なく可愛いと思えたのだと思う。他の人たちもすべて同じ人が演じていたら「ギリギリOK」のところが、さらに少しだけ「安心して見られる」のほうに移動したのにと思う。

こんなふうに、心の目だけで美醜を見分けられたらいいなあと温かい気分になりながら見ていたのだが、実際に自分がそうなった途端、まわりの人がみんな醜い人ばかりになってしまったら…なんて考えがわいてきた。つまり、そうなっていないところが、この映画を良い映画だなと安心して見ていられる要素となっているのだろう。

2001年/監督:ボビー・ファレリー「メリーに首ったけ」/ジャック・ブラック/グウィネス・パルトロウ「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」「リプリー」「恋におちたシェイクスピア」「大いなる遺産」「スライディング・ドア」「セブン」/ジョー・ウィテレッリ「アナライズ・ミー」「恋するための3つのルール

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2006/01/19

『ラヂオの時間』


登場人物ひとりひとりがみな強い個性の持ち主。勝手なことばかり言う。無茶な状況を作るのにそれぞれが一役を買ってしまっているのに、誰にもその自覚がない。

その個性にプラスして、それぞれが持ち、なぜかそこだけは一流であるプロの技が光り、笑える。わがままな大女優、千本のっこ(戸田恵子)が、ギャーと見事に叫んだあと、顔は普通のままマイクから離れ、さっと素に戻る時のおかしさ。めちゃくちゃな状況なのに、冷静沈着な声で話し出すナレーター。わがままなのに飄々としていて、無責任なのに声だけかっこいい浜村(細川俊之)。そして、そこに突然出てきた、プロでない「ジョージ」の間抜けさと真剣さには吹き出してしまった。迫力のある花火の技と、それを作り出すあの脱力する動作。そういうちぐはぐさ、非対称がすべてにおいて可笑しかった。

三谷幸喜にはまりそう。上映中の『THE有頂天ホテル』、観に行きたくなってきた。

1997年/監督:三谷幸喜「笑の大学」「みんなのいえ」/唐沢寿明/鈴木京香/西村雅彦/戸田恵子/井上順/モロ師岡/藤村俊二/田口浩正/小野武彦/佐藤B作/梶原善/近藤芳正/布施明/細川俊之/奥貴薫/宮本信子「マルサの女」/桃井かおり「SAYURI」「幸福の黄色いハンカチ」/渡辺謙「SAYURI」「ラスト・サムライ」/市川染五郎

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2006/01/14

『笑の大学』


話の大部分が、がらんとした広い取調室で進む。高い天井、モノトーンの光。舞台で演じられているような雰囲気があり、無駄を排してあるので、そこで荒唐無稽なことが行われても、日常とは切り離されたものとして入り込むことができる。その一方で、取調室の外廊下は非日常から日常へ渡る長い道のようでもあり、そこで起こるできごともまた印象深く残る。廊下にいつもいる警官(高橋昌也)はひと言もことばを発しないが、一般大衆や観客の気持ちを代弁しているような存在感がある。

取調官(役所広司)は、ときには声を荒げ、諭し、ときにはぎこちなく世間話をする。しかし、本当はどうしようと思っているのか。本心はどこにあるのか。彼の心も揺れているのか。それは笑いの要素に隠されて、今ひとつわからないまま話が進む。

ひとつひとつの言動に反応して大笑いするような笑いではない。共感を誘いつつ出てくる笑いが重なって、ひとりひとりの心に秘めた気持ちや、その時代の哀しみがじわりと伝わってきて、それがまた温かい大きな笑いとなり、心の中に残っていく。

私はこれまであまり邦画を見てこなかったが、この映画を見て、太宰治の『御伽草子』の笑いもこの時代のこの状況下で作られものであったことを思い出し、「笑い」を作る三谷幸喜のことをもっと知りたくなった。

原作・脚本:三谷幸喜「みんなのいえ」/役所広司「Shall we ダンス?」「SAYURI」/稲垣吾郎
笑の大学@映画生活

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2005/12/24

『ステップフォード・ワイフ』"The Stepford Wives"


これは、きっとオリジナル版を同時代の人間として知っていて、「ステップフォード・ワイフ」ということばが固有名詞でなくなっているアメリカ人には、もっと楽しめる映画なのだろうと思った。

「あの時代」とは違って、ゲイの夫婦が登場し、それがまたごく普通の夫婦と同じような悩みを持っている。そしてたぶん「あの時代」以上に社会進出している女性達。

その上、一昔前の、絵に描いたような豪華な、そして嘘っぽい幸福さがあふれんばかりのコロニアル風の生活を美しく見せてくれる。まばゆいばかりに明るい。

『ホーカスポーカス』でコミカルな演技が光っていたベット・ミドラーが活躍していてうれしかった。

オリジナル版のほうも見て、比べてみたい。

2004年/監督:フランク・オズ/ニコール・キッドマン「ムーラン・ルージュ」「めぐりあう時間たち」「ドッグヴィル」「白いカラス」「コールドマウンテン」「ザ・インタープリター」/マシュー・ブロデリック「プロデューサーズ」/ベット・ミドラー「ホーカスポーカス」/フェイス・ヒル/グレン・クローズ「クッキー・フォーチュン

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2005/12/12

『ショーン・オブ・ザ・デッド』"Shaun of The Dead"


思いっきり笑いたいという軽いノリで借りてきたDVDだったが、質の高さにうなってしまった。

のそのそ歩くオリジナルのゾンビを見たときに感じる、「自分がここにいたらどうするだろう」という気持ちをそのまま映画にした作品。

ただし、その「どうするだろう」は思いっきりイギリス人的。イギリス人が、好んで自分たちを笑いものにする時の風刺がたくさん詰まっている。

アヤシイ人が庭に入ってきているのに、なんでそんなに礼儀正しく話しかけるの? なんでそんなにパブにこだわるの? 習慣はワンパターンで変えられないし、慌て方がどことなくマヌケ。銃にはビビってしまい、一番の武器はクリケットのバット。ちょっと波長が違う幼なじみをとことん大切にする。

隅から隅まで、そのイギリスらしさを楽しんでしまった。でも、やはり、ゾンビだから、かなり気持ち悪いシーン満載なのだが…。

2004年/監督:エドガー・ライト/サイモン・ペグ/ケイト・アシュフィールド/ビル・ナイ「ラブ・アクチュアリー

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