『コラテラル』"Collateral"
ロサンジェルスの日没から夜明けまでの時間が、きれいな映像と魅力的な音楽によって表され、映画全体を覆う。そして、大きすぎる人造物である大都会が、小さな人間の夢もその生い立ちも飲み込み、人々を疲弊させていく。大都会という舞台装置が、映像と音楽が映画全体を包み込む。
ストーリーはサスペンスとアクションに満ちている。筋の運びと、妙に交錯する場面の切り替わりにハラハラさせられる。ストーリーも音楽も緩急に満ちている。「急」の部分に挟まれる「緩」の部分である殺し屋ヴィンセントとタクシー・ドライバー、マックスの会話ひとつひとつが味わい深い。同じテーマの会話が別の人物とでは少しだけ違う形で繰り返されたり、同じ人物が違う状況で、少し違った文脈で再び語られたりする。
夢も能力もあるのに動き出せないマックス。最初から夢を持つ環境に育たなかったヴィンセント。2人はどこかで響き合い、わずかなミクロのひずみ程度のささやかさでわかりあい始める。だからマックスはあんなすごい役目も果たすことができてしまうのだろう。それと同時に、殺人マシンのようなヴィンセントにも、どこかヒビが入り始めるのだ。
都会の道路を横切るコヨーテの目が光る。実に象徴的だ。
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