2007/09/12

『きっと忘れない』"With Honors"

☆小ずるく賢いホームレスと関わることになったハーバードの学生

鼻持ちのならない未熟なエリート学生が、住む世界が違う人間、ホームレスの男と接することによってひとまわり違った人間として成長していくというありがちなストーリー。こんなベタな話を私は大好きだ。だから、これは無条件に好き。

ブレンダン・フレイザーは『青春の輝き』や"Blast from the Past"のような、まっすぐに育った青年を演じるとすばらしく輝いていた。その後は良い役に恵まれていないのが残念だ。いつまでも青年ではいられないし、そういう陰のないタイプは時代に合わないからなのだろうが。

1994年/監督:アレック・ケシシアン/ジョー・ペシ/ブレンダン・フレイザー「クラッシュ」「愛の落日 クワイエット・アメリカン」「ハムナプトラ」「青春の輝き」"Blast from the Past"

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2007/06/21

『青春の輝き』"School Ties"

☆社会の縮図がきちんと描かれている青春映画。

この時代、ユダヤ人がこんなに差別されていたのかと思う。しかし、同時に、優秀であればハーバードに行くチャンスもあり、さらに優秀な成績を修めれば、可能性が開ける国でもあった。希望と変えられない壁とが入り交じった国であることが、私立高校の中にも縮図として見られる。

差別に対して、ただ1人、正しさで毅然と向かっていくことのできるデイビッドを見ていると胸が痛むと同時にスッとする。しかし、差別やいじめに苦しむ人は、いつも体格や頭脳があそこまで恵まれているわけではない。スッとはするが、根深い問題は残る。

最初のほうで、監督が彼に、「食べ物の好き嫌いはないか」と聞く場面がある。あれは「食事に制限はないか」と聞いているわけで、宗教的食事制限に言及している重要な場面だ。それを彼は「好き嫌い」としてかわしている。そこで、監督は「手持ちのカードを見せることはない」という意味のことを言うわけで、食事制限の部分の訳をもう少し訳を工夫しないと意図が伝わらないのが残念だ。彼は、あの場面で、瞬間的にその意味を理解し、宗教で禁じられた食事も摂っていくことを決意しているのだから。

「良い話」にするための変な妥協をせずに、希望と絶望とが入り交じった社会をきちんと描き出していて、なおかつすがすがしさが漂う、好きな作品だ。

1992年/監督:ロバート・マンデル/ブレンダン・フレイザー「フラッシュ」「愛の落日 クワイエット・アメリカン」"Blast from the Past" 「ハムナプトラ」/マット・デイモン「シリアナ」「ボーン・アイデンティティー」「リプリー」「プライベート・ライアン」「グッド・ウィル・ハンティング」

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2006/10/13

『キャリー』"Carrie"

★超常現象なのに、青春映画としての異様に強い説得力に引き込まれてしまった。

ずっと前から知っていたけれど、やっと見ることができた映画。恐くて、気持ちの悪いオカルト映画だと思っていたのだが…。

これは、オカルト映画というよりは、アメリカの高校生最大の行事であるプロムを題材にした青春映画。何度も何度も題材とされてきた題材。それを、奇をてらってオカルトにしたというよりは、全く無理なく「どこかにいそうな親子」「どこかにいそうな友達」のどこにでもありそうな問題をオカルトの手法を使って描き出した形になっている。

キャリーの母親の演技とその映像化がすばらしい。最初の美しいシャワーの画面も含め、ブライアン・デ・パルマがその美しい映像で有名になったことが納得できる映画だった。

1976年/監督:ブライアン・デ・パルマ「ミッション・トゥー・マーズ」「スネーク・アイズ」「ミッション・インポッシブル」/原作:スティーヴン・キング「シークレット・ウィンドウ」「アトランティスのこころ」「グリーンマイル」「スティーヴン・キングのシャイニング」「ショーシャンクの空」「イット」「やつらはとこどき帰ってくる」「スタンド・バイ・ミー」「シャイニング」/シシー・スペイセク「ストレイト・ストーリー」/エイミー・アービング「ハイド・アンド・シーク」/ジョン・トラボルタ「シビル・アクション」「マイケル」「ベイビー・トーク」「サタデー・ナイト・フィーバー」

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2006/09/03

『イット』"IT"

☆仲間が田舎町に集結してくるところまでは傑作

前半は『スタンド・バイ・ミー』のような幼年期の恐怖、絆をうまく描いている。もうピエロを恐怖の先入観なしで見られなくなってしまうほどだ。後半も「町」に漂う恐怖を描くところまでは恐い。しかし、最後に向かって突然、B級度が全開してしまう。

スティーブン・キングの作品の映画化は魅力的だが難しいのだろう。この作品と似て、前半が幼年時代、後半が成人してからの2部構成になっている『アトランティスのこころ』では、映画にする時、本の後半部分をバッサリ切ってしまっている。原作とは少しテーマが違ってしまうが、すばらしい完成された映画になっている。しかし、原作部分の後半で描かれた、幼年期の体験を元にそれぞれがどのような道を歩まざるを得なかったかというところについては言及されていない。この『イット』はその後半部分も映画に残した。そして、幼年時代の恐怖がどのようにそれぞれの心の奥深くに残って作用していたかが描かれる。

『イット』では、後半を入れたかった理由がわかるように描かれている。でも、『アトランティスのこころ』にはあった、大人になった自分の中にも広がる恐怖の余韻は残らない。

1990年/監督:トミー・リー・ウォレス/原作:スティーヴン・キング「シークレット・ウィンドウ」「アトランティスのこころ」「グリーンマイル」「シャイニング」「ショーシャンクの空に」「ブロス/やつらはときどき帰ってくる」「スタンド・バイ・ミー」「キャリー」「ミザリー」/ハリー・アンダーソン/デニス・クリストファー/オリビア・ハッセー

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2006/02/15

『ヴァージン・スーサイズ』"The Virgin Suicides"


鬱屈したもの、放出できない苦しみが、5人姉妹の中で淀み、母親の厳格な教育と相まって、新鮮な空気が入ってこない環境を作り出し、閉塞感が増す。

池の藻が腐ってそこらじゅうに臭気を漂わせる、あの「窒息」という名のパーティに象徴される雰囲気だ。緑がかってぼやけたあのパーティと同質のものが5人の少女達を「窒息」へと追い込んでいったのだろう。

精神的にどうしても少女達に追いつけない少年達のメッセージは少女達には届かない。

ロスト・イン・トランスレーション』もそうだったが、今ひとつわからないのに、雰囲気でわかったような気がしてきて、そのイメージが心のどこかに棲みついてしまう。ソフィア・コッポラの映画の特徴なのかもしれない。

1999年/監督:ソフィア・コッポラ「ロスト・イン・トランスレーション」/ジェームズ・ウッズ「ジョンQ最後の決断」/キャスリン・ターナー/キルスティン・ダンスト「エターナル・サンシャイン」「チアーズ」「モナリザ・スマイル」「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」「ジュマンジ」「若草物語」/ハンナ・R・ホール「フォレスト・ガンプ(子役)」
*「 」内は見たことのある作品。
ヴァージン・スーサイズ@映画生活

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2005/12/07

『ドラムライン』"Drumline"



ベタな展開。私の苦手な体育会系青春ドラマ。それでもわくわくした。マーチング・バンドのあのリズム感、真剣な"バトル"。アメフトのハーフタイムに繰り広げられるすばらしいショー。なんの深みもない映画だが、たまにはこういう映画を見て、スカッとした気分になるのもいい。

オフ・ブロードウェイで『ストンプ』"STOMP"を見て、びっくりしてしまったが、こういう文化背景があるのなら、"STOMP"くらいお手の物という分厚い層の人々がいるわけだと、別のところでも納得してした。

2002年/チャールズ・ストーン3世/ニック・キヤノン/オーランド・ジョーンズ「エボリューション」/ゾーイ・サルダナ

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2005/12/04

『16歳の合衆国』"The United States of Leland"


恋人の弟であり、知的障害者である少年をリーランドは殺す。家で熱帯魚の水槽を見つめながら、静かに、「…think I made mistake」 とつぶやくリーランド。

彼は、その凶悪な犯罪からは想像もつかないほど、物静かで、感性が鋭く、知的で、深く考える力を持っている。

青春期には、こういう鋭い、人生の断面を見抜く力に優れる時があることを思い出す。成長するにつれて、それらを統合する力が出てくると、ひとつひとつの断片に対する鋭さは鈍くなっていく。

リーランドは、特に知的能力が高く、作家である父親譲りであろう洞察力も備えていた。しかし、父親不在の環境もあって、それらを統合する端緒を見出すことができなかった。しかし、彼の考える力はすばらしい。安易に「理由」を見つけず、安易に「意味づけ」をせず、ひとつひとつを結論の出ない状況のまま抱え込み、文章にし思考していく。

犯罪は取り返しのつかないものであった。それによって、たくさんの人間関係が崩れていってしまった。それらに対する哀しさを感じると同時に、犯罪者である青年にも哀しさを感じる。「ごく普通の…」とは思わない。犯罪者の青年はたぐいまれなる感性の持ち主だと思う。それは「美徳」のようにも見えるのだ。それなのに、それが犯罪を引き起こしている。哀しい。

『アメリカン・ビューティー』にも似た、いわゆるWASPの悩める姿が、よりわかりやすい形で、心に染み入るように描かれていると感じた。

2003年/監督:マシュー・ライアン・ホーグ/リーランド:ライアン・ゴスリング/ベッキー:ジェナ・マローン/教官パール:ドン・チードル「ホテル・ルワンダ」「オーシャンズ11」「ミッション・トゥ・マーズ」「トラフィック」「ブルワース」/アルバート:ケヴィン・スペイシー「光の旅人 K-PAX」「シッピング・ニュース」「ペイ・フォワード」「アメリカン・ビューティー」「交渉人」「ライフ・オブ・デビッド・ゲール

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2005/03/13

『クルーエル・インテンションズ』"Cruel Intentions"


 キャスリンとセバスチャンはマンハッタンの豪邸に暮らし、名門校に通う義姉弟。両親は2人にお金をふんだんに与えたまま、滅多に家には帰ってこない。美貌に恵まれた2人は権力もお金も握り、やりたい放題。

 そんなキャスリンがセバスチャンに持ちかけた賭が、「新しい校長の娘でまじめな生徒アネットの処女をセバスチャンが奪ったら自分の体を与え、失敗したらセバスチャンのジャガーをもらう」というもの。

 ヒトの気持ちを踏みにじっていく2人のやり方を見ていると、嫌な気持ちになっていくのだが、あの均整の取れた顔には見とれてしまう…などとぼーっと見ているうちに、思っていたのとは違った展開に。

 アメリカのティーンズ向けの映画は結構いろいろ見ているのだが、これはそういう軽いジャンルに入れてしまうのが少しためらわれるような何かがあった。たぶんそれは、セバスチャンのそうせざるを得なかった気持ちの部分に何かがあったのだろうと軽い感動に耽っていた。描かれてはいない部分に思いをはせながら…。

 ところが、オーディオ・コメンタリーがちょっとまずかった。監督が出てきて、愉快そうににこにこと「本当はこういう場面も挿入しようと思っていたのだけれど、そうするとセバスチャンがあまりにも嫌なやつに見えるのでやめた」というところが次々と紹介されていったのだ。「やっぱりただのそういう奴だったんじゃないか」となってしまった。感動してしまった私の気持ちはどうなるの?

 編集の仕方によってずいぶん印象が変わるのだと感心したが、こういうシーンは見たくなかったなあと思う。

[3/14追記]「私はこう理解し感動した」というところを以下に書きます。【ネタバレしているので反転させて読んでください】→セバスチャンがアネットに惹かれていく気持ちがよくわからなかったので、2度目はそこに焦点を当てて見た。

 老人ホーム訪問あたりでセバスチャンの心が微妙に変わる。ドライブのシーンではセバスチャンがこれまでの自分のめちゃくちゃな生活とは反対側にあるアネットの世界に「更生」したいと思い始めているように見える。アネットがドライブする最後のシーンは唐突だが、この部分と呼応させたいのではないだろうか。

 最初、セバスチャンはキャスリンに魅力を感じていた。言われる通りに何でもしたいというほどに。しかしその魅力は、部分的にはキャスリンに手出しできないこととも関係があったのだろう。キャスリンのほうも実はセバスチャンが好きだったように思う。しかし、複雑に屈折しているキャスリンは、「思い通りにならない女だから」ではなく本当の意味で愛が欲しかった。

 セバスチャンがアネットに本当の意味での愛情を持ってしまったことを知ったキャスリンの表情から、このあたりの気持ちが感じ取れる。しかし、キャスリンは失恋するような女ではない。キャスリンはセバスチャンのことを「単なるオモチャだった」と思うことにした。

 クルーエル・インテンションズ(残酷な意志)は2人にこの映画のラストのような形で働いたのだ。

1999年/キャスリン:サラ・ミシェル・ゲラー「スクリーム2」「ラストサマー」/セバスチャン:ライアン・フィリップ「クラッシュ」「ラストサマー」/アネット:リース・ウィザースプーン「カラー・オブ・ハート」セシール:セルマ・ブレア

*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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2005/02/23

『スタンド・バイ・ミー』"Stand by Me"

 最後に流れる曲のメロディーと共に、もう戻って来ない子どもの頃を思い出して、胸がキュッとなる作品。

 少年たちはそれぞれの不幸な家庭環境を抱えながらも、普段は木の上に作った隠れ家に集まって、ちょっとした悪いことをして遊び、少年時代を過ごしている。そんな4人が、列車にはねられた死体を探しに行こうと思い立った時から、冒険の旅が始まる。

 冒険や友情の思い出がある人はもちろんのこと、ない人でさえ、懐かしさに胸を熱くするだろう。そして、理不尽な大人の行動や、子どもへの心ないひと言に怒りを覚える。未来が明るく感じられない日々。しかし「冒険」はそれを乗り越えるための力を与えてくれる。

 「冒険」する子どもが思い切り「冒険」できるように、静かに見守ってやれるような大人でありたいと、大人になってしまった私は思う。クリスとゴーディの会話には、人を根底で支えるのに必要なものがあふれていた。

1986年/監督:ロブ・ライナー/原作:スティーヴン・キング「シークレット・ウィンドウ」「アトランティスのこころ」「グリーンマイル」「スティーヴン・キングのシャイニング」「ショーシャンクの空に」「イット」「やつらはとこどき帰ってくる」「シャイニング」「キャリー」「ミザリー」/クリス:リヴァー・フェニックス/ *「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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2005/02/21

『カラー・オブ・ハート』"Pleasantville"

 デイビッドと双子の妹ジェニファーが、古い白黒テレビのホームドラマ「プレザントヴィル」の中に入ってしまうことから始まる話。

 実際の画面も白黒になる。ノスタルジックなモノトーンの世界が広がる。朝起きると、ママの作った、古き良き時代の完璧な朝食が待っていて、バスケットボールはいつもゴールに入る。セックスなんてないし、トイレには便器もない。前衛芸術もあり得ない。善人ばかりの村で、飽きるほどの「平和で幸せな生活」が繰り広げられている。

 そこに迷い込んだ2人の行動は村に小さな亀裂を引き起こす。2人にとっては普通の疑問であっても、それを投げかけると、村の人達の間に小さな波紋が広がる。その波紋の中で、人々が感情を持つたびに少しずつ白黒の画面がカラーとなっていく。色づいていく物、そして人。もちろん、話はそれだけでは終わらない。

 白黒の画面の中に広がっていくカラーが、その象徴するものとともに魅力的な映像を作る。
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1998年
監督:ゲイリー・ロス
デイビッド/トビー・マグワイア(「サイダーハウス・ルール」)
ジェニファー/リース・ウィザースプーン(「クルーエル・インテンションズ」)
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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