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2010/02/07

『マンデラの名もなき看守』

☆囚われの環境が静かに変化していくことに、全世界からの働きかけを感じる。

同じアパルトヘイトを扱った映画、『遠い夜明け』などと比較して見てしまう。すると、この映画ではアパルトヘイト政策下で、運動の指導者達がどんなにひどい目に遭い、ひどい扱いを受けてきたかということはほとんど描かれていない。描写が手ぬるいのではないかと感じられるほどだ。また、ネルソン・マンデラと看守の交流と言いながらも、看守がどういう交流を経て、どのように考え方が変わっていったかといった部分の描かれ方も物足りないと、最初は思ってしまう。

しかし、この映画はそういう直接的な告発を主題としていないのだ。刑務所の中でのマンデラ氏に対する待遇が少しずつ変わっていく様子を通して、社会と世界の動きがゆっくりとそこにも到達してくることを感じる。正しいことがゆっくり実現されていく様子が描かれている。実際は27年掛けての変化なのだから、気が遠くなるほどゆっくりした動きだ。

外の世界からの政治的な働きかけ、そして民間団体のさまざまな働きかけ、世界からの声がわずかずつではあるが、確実に影響を及ぼし、監獄の状況が変わっていく。外からは見えない場所であるはずの刑務所の中である。いくら世界がアパルトヘイトに反対し、声高に叫んでも、そう簡単には待遇を変えることはできない特殊な場所である。それがここまでと思うと、このぬるいと思える描き方の外側にある大きなうねりのような世界の動きが想像される。そう考えると、これはすごいことだと感じられてくる。

『遠い夜明け』や『イン・マイ・カントリー』なども併せて見ると、この映画の静かな主張がより印象的になる。

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2010/02/02

『アバター』

☆初めての3D体験から20年
20年程前、よかトピアというマイナーな場所での博覧会で初めて3D映像を見た。「注文の多い料理店」。これがおもしろくて何度も足を運んだ。とはいえ、この3Dのおもしろさだけではない"映画"として機能するのはいつのことだろうと思っていた。今回、アバターを見て、映画館で見る映画は変わるんだろうなあと思った。今日は私にとって記念すべき3D記念日となった。

一番おもしろかったのは、3Dのおかげか、アバターという設定のおかげかわからないが、運動能力が著しく長けた人として自然の中で動き回れることのすばらしさを"実感"しているかのように楽しく感じられたこと。これは一歩間違えるとアブナイ世界かもしれないと思わせるものがあった。

ストーリーとその主張は好きだった。意外性はなかったがそれはそれで良い。宮崎駿の世界の集大成。ラピュタやナウシカに似た発想の映像で、自然に対する目というテーマも似ていた。でも、その主張と世界観が好きだから楽しめた。

残念なのは、奥行きがある分、画像が遠く、小さく感じること。きれいで、立体的にリアルに見えるのだけれど、むこうにある水槽の中を覗いているかのようで、2Dの時のほうがすぐ目の前にあるかのような大きさの迫力は感じられる。きっと普段の2Dと同じ迫力を感じるにはさらに大きな画面が必要なのだろうと思う。でも、そういう映画館ができるのももうすぐなのだろう。今回はDolby3Dで見たが、もう一度、IMAX3Dデジタルで見たいと思っている。

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