« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

2008/07/15

『ONCE ダブリンの街角で』"ONCE"

☆ダブリンに行ってみたくなる。

一方は街角の古くからある電気修理屋、一方は移民らしい質素な生活。どちらの家も、生活していることが感じられる家。人を招き入れた時、その人の全体像がわっと迫ってくる。それを彼らと一緒に観客も味わう。

音楽も、生活感あふれる会話がそのまま歌となって出てきている。バスの中でfackを連発した歌を歌ってしまい、前のほうに座る老女に謝る。老女はうふふという感じに笑う。心の奥にあるものも、歌となって出てくる。出てくるのが苦しい感情も、不完全なままに顔を出す。自然と生活の中の言葉が歌になってでてきたかのように。

一卵性双生児のように感性がピッタリ合う二人。会った途端に、互いの音楽を聞いた途端に、惹かれ合うのも当然だ。ピアノの前でギターを弾き、最初から息のあったデュエットができるのもその感性の一致。

耳から離れないメロディーと共に、ゆったりとした時間の流れが心に残る。

2006年/監督:ジョン・カーニー/グレン・ハンサード/マルケタ・イルグロヴァ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/07/12

『僕のピアノコンチェルト』"Vitus"

☆子育てで大切にしたいこと。

飛び級するほど頭脳に恵まれた天才少年の能力と孤独、そしてピアノの才能が描かれているだけで興味深い。その上、最初から天才的な演奏ではあるものの、年齢と共に精神的に成長していく様子がちゃんと弾き方に現れるようにしてあるのがすばらしい。

アメリカ映画の「Blank Check(1994)」のような、子供が大人の世界をふりまわすおもしろさに精神性が加わったような良さがある。

一番好きなところは、祖父との交流。ヴィトスのような本物の天才でなくとも、子供は、皆、親より可能性を秘めた「天才」。でも、親にできることは才能を伸ばす学習の手伝いではなく、心の拠り所、休む場を作り、余裕をもって見守ること。それが祖父との交流というワンクッションおいた形を使って、しっかり示されている。

ヴィトスの母親が感情的になると、なぜ英語になるのか、不思議に思った。

2005年スイス/監督:フレディ・M・ムーラー/テオ・ゲオルギュー/ブルーノ・ガンツ「ヒトラー~最期の12日間」「ベルリン・天使の詩」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『穴』"The Hole"

☆恐いし、気持ち悪いし、不潔だし…

なんでこのDVDを借りようと思ったんだっけと後悔しながらずっと最後まで見た。そうだ、イギリスのパブリック・スクールの恐い話だったから、借りたんだ。ソーラ・バーチも出ているし。

イギリスの私立学校を思い出した。こんな感じだった。古いお屋敷を学校にした建物、広い敷地、こんな「穴」があってもおかしくない。ああいう学校に通うティーンズが喜びそうな話だ。

でも、私はだめ。虫がいっぱいわいてくるのも、汚物だらけなのも、不衛生なのも、全部だめ。心拍数を刻むようにずっと流れる音楽もなんかイヤ。後悔しっぱなしなのに、最後まで見てしまった。

2001年/監督:ニック・ハム/ソーラ・バーチ「アメリカン・ビューティー」「ホーカス・ポーカ」/キーラ・ナイトレイ「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ラブ・アクチュアリー」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/07/10

『スウィーニー・トッド』"Sweeney Todd "

☆歌は下手、グロテスクさも不必要と言いたくなるのに、引き込まれる。

ミュージカルだからといって明るいものばかりではなく、「ジキルとハイド」も連続殺人が起きるし、気味の悪さは、「スウィニートッド」にまさるとも劣らない。

でも、舞台が正視できるのは、舞台ならではの抽象性があるから。でもこの映画、ここまで血をあふれさせるとは。あのブチューという音も気持ち悪すぎる。ダイエット効果絶大だ。気持ち悪いという以外に、どういう効果があるというのだろう。パイ肉原料製造器に化したような歌の場面では、あっけにとられて拍手をしてしまいそうになる。

きっと、ティム・バートンとジョニー・デップは、こういうポカンと見ている観客の顔を想像しながら楽しんで作ったのだろうなと想像し、ニヤッとしてしまう。いかん、これでは。術中にはまってしまうところだった。

ミセス・ラベットとのデュエットで、スウィニートッドへの愛を語り、気づいてほしいと歌う旋律とは全く別に、勝手にスウィニートッドが歌う復讐の念に燃える主旋律。この掛け合いはミュージカルならではのもの。両方の気持ちが観客にはしっかり伝わるのに、2人の旋律はからみあうだけで、2人の間では気持ちは全然伝わっていない。ミュージカルの醍醐味だ。ぜひ舞台を見てみたいと思う。映画のような大写しのグロテスクさなしに。

それに、ここは、歌専門、ミュージカル専門の人に演じてもらわないと。ジョニー・デップの声は伸びがないから、盛り上がらない。…でも、でもいいんです。ジョニー・デップが、歌が今ひとつなのを意識してか、声が出ないからか、オドオドとしたともとられそうに歌うところが、悪人になりきれないスウィニートッドを表しているようで…。いいんです。ジョニー・デップ、大好きだから。これを作った遊び心に感染して、観客も遊園地のダークなアトラクションのように楽しめるから。

う~ん、支離滅裂だ。こういう世界大好きだから、どんどん作ってね。

2007年/監督:ティム・バートン/ジョニー・デップ「スウィーニー・トッド」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「チャーリーとチョコレート工場」「コープスブライド」「シークレットウィンドウ」「ネバーランド」「ショコラ」「スリーピー・ホロウ」「ノイズ」「ギルバート・グレープ」「シザー・ハンズ」ヘレナ・ボナム・カーター

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »