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2008/04/21

『イン・マイ・カントリー』"In My Country"

☆国の犯した過ちを自分のこととして見る視点

ネルソン・マンデラが大統領になって6~7年経った頃、イギリスの長距離バスで老婦人(白人)と隣り合わせたことがある。彼女はずっと南アフリカに住んでいたのだが、混乱の中イギリスに引き揚げてきたという。

南アフリカはとても良い国だった。ずっといたかった。そこで自分はかわいい日本車を運転していて、その車でピクニックに行くのがとても楽しみだったという。みんな南アには悪いイメージしか持たないかもしれないけれど、自然が美しい良い国だったと話した。それを聞いて、私は違和感でいっぱいになってしまった。その後も何度か南ア在住だった白人に会ったが、いつも、何か違和感が残った。その原因がこの映画を見てはっきりした。彼らの語り口がまるで他人事だったから違和感を持ったのだ。

『イン・マイ・カントリー』の題名が示す通り、アナは過去に起こったことを他人事にはせず、しっかり見つめ、恥じ、深く傷ついていく。『遠い夜明け』に描かれたような悲惨な事実への迫り方が浅いのは、この映画の主題が、南アで起きたことを告発することではないからだ。描きたかったのは、自分の国で起きた出来事を「自分のこと」として捉える白人の姿なのだ。それができる人は滅多にいない

日本軍の蛮行について内省してみるまでもなく、自分が直接関係していない過ちを「自分のこと」として捉えることは難しい。その国に残ることを選んだ人たちは生きていくことを第一として必死になるだろうし、離れることを選んだ人たちは、悪い出来事をなかったことにして、良い思い出だけを抱いて生きていきたいだろう。

そして、南アフリカ人である白人のアナの痛みが理解できたのが、アフリカ系アメリカ人で黒人のラングストンだというのはおもしろい構図だと思った。

2004年/監督:ジョン・プアマン/サミュエル・L・ジャクソン「チェンジング・レーン」「アンブレイカブル」「交渉人」/ジュリエット・ピノシュ「ショコラ」「イングリッシュ/ペイシェント」

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2008/04/18

『12人の優しい日本人』

☆すぐに全員一致で無罪なのに、飲み物の注文はバラバラでごちゃごちゃ。

陪審員の話し合いの冒頭から笑ってしまった。「まず、決を取りましょう」で、全員が「無罪」。じゃ解散。帰りかけに「でも、あの女絶対やってますよねえ」って。あまりにも日本人だ。

「空気読めない」は、言葉こそ最近、出てきたものだが、「みんなと一緒」を良しとする風潮は昔からある。さらに、日常生活の中で突然、陪審員なんかに選ばれてしまった人は、仕事が忙しいなどの理由がなくとも、なるべく早く日常空間に戻りたいはず。そんな状況で、みんなと一緒でないほうに手を挙げられようか。反対であったとしても、議論などしたことのない我々が、突然、理路整然とした理由を述べる人になど変身できるわけがない。みんなと一緒でない側が「なんとなく反対」と言い出したりすると、もう、収拾がつかなくなる。

笑いながら、裁判員制度が不安になってきた。陪審員と違って裁判員制度には裁判官が入る。その一挙手一投足に、全員がささーっとなびきそう。笑って見ている場合ではないのかも。

1991年日本/監督:中原俊/脚本:三谷幸喜「犬神家の一族」「THE有頂天ホテル」「笑の大学」「みんなのいえ」「ラヂオの時間」

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『女はみんな生きている』"Chaos"

☆女性は元気になれる映画、男性は?

親に売られ、ドラッグ中毒で逃げられない状態にされた上で、娼婦にされるノエミの話は見ていられないほど悲惨なはずだ。最後も微妙な余韻を残した終わり方なのに、この映画を見ていると、なぜか元気になってくる。

その理由は、原題の通りのカオスの中で、女たちが自分と状況を冷徹に見据え、考え、強くなり、行動しているからだろう。この「強く」はそれぞれの性格に合った現れ方をしている。ノエミは美しさを持った強さ、エレーヌは可愛さを持った強さ。この強さが悲惨さを超えているから、スカッとした気分で見ていられる。

それに比べ、男たちはことごとく…、なさけない。男性の感想を聞いてみたいと思うのだが、男性には申し訳なくて、この映画は薦められない。

ストーリーのテンポにも、音楽にも、コメディタッチが散りばめられている。ここで笑わせるか?笑ってしまっていいのか?と思いながら、笑って笑って、爽快になった。

2001年/フランス/監督:コリーヌ・セロー/カトリーヌ・フロ/ヴァンサン・ランドン/ラシダ・プラクニ

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2008/04/13

『ブラッド・ダイヤモンド』"Blood Diamond"

☆映画だけでなく、特典映像で監督が語るオーディオコメンタリーがすばらしい。

ならずものを描いただけの映画ではない。ダイヤモンドを巡る利権、供給をコントロールすることで操作されるダイアモンドの価値、それが産出国の状況を悲惨なものにしていく構造。国際的に問題になっている児童虐待の最たるものである少年兵。一見、魅力的に感じるアメリカの音楽や服装や文化に麻薬を使い、少年達を強烈な飴と鞭で人殺しマシンにしていく様子。それらを、父と息子の絆を軸にし、美しい自然があふれる大地を背景に描き出す。

一方、レオナルド・ディカプリオが演じるならずものに近いアフリカの白人像も、実は奥深い背景がある。そして、レオナルド・ディカプリオはその奥深さを演技の端々から十分に感じさせる。

ローデシアで平穏に家族と暮らしていた白人少年は、その国が南アとして独立する際に、白人であるがゆえに悲惨な家族離散体験をする。そしてその後、強力な傭兵となり、危機をくぐり抜け、状況を野性的に判断する機敏さを身につけていった。しかし、その後、平和になっていく南アに傭兵としていることができなくなり、ダイアモンドに引きつけられるように、シエラレオネにやって来る。

映画では、この部分はすでに過去のことになっていて、ストーリーとしては描かれていない。しかし、黒人社会にいるアフリカ人である白人がヨーロッパから来る白人達とは別の人種として扱われていることは十分にわかる。それを背景に、彼はある時は荒んだ影を見せ、ある時はそれが魅力に変わる。

映画もすばらしいが、特典映像の監督のコメンタリーがすばらしい。映画で親と子のストーリーを堪能したあと、社会的背景の知識を深めることができる。

2006年/監督:エドワード・ズウィック「ラスト・サムライ」「トラフィック」「恋におちたシェイクスピア」/レオナルド・ディカプリオ「ギャング・オブ・ニューヨーク」「ザ・ビーチ」「タイタニック」「ロミオ&ジュリエット」「ギルバート・グレープ」/ジェニファー・コネリー「砂と霧の家」「ハルク」「ビューティフル・マインド」「ダークシティ」/ジャイモン・フンスー「アイランド」「コンスタンティン」「サハラに舞う羽根」「アミスタッド」

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2008/04/04

『CODE46』"CODE46"

☆心の底からわき上がってくる懐かしさにかきむしられる思いがする。

全くの異文化、全然知らない土地なのに、その異質さが、心の底から懐かしく、既視感を持って感じられることがある。それがこの、有害な太陽の光を避けて夜活動する生活をしている、不思議な未来世界の中に感じられた。

一目惚れなんて信じないが、それ以上に信じられないDNAの一致によって惹かれ合う感情などという論理、そこに妙に説得感があって、引き込まれていく。

設定もこの恋愛も、全然論理的でないのに、感情だけが妙に共鳴して、どこかで感じたことのあるような、心の底からわきでてくる懐かしさにかきむしられる思いがした。

砂漠の上空を飛ぶ時の音楽から始まり、映像とすべての音にどんどん引き込まれていった。音と2人の演技と情景に心がかき乱された。自分も何か大事な記憶や、そういう記憶を得る機会を逃して年を取ってきたのかもしれないという、取り返しのつかないような感情にとらわれていく。

2003年/監督:マイケル・ウインターボトム「グアンタナモ、僕達が見た真実」「イン・ディス・ワールド」/ティムロビンス「輝く夜明けに向かって」「あなたになら言える秘密のこと」「ザスーラ」「ショーシャンクの空に」「ミッション・トゥ・マーズ」「ジェイコブス・ラダー」/サマンサ・モートン「マイノリティ・リポート」

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