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2008/02/28

『サハラに舞う羽根』"The Four Feathers"

☆娯楽映画としても楽しめるが、随所に見逃せないシーンがあり、印象に残る。

兵役拒否した出自の良い青年が、恋人のため、友情のため、臆病者という自分自身を克服し、強く逞しくなっていく話。

しかし、ヴィクトリア時代とアフリカという要素が入ってくるとそれだけの話ではなくなる。騎馬隊に無敵を誇っていた、英国軍のスクエア(角陣)という兵法が砂漠の中で繰り広げられる壮大さがすばらしい。そして、スーダンの英雄で、さまざまな部族の統一を成し遂げたというマフディに率いられる軍の戦法がすばらしい。このあたり時代考察がしっかりなされているようだ。

一方、中流の上と上流に属する子弟達からなる、英国軍の若者達も、ひとりひとり、それぞれの個性の違った良さが細かい演技から感じられるようになっていて、おもしろい。脇役だが、背が高く、純粋で、単純なくらい真っ直ぐで、その代わり、直感で真実が見える(だから、あの混乱の中でハリーに気づく)ヴィカー青年が、私にはいいなあと思えた。

こういう要素があるので、この映画は娯楽作品としてかなり楽しめる。ただ、この作品、それだけでもない部分がある。

暗い中をうごめく群衆という形で描き出された牢獄。あれは、アジア人の監督ならではの精神世界を感じさせる光景だ。かなりのインパクトがあった。

また、印象深く頭に焼き付く人物に、奴隷種族だと言われたアブーがいる。あの風貌の彼が「神に導かれて」というと、そうなのかと素直に思ってしまう。

この小説が書かれた時代とは違って、現代の感覚では、「戦争忌避、即、悪」ではない。また、他民族侵略は、肯定しがたいものがある。そうなってくると、英国軍隊を肯定的にとらえられないだけでなく、単なるアラブの裏切り者にも見えるアブーを肯定するのも難しくなってくる。小説が書かれた時代なら、西洋世界の理解者、イコール、善となったはずだが。

しかし、なぜか、その言動から、アブーは周囲の価値観に左右されず、神に従って生きる、天涯孤独の不思議な存在として、深く印象に残る。

2002年/監督:シェカール・カプール/ヒース・レジャー「チョコレート」/ウェス・ベントリー「アメリカン・ビューティー」/ケイト・ハドソン「あの頃、ベニー・レインと」/ジャイモン・ハンスゥ「アミスタッド」

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2008/02/25

『ネコのミヌース』"Minoes"

☆「キャッツ(ミュージカル)」と「101匹わんちゃん」の良さをダブルで味わえる。

ある時、突然、人間になってしまった猫のミヌース。神経をはりつめ、おびえて目を見開き、まわりの様子を伺う猫らしさを、おしゃれなファッションに身を包んだ「ブラック・ブック」のカリス・ファン・ハウテンが、細い体で機敏に演じる。本当に可愛らしい。

淑女らしくふるまっているかと思うと、「餌」につい猫の本能むき出しで、しゃぶりつくところもまた良い。ハイヒールを履いたまま、しなやかに木から飛び降りた瞬間から、ミヌースの虜(とりこ)になってしまった。

そのミヌースと出会うのが、屋根裏部屋に住む、内気でさえない新聞記者ティベ。なんという取り合わせ。この2人に、大家さんの娘と、街の猫たちが加わり、お洒落で、楽しいストーリーが展開する。

2001年オランダ/監督:フィンセント・パル/カリス・ファン・ハウンテン「ブラック・ブック」

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2008/02/24

『ニューヨークの恋人』"Kate & Leopold"

☆メグ・ライアンは何歳になっても、マンハッタンがよく似合う。

自信満々で大成功しているというほどではないけれど、ニューヨークで素敵な生活をしている。そんな役を生き生きと可愛らしく演じる。

1989年の「恋人たちの予感」はまだ見ていないが、1998年の「ユー・ガット・メール」、そして2002年のこの作品と、ニューヨークを舞台にしたラブ・コメディ。素敵だから、二匹目のどじょうを狙ったなどとヤボなことは言わない。

窓から出入りするあのアパートもおもしろいし、本物の貴族のレオポルドは、時代がかっているのに、だんだんと滑稽さを通り越して素敵に見えてくる。いや、すばらしい。みんなちょっとずつ良い人だし。

「その後、二人はずっと幸せに暮らしましたとさ」となるのかどうか、かなり気になるところではあったが、軽く、ほんわか楽しく見ることができた。

2002年/監督:ジェームズ・マンゴールド/メグ・ライアン「電話で抱きしめて」「シティ・オブ・エンジェル」「ユー・ガット・メール」/ヒュー・ジャックマン

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2008/02/22

『告発』"Murder in the First"

☆この事件の告発がきっかけで、アルカトラズ刑務所が閉鎖になったという。その実話に基づく映画だという事実が重い。

野球に熱狂的だった時代のアメリカ。ひとりは光も差さない独房に虐待され3年間も入れられていたため、試合を知らない。暗闇の中で、過去の記憶を辿り、正確に頭の中で何度も再現することで、正気を保とうとしていた。たった5ドルの盗みのために。もうひとりはきまじめに勉強し弁護士になったばかりの新米。野球選手とサッカー選手の区別もつかないほど世間のことを知らない。

「野球の試合結果を知らない」という点では同じでも、正反対の境遇と正反対の方向からの一致。とうてい共感できる接点さえなさそうな2人だったが、互いに心を開いていく。それと同時に、2人は次第に困難な道を選ぶことになっていく。その本当の意味や偉大さにも気づかず、「正義」という言葉さえ振りかざすことなく、2人は自然に茨の道を選ぶことになる。

前半、残酷すぎる囚人虐待の場面があるが、読者の共感を得るために必要なシーンなのだろう。

1994年/監督:マーク・ロッコ/ケビン・ベーコン/ゲイリー・オールドマン

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2008/02/14

『あるスキャンダルの覚え書き』"Notes on a Scandal"

☆よくある公立学校の職員室の風景なのに、ゾクゾクと来るこの恐さ。

イギリスの公立の高校で教えていたことがあるので、その時の職員室の雰囲気をそうだったそうだったと思い出しながら見た。

職員室にはこのシーバとバーバラのような2つの「階級」の女性がいた。

中流家庭に育ち、夫の稼ぎも中流家庭を保つ程度にはある。家もシーバの家のようにある程度のゆとりがある。シーバの家の中が少し荒れているのを見ると、普通の中流家庭よりは、少し危ういところが感じられる。

一方にいるのが、それよりは下の階級だが、がんばって教育を受け、教員になった人たち。独身で通す人も結構多い。猫を飼っている率も高い。

そこまではよくある風景。シーバほどではないにしろ、殺風景な学校に不釣り合いな雰囲気の先生が…ということまでは容易に想像できた。

しかし、それから先は、なんという展開。たまに三流の新聞には載っていたが、ここまでのゴシップはない。そして、このバーバラの恐ろしさはもうありえない。ジュディ・デンチはすごい。とはいえ、想像できなくもないと思えてしまう日常的なものからの自然なつながりが恐ろしい。ぞくっと来る。

2006年/監督:リチャード・エア/ジュディ・デンチ「ムッソリーニとお茶を」「恋におちたシェイクスピア」/ケイト・ブランシェット「ヴェロニカ・ゲリン」「シャーロット・グレイ」「ギフト」「リプリー」「オスカーとルシンダ」/ビル・ナイ「ラブ・アクチュアリー」「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ナイロビの蜂」

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『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』"Monsieur Ibrahim Et Les Fleurs Du Coran"

☆ユダヤ人の少年とモスリムの老人との心が温まる話

明るいうちから娼婦が道にずらっと立っている通りを見下ろす窓際。そこに住むユダヤ人の少年。彼は父親と心を通わすことができない。母親はとっくの昔に家を出ている。

渇きをもって生きている少年に、娼婦達や食料品店を営むイブラヒムおじさんは温かく接する。

水と油のはずの、ユダヤ人とモスリムのおじさんとの心の触れ合いは実に自然だ。モスリムと言っても、イスラム教の中でも主流ではない神秘的な回旋舞踏を行うスーフィーを信じるイブラヒムおじさんは、戒律にもコーランにも強くは縛られず自然に接することができる描き方がされている。だから、自然に、自分の中に流れているものを自然に次の世代に伝えていき、そこには親子のような交流が生まれる。

受け継がれていくもの。故郷とはどういうものなのかを、温かく感じることができた。

2003年/監督:フランソワ・デュベイロン/オマー・シャリフ「アラビアのロレンス」

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『アメリカン・ドリームズ』"American Dreamz"

☆うすっぺらで、最後はめちゃくちゃなパロディなのに笑える

パロディの元となったTV番組「アメリカン・アイドル」はよく見ていた。特に、イギリス人審査員、サイモンの真実を突いた的確な毒舌が好きだったし、それによって毎週出てくる出場者の才能の芽がどんどん伸びていく様子を楽しんで見ていたので、ヒュー・グラントの俗物的ニセモノらしさには大笑いだった。

いつも英国英語の理路整然とした表現に言い負かされているアメリカ人にとって、こういう英国人を笑いものにすることには特別な快感があるのかもしれない。

幼児のように頼りない大統領の様子は、ブッシュ大統領なら、さもありなんと思わせてしまう。テロリストはかなりまぬけ。イラク帰還負傷兵の愛国心も愛もまじめになればなるほど滑稽。その内容はうすっぺら過ぎるのに、そのうすっぺらさが笑いをもたらす。

ただ、本家本元の「アメリカン・アイドル」はお笑い番組ではないのに、かなり笑える部分があって、この映画がそれを超えられていないところはちょっと哀しい。

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