『善き人のためのソナタ』"Das Leben Der Anderen"
☆地味で知的で実直な「ヒーロー」。
このところあまり良い作品に巡り会えなかったので、自分の感受性が鈍ってきたせいかとさえ思い始めていた。そんな時、久々に私の心にヒットした映画。
ここから先ネタバレというほどではないが、映画未見の人は読まないほうが楽しめます。
反体制派と思われる芸術家の家中に盗聴装置を仕掛け、屋根裏部屋で監視を続ける秘密警察の男。冷徹で緻密な彼は芸術家のひと言ひと言を逃さずしっかり読み取っていく。そして、その知的な頭脳で緻密にターゲットの言動を読み取っていくと、体制側の自分の凝り固まった信念に亀裂が入り始める。彼の中の善き人が目覚めてくる。
英雄の目覚ましい活躍により悪を倒すわけではない。しかし、感情によって行動するのではなく、知性が感情を目覚めさせ、真の判断に行き着くという知的なストーリーが心の底にさわやかさをもたらす。
映画の締めくくりも、格調の高さを裏切らない。
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