『砂の器』
☆原作の和賀英良はピアニストではない。
原作では音楽家であるが、音を出すマシンを使う、今までにない形の作曲家だ。これなら納得できる。ピアノは中学生くらいの年齢で学び始めたのだったとしても遅すぎるのだから。
映画の設定にはものすごく無理がある。それなのに、映画を包み込む正統派のピアノ協奏曲「宿命」には並はずれた説得力がある。ハンセン氏病や終戦の暗い時代、物語の背景すべてが重く包み込まれ、ピアノ協奏曲の「宿命」という題名に相応しい重厚な音に込められ、無理も一緒に包み込んで納得してしまう。
問答無用とばかりのピアノ演奏に圧倒され、理不尽なことも、重苦しい時代背景も、納得できない宿命も、声を上げられることすらなかった悲しみも、すべてが感動の波に包み込まれていってしまった。映画の最後にピアノ協奏曲の演奏を延々と流すなど、とんでもない映画の作りなのに、それがすばらしい。なんなのだこれはと思った。
ピアニストを題材にした映画、4つ目のレビューとなりました。「真夜中のピアニスト」「海の上のピアニスト」「戦場のピアニスト」と書いてきています。
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