『青春の輝き』"School Ties"
☆社会の縮図がきちんと描かれている青春映画。
この時代、ユダヤ人がこんなに差別されていたのかと思う。しかし、同時に、優秀であればハーバードに行くチャンスもあり、さらに優秀な成績を修めれば、可能性が開ける国でもあった。希望と変えられない壁とが入り交じった国であることが、私立高校の中にも縮図として見られる。
差別に対して、ただ1人、正しさで毅然と向かっていくことのできるデイビッドを見ていると胸が痛むと同時にスッとする。しかし、差別やいじめに苦しむ人は、いつも体格や頭脳があそこまで恵まれているわけではない。スッとはするが、根深い問題は残る。
最初のほうで、監督が彼に、「食べ物の好き嫌いはないか」と聞く場面がある。あれは「食事に制限はないか」と聞いているわけで、宗教的食事制限に言及している重要な場面だ。それを彼は「好き嫌い」としてかわしている。そこで、監督は「手持ちのカードを見せることはない」という意味のことを言うわけで、食事制限の部分の訳をもう少し訳を工夫しないと意図が伝わらないのが残念だ。彼は、あの場面で、瞬間的にその意味を理解し、宗教で禁じられた食事も摂っていくことを決意しているのだから。
「良い話」にするための変な妥協をせずに、希望と絶望とが入り交じった社会をきちんと描き出していて、なおかつすがすがしさが漂う、好きな作品だ。
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