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2007/04/26

『ヒトラー~最期の12日間』"DER UNTERGANG/DOWNFALL"

☆無力で無能、狂暴でさえもないヒトラーの姿を見せつけられる。

ヒトラーの女性秘書の目を通して描かれた映画。激しい爆撃が続くベルリン中心地の地下にある司令部。物も酒も豊富にあり、爆弾は飛来しない安全な地下要塞。そこで精神的に追いつめられていくヒトラー。まわりにいる将校や幹部達も、ヒトラーの無力さに気づき始めているが、すでにヒトラーに反対する力もなければ、何かを切り開こうとする気力もない無能な集団と化している。

一方、秘書3人を始め、女性達には、ヒトラーへの敬愛の情が見られる。ヒトラーは女性達には紳士的で優しく接するのだ。

戦争末期、敗北側の将校を始めとする司令部はこのような収拾もできない無力と狂気のような夢想に飲み込まれてしまうものなのか。手に余る権力を持ってしまった無能な人間が引き起こしてしまった取り返しのつかない状況を嫌というほど見せつけられた。

2004年/監督:オリバー・ヒルシェヴィゲル「es [エス]」/ブルーノ・ガンツ「ベルリン・天使の詩」

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2007/04/25

『カラーパープル』"The Color Purple"

☆原作を読まなくてはと思った。

父親による性的虐待から始まり、出産、人身売買のような結婚と続き、女性差別、人種差別と重苦しさを見せ続けられる。しかし、スピルバーグは重苦しさに押しつぶされるだけの映画にはしなかった。この監督のそのテクニックが、ときには、あざとく感じられることもあるのだが、この映画は違った。

人種差別されている黒人社会の中にさらに存在する階級差別、それに性差別が加わる。すべての差別の底辺にいるような娘セリー。そのセリーが、虐げられ、無力に屈っしながらも、静かに、しっかりと人を見、社会を見、黙って学び、成長していく。教育も受けられず、人間として見向きもされない場所にいるからこそ、観客席から映画の画面を見るような一歩離れた冷静な立場から観察し、学んでいくことができた女性。ときには、陰でクスッと顔を隠して笑いながら。

顔を隠して笑うのは、セリーが父親から「笑うと醜い顔がますます醜くなる」と言われたことに起因するのだが、そこには、「自己解放」という観点からも、また「目立たない席から社会を見ている」という観点からも、キーとなる意味が見出せる。

底辺にいる女性同士がさらに蹴落とし合いをするのではなく、互いの中に真実を鋭く見出し、共感していく様子が希望を与えてくれる。

1985年/監督:スティーブン・スピルバーグ「ジョーズ」「未知との遭遇」「E.T.」「インディ・ジョーンズ」「カラー・パープル」「A.I」「マイノリティ・リポート」「プライベート・ライアン」「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」「ターミナル」「ミュンヘン」「シンドラーズリスト」/ウーピー・ゴールドバーグ「17歳のカルテ」「天使にラブ・ソングを…」

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2007/04/24

『クライシス・オブ・アメリカ』"The Manchurian Candidate"

☆大統領選をめぐる陰謀がイラク戦争を思わせる胡散臭い英雄單と結びつく。

デンゼル・ワシントンの、強く優しく信頼感のある誠実な雰囲気に引き込まれていく。大統領候補の母エレノアを演じるメリル・ストリープの大演説はすごい。ステージ・ママの大統領版。

あっと驚かせる結末というのとは少し違うが、いろいろな面で納得してしまう。荒唐無稽な感も否めない設定なのに、心理面では大きく頷き、納得してしまう。

2004年/監督:ジョナサン・デミ「羊たちの沈黙」/デンゼル・ワシントン「マイ・ボディガード」「ジョンQ-最後の決断-」「トレーニング デイ」「マルコムX」「遠い夜明け」/メリル・ストリープメリル・ストリープ「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「めぐりあう時間たち」「ミュージック・オブ・ハート」「母の眠り」「マディソン郡の橋」「判決前夜 ビフォー・アンド・アフター」/リーヴ・シュレイバー「オーメン666

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2007/04/16

『アラバマ物語』"To Kill a Mockingbird"

☆登場する少年の1人があのカポーティということで見てみた。

アメリカ南部の村。人種差別が残る時代。その中での「正義」について描いた作品。

子どもの頃、何かわからない恐ろしいものがあった時代を思い出す。よくわからないままに温かいものに包まれていた時代でもあった。怖いものも、温かいものも、大人は子どもには説明してくれない。世の中から隔離されていた時代でもある。そういう子どもの目を通して、村の中にある世界の構図を描き出している。

モッキング・バードを殺してはいけないという原題の心がよくわかる。

主題というほど強く描かれているわけではないが、アメリカの映画には当たり前のように登場する陪審員制度と2年後に始まる日本の裁判員制度についても考えてしまった。過ちを繰り返しながら、正義について身近なものとして、考えてきた国の重みを感じる。

1962年/監督:ロバート・マリガン/グレゴリー・ペック「ローマの休日」「オーメン」/ロバート・デュバル「ジョンQ」「地獄の黙示録」「スリング・ブレイド」

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