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2007/02/25

『クリクリのいた夏』"Les Enfants du Marais"

☆心から「いい映画に出会った」と思える作品。

映画で表される「自由」というと、英語圏の映画の影響もあって、「権力からの自由」というイメージがあったが、この映画を見ていると「固定観念からの自由」というイメージが強い。こういう「解き放たれ、固定観念にとらわれずに考える精神」こそが、フランスの「自由」という概念なのだろうと思った。

育った家庭も、受けた教育も、経験も全く違う人々が自然に同じ美しい湿地に集まり、自由な精神で交わり合うようになる。生きていくのに必要なものは湿地が与えてくれる。はらはらしたり、ギクッとしたりする局面はあるものの、自然に抱かれほっとする時が流れる。

ここで描かれている「自由」とは、自由のために戦ったり、排斥したりするのではなく、すべてを受け入れ、飲み込んでいく懐の深いものを育てていくことだということを伝えてくれる。

1999年/監督:ジャン・ベッケル「ピエロの赤い鼻」/ミシェル・セロー/アンドレ・デュソリエ「ピエロの赤い鼻」/ジャック・ヴィルレ「ピエロの赤い鼻」/イザベル・カレ/エリック・カントナ>」

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2007/02/22

『ナイロビの蜂』"The Constant Gardener"

☆アフリカの大地、サスペンス、社会問題、ロマンス、すべてが調和して語りかけてくる。

最近、サスペンスに見せかけておいて、謎解きは中途半端なまま、「実はこっちがテーマだったんですよ」というオチになる映画を多く観て、不完全燃焼のし続けだった。これは違う。製薬会社のケニアでの黒い裏話を扱ったサスペンス的要素はきっちりと構成した上で、ロマンスも壮大に締めくくっている。そして最後に、人権問題について考えさせられることになる。

妻テッサ(レイチェル・ワイズ)はアフリカの大地に消息を絶つ。それからの夫ジャスティン(レイフ・ファインズ)の行動はすごい。それまではガーデニングを愛する出自の良い典型的な英国紳士でしかなかったのに、奔放で革命家気質で情熱家だったテッサのやり残したことを理解し、成し遂げるために、軌跡を追っていく。ヤワな上流階級の人間がここまで変われるとは。

2人は正反対であるがゆえに惹かれあい、結婚する。しかし、正反対であることは2人の生活に亀裂を生み出し、結局、それぞれの信念に干渉せず、尊重し合うという形で折り合いを付けて生きてきていた。これまでは。

理解するということはこういうことなのかと思う。レイフ・ファインズは内に秘めた静かな情熱を演じる時、美しく輝く俳優だ。レイチェル・ワイズも美しさもこの背景に合う。そして、その背景を撮っているのが「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレスなのだからぴったりはまる。

ひとつだけわからないところがあった。あのピストルだ。→(ネタバレ反転)あれは、護身用ではなく、彼の死を自殺だと偽装するために、最初から仕組まれて手渡されたものだったと理解したのだが、それで正しいのだろうか。そうすると、情報局の彼は自分の癌の話などを持ち出して心を開いたかのように見えたが、実はすべての黒幕だったことになる。そして、ジャスティンはその罠から逃れられないことを知った上で罠に身を投じ、残された最後の手段で真実をイギリスに送って、妻のやりのこしたことを成し遂げたことになる。…という解釈したのだが。

2005年/監督:フェルナンド・メイレレス「シティ・オブ・ゴッド」/レイフ・ファインズ「オスカーとルシンダ」「イングリッシュ・ペイシェント」「シンドラーのリスト」/レイチェル・ワイズ「コンスタンティン」「ニューオリンズ・トライアル」「スターリングラード」「ハムナプトラ」「輝きの海

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2007/02/21

『バス174』"ONIBUS 174"

☆「シティ・オブ・ゴッド」の世界で実際に起きた事件のドキュメンタリー。

ドキュメンタリーの凄さを感じた。テレビで流されたバスジャックの生放送映像が時系列で映されていく。その合間に独自取材したインタビューが入る。インタビューは、人質となった人々、警察官、犯人サンドロの叔母、ストリートチルドレン、社会学者、ソーシャルワーカー、監獄の中の囚人やギャングにまで及ぶ。

この事件はブラジルのテレビ各社がリアルタイムで放映され、高視聴率となった。「BUS174」でこの事件の流れをたどると、監督による再構成によって、リアルタイムで目撃した以上の理解が深まる。事件の背景、「見えない子ども達」となってしまっているストリートチルドレンの実態、警察の腐敗、囚人の扱いがさらに新たな暴力を生み出していることなどの社会構造が見えてくる。

事実だけを映しているようでも、再構成されたストーリーは思想を雄弁に物語る。それがドキュメンタリーなのだと感じた。凄い内容だった。高く評価できる。

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ここから先は蛇足だ。私は、テーマから外れて語られなかった部分が気になってしかたがなかった。殺された女性については、あまり描かれていない。しかし、彼女がバスの外から見てわかるほどに全身をわななかせていた姿が、目に焼き付いて離れなくなってしまった。まだ少し余裕のある局面であり、殺される寸前の映像ではなかったにも関わらず、内部からわき出てくる恐怖に全身を大きく震わせていた。

警察と選挙を控えた政治家は、人質1人くらい殺されてもしかたがない。その時なら犯人を撃てると踏んでいたのではないか。他の人質達の行動に若干の余裕があったのも、真っ先に殺されるのは自分ではなく、彼女だということを無意識にしろ感じていたのではないか。なぜなら彼女は犯人の信用を失うようなことをしてしまったから。彼女もまわりの人間もわかっていた。インタビューに答えた警官も「殺されるとしたら彼女だと思った」と言っている。

そして、彼女は「見えない子ども達」と同じ構造で、「見てもらえなく」なってしまったのだ。

2002年/監督:ジョゼ・パジーリャ

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2007/02/20

『プレッジ』"The Pledge"

☆2度見ると納得できる。でも2度見ないとわからない映画ってどうなんだろう。

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ネタバレした感想を書いています。
未見の方はご注意ください
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1度目の鑑賞は腑に落ちない部分が多く、ストレスがたまっただけだったが、2度目はテーマがよくわかりおもしろく見られた。

映画には約束事のようなものがある。例えば、特定の車のナンバープレートを大写しにすればそれは意味があるということ。パレードの男の子、それも目撃者だった男の子をスローモーションで長く映せば、それは何かにつながるはず。それが何にもつながらないって「あり」なのかな。

そういう雑音に惑わされずに2度目を見た時、今度はこの映画の主題が迫ってきた。ジェリー(ジャック・ニコルソン)は有能でみんなに愛されていた刑事だったが、刑事生活の最後の10年くらいはどこかが壊れ始めていた。しかし有能さは残っていて、結局、その「嗅覚」が正しかったことが観客にはわかるのだが…。

いい加減で凡庸な他の警官達は、彼が壊れ始めていることに気づいても、温かく接し続けている。しかし「壊れている」と思っているため彼の嗅覚の正しさには気づかない。これはきっと、退職していく誰もが多かれ少なかれ感じている悲哀やもどかしさと共通点があるだろう。老いて、昔ほど有能ではなくなっているかもしれないが、自分には見えているものがある。若者達は優しくいたわるように自分に接するが、理解しようとはしない。老いても自分には明確に見えているものがあるのに…。叫びたいが叫んでも理解できない未熟で無能な若者達。この悲痛な叫びが2度目の鑑賞では伝わってきたし、よく描けていると思った。

退職後の彼は、幸運にも手に入れることができそうだった暖かい家庭生活まで壊してしまう。それが、テレビ画面に映る釣り番組で、一瞬だけ出てくる「生のエサが良い」という話が契機となっているのだから…。こんなさらりとした扱いの伏線では1度目の鑑賞では見逃してしまう。ここが「やってはいけない領域」へと足を踏み入れていく境目となり、ここから最後の場面が納得できる芽が育っていくのに。

題材は面白いし、ストレスが解消されない終わり方も、2度目は納得できた。とはいえ、やはりミスリードを誘う伏線が多すぎて、テーマが見えにくくなり、真髄のところを味わうところまでいかないのが残念だったと思う。

2001年/監督:ショーン・ベン/ジャック・ニコルソン/その他よく見る人大勢

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2007/02/08

『シティ・オブ・ゴッド』"Cidade de Deus"

☆子供に殺しを演じさせるところさえ除けば、すばらしい映画だと思う。

すごい映画だということは認める。しかし、小学生くらいの子が同年代の子を殺す場面があることと、子供にそういう演技をさせているところは認められない。「スラムの子供を出演者に使った」「彼らに希望を与えた」というようなことが免罪符になるとはとても思えない。

上記さえ別にするなら、すばらしい映画だと思う。殺しの場面を、流れる血や銃声を強調して表現するのではなく、殺した側の「狂喜の表情」「力を得た喜び」といったもので表現することによって、映されていないところに存在する悲惨さや恐怖が倍増するように描かれている。

この映画が描くギャングは、世継型のボスがまとめるマフィアや暴力団とは違う。不良の子供の一団が、武器を手にし、そのままティーンズとなり、麻薬を売り、組織を作り、さらに強力な武器を買い、武力抗争をするまでに成長してしまうところに特徴がある。そして、そこが「文明社会」に住む私たちを震撼させるところとなる。

個人の年齢的成長と、組織の成長が並行して進むので、組織の変貌は彼らの青春の軌跡と一致する。ごく普通の子供が経験しておかしくない「青春」がそこには透けて見える。そこで、つい、その感傷的な部分に共感しかけてしまう。しかし、この映画はそこに留まってはいない。他人の痛みを感じることができない幼さが、暴力行為へと形を変え、そのまま組織を包み込んでいく。マフィアが持つような「一族の絆」のようなものも存在しないまま暴力的集団へと突っ走る。

スラムの生活には希望がない。普通に労働して生活を築くことさえ夢でしかない。そういう環境の下では、麻薬を売ることによって大金が手に入ることと、銃を持つことで力が手に入ることは突出した夢のようなものとして存在することはわかる。最初の燃料襲撃事件で象徴されるように、ギャングの不法行為とスラムの生活が密着していることもわかる。それゆえギャングの中に、悪い人と良い人が混在することもわかる。麻薬の製造販売が、普通の家内制手工業や小規模経営の商店と同じように、地道でショボい面があることを指摘しているのも興味深い。

しかし、そんな「普通」と似たものの集まりが、想像を絶する世界を作り上げてしまっているメカニズムがわからない。たぶん、そもそもその「神の街」が作られたところにその起源があるのだろう。

2002年/監督:フェルナンド・メイレレス「ナイロビの蜂

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2007/02/05

『恋愛適齢期』"Something's Gotta Give"

☆安心して楽しく見ていられる、落ち着いた世代向けのロマンティック・コメディ。

ダイアン・キートン演じるマリンを見ていると、ときおり、「ダイアン・キートンもこんなに老けちゃったんだ」と思わせられる。しかし、それが吹き飛ぶように、はっとするほど美しい瞬間がある。また、変に若ぶっていない素朴な可愛らしさがある。ストーリーが進展していくと、点のようにちりばめられたそんな魅力が徐々に全体を覆っていくようになる。

ハリウッド映画も、美しく年を重ねること、ピークを過ぎた女性の美しさを見せることを考え始めているのだなと思う。そして、それが成功している。

ただ、ジャック・ニコルソンが演じる63歳のプレイボーイ、ハリー魅力をもう少し掘り下げて理解するためには、過去の女性達に聞いてまわった話について、もう少し語らせてほしかったという気がしてならない。もちろん、そんなことなしでも、彼には優しさと格好悪さが混じり合った魅力が存在することはよくわかるのだが……。

脇役達もそれぞれに魅力的。

2003年/監督:ナンシー・メイヤーズ/ジャック・ニコルソン/ダイアン・キートン/キアヌ・リーブス「マトリックス」「コンスタンティン」「恋愛適齢期」「マイ・プライベート・アイダホ」/アマンダ・ピート/フランシス・マクドーマンド

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2007/02/02

『セレブの種』"She Hate Me"

★特典画像のメイキングを見ると楽しそうに作っているのだけれど…

コメディを借りたつもりだったのだけれど、最初がドーンと来て、まじめに見てしまった。告発モノになるのかと思って見ていたら、途中からコメディになっていく。コメディ部分はとってもおかしいのだけれど、最初の告発部分が気になって、吹き出しては、「あれ、笑って良かったのかな」という感覚がどこかに残ってしまい、笑ってはいけなかったような気がしてきてしまう。

レズビアンの人権問題も、ああそうかと思えるところもあって、いろいろ鋭いところはあるのだけれど、ゆっくり考え込んで良いのか、笑って吹き飛ばしたほうが良いのかわからないのが不安で、楽しみ方が中途半端になってしまった。

これ、笑い飛ばして良かったのかな。それとも、もう少し深く考えながら見るべきだったのかな。誰か教えて。

2004年/監督:スパイク・リー「マルコムX」/アンソニー・マッキー/ケリー・ワシントン/エレン・バーキン/モニカ・ベルッチ/バイ・リン

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