『グアンタナモ、僕達が見た真実』"The Road to Guantanamo"
★初めて見たドキュメンタリー・タッチの映画
イギリスに住んでいた時、パキスタン出身の人とも接していたので、こういう普通の若者のことが想像できる。だから、彼らがパキスタン系イギリス人として平均的な生活をしていただろうことも想像できる。そして、ごく普通のイギリス人がするように好奇心と冒険心でアフガニスタンに足を伸ばしてみたくなったことも。
しかし、パキスタン、アフガニスタンと続く、その光景の中に彼らは溶け込んでしまうのだ、違和感なく。しかし、イギリス英語を話すところも、観光にはしゃぐところも、そして、劣悪な環境で体調を崩すところも、ひ弱さも含めて、全く、イギリスに育った人間そのものだ。
ところが、戦渦に巻き込まれ、危機を切り抜け、北部同盟に捕まり劣悪な捕虜収容所にと続くうちに、彼らの逞しさが感じられるようになってくる。3人の絆が彼らを強くしているのだ。こんな劣悪な衛生状態と環境。コンテナへの銃撃に至ってはありえないことと思ったが、どうにか生き延びる。
その後、彼らの思いとは裏腹に、リベラルなはずの米軍の手に移ってからは、肉体的な締め付けの上に精神的な締め付けも加わり、それ以上の極限状態へと追い込まれていく。しかし、3人はさらに精神的にも強くなる。「アッラーを信じるか?」という問いに、「そうありたいと思っている」と答えるアシフはすごいと思った。イギリスで生活している時はあまり宗教的な価値観を持たずに生活してきた若者であっただろうにと思う。
ストーリーは役者によって演じられているが、3人へのインタビューと、随所に挟まれる、ブッシュ大統領の演説や、報道機関が取った同じ場面の映像などが「こちら側」と「あちら側」との乖離を効果的に表現している。
グアンタナモでアメリカがやっていることは、成果が出ていないことから考えても的を外しているのだろう。アルグレイブ収容所の例もあるように、アメリカではなく、わざわざキューバのグアンタナモに作った施設の中でとんでもないことも横行しているのは真実だと思われる。
一方、昨年夏にイギリスの警察はイギリスに住むパキスタン人の若者を逮捕し、液体爆弾によるテロを未然に阻止している。疑心暗鬼を生むテロ行為が元凶であることは確かだ。しかし、この3人の若者はこの体験を経て、どういう方向に進みたいと思うようになるのだろうか。
3人がどのような経緯で救い出されたのかは描かれていない。…が、救い出す「力」があったことだけがこの映画の救いだ。
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コメント
はじめまして。
映画最後の彼らのインタビューで、「これも一つの経験」と言っているのを見たときは正直ビックリしました。
凄く真の強い人達なのだと。
投稿: きまぐれ | 2007/02/01 23:57
きまぐれさんへ
本当にすごい精神力だと思います。
「これも一つの経験」として生きていくとして、この理不尽な取り扱いについて、憎しみは残らなかったのかな。トラウマになって一生苦しんだりしないのだろうかと心配になりました。
コメントとトラックバックありがとうございました。
投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2007/02/03 00:09