『サスペクト・ゼロ』"Suspect Zero"
★ベン・キングズレーの苦悩の演技がすばらしい。
そう。アメリカでは食品製造会社の協力で、牛乳パックに行方不明者の顔写真と情報が印刷されている。それほど、忽然といなくなる子どもが多いという事実がある。解決されないままの事件が積もっていく。
だから、いなくなった子供を表す数字の紙が埋め尽くしている地図が説得力を持つ。そして、証拠を残さず、手口に関連性がない「サスペクト・ゼロ」という連続殺人鬼の存在感が、わけのわからない恐怖と共にすぐそこにあるもののように感じられる。
ベン・キングズレーはすばらしい。彼の演技からその苦悩が十二分に伝わってくるので、オカルト的要素も疑うことなく、納得して、その苦悩を受け入れてしまった。
最後の場面を見て、それまで持ち続けていた疑問点がすべて解消されたが、スッキリする間もなく、さらに重い感覚に襲われた。殺人事件の重さと奇怪さ。それに、悪しき運命に引き込まれていくような感じは「セブン」に似ていた。その「セブン」の上に、超能力なのか狂気なのかという要素が加わったストーリーだ。B級になりそうな要素が多いのに、こちら側に留まっているのは、ベン・キングズレーの品格に寄るところが大きい。
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