『シンドラーのリスト』"Schindler's List"
★これだけの大作、さらには歴史的事実を前にして、「でも…」とは言いたくないのだが……。
それなのに、どうしても言わずにはいられなくなる。
見せ方がうますぎる。赤いレインコート。雪が美しく降っているのかと錯覚させる風景。それらが伏線となって導き出されていく事柄。
シンドラーは金儲け主義の野心家として描かれている。しかし緻密な計算はできず、おおらかでアバウトな人の良さはアメリカ人の典型に近い。いくら彼がナチスに属していたと言っても、いわゆる「典型的なドイツ人」の良さも悪さも持っていないように思う。もちろん、こういう「典型」としての見方が偏見につながることは知っているが、そういう見方の上に映画が作られていることは否定できないと思う。
そして、こういうシンドラーのような人物の正しい行動は、聖人が偉いことをする話より、受け入れやすい。画面のこちら側で眺めている観客の感覚に近く、普通で身近なものに思えるからだ。しかし、異様な社会状況の中でそういう意味での「普通」にしていることがいかに難しいかは、レイフ・ファインズが演じる将校を見るばかりでなく、列車に乗せられていくユダヤ人に罵声を浴びせかける一般民衆を見ただけでも容易に想像できる。
すごい映画だと思う。でも、敷かれたレールに導かれて、用意された考え方にそのまま連れて行かれることに、私の感覚は拒否反応を示してしまう。そこに何があるのか、まだよく分析しきれないままでいるのではあるが……。
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