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2007/01/31

『グアンタナモ、僕達が見た真実』"The Road to Guantanamo"

★初めて見たドキュメンタリー・タッチの映画

イギリスに住んでいた時、パキスタン出身の人とも接していたので、こういう普通の若者のことが想像できる。だから、彼らがパキスタン系イギリス人として平均的な生活をしていただろうことも想像できる。そして、ごく普通のイギリス人がするように好奇心と冒険心でアフガニスタンに足を伸ばしてみたくなったことも。

しかし、パキスタン、アフガニスタンと続く、その光景の中に彼らは溶け込んでしまうのだ、違和感なく。しかし、イギリス英語を話すところも、観光にはしゃぐところも、そして、劣悪な環境で体調を崩すところも、ひ弱さも含めて、全く、イギリスに育った人間そのものだ。

ところが、戦渦に巻き込まれ、危機を切り抜け、北部同盟に捕まり劣悪な捕虜収容所にと続くうちに、彼らの逞しさが感じられるようになってくる。3人の絆が彼らを強くしているのだ。こんな劣悪な衛生状態と環境。コンテナへの銃撃に至ってはありえないことと思ったが、どうにか生き延びる。

その後、彼らの思いとは裏腹に、リベラルなはずの米軍の手に移ってからは、肉体的な締め付けの上に精神的な締め付けも加わり、それ以上の極限状態へと追い込まれていく。しかし、3人はさらに精神的にも強くなる。「アッラーを信じるか?」という問いに、「そうありたいと思っている」と答えるアシフはすごいと思った。イギリスで生活している時はあまり宗教的な価値観を持たずに生活してきた若者であっただろうにと思う。

ストーリーは役者によって演じられているが、3人へのインタビューと、随所に挟まれる、ブッシュ大統領の演説や、報道機関が取った同じ場面の映像などが「こちら側」と「あちら側」との乖離を効果的に表現している。

グアンタナモでアメリカがやっていることは、成果が出ていないことから考えても的を外しているのだろう。アルグレイブ収容所の例もあるように、アメリカではなく、わざわざキューバのグアンタナモに作った施設の中でとんでもないことも横行しているのは真実だと思われる。

一方、昨年夏にイギリスの警察はイギリスに住むパキスタン人の若者を逮捕し、液体爆弾によるテロを未然に阻止している。疑心暗鬼を生むテロ行為が元凶であることは確かだ。しかし、この3人の若者はこの体験を経て、どういう方向に進みたいと思うようになるのだろうか。

3人がどのような経緯で救い出されたのかは描かれていない。…が、救い出す「力」があったことだけがこの映画の救いだ。

グアンタナモ、僕達が見た真実@映画生活

監督:マイケル・ウィンターボトム&マット・ホワイトクロス/(アシフ)アルファーン・ウスマーン/(ローヘル)ファルハド・ハールーン/(シャフィク)リズワーン・アフマド/ワカール・スィッディーキー」

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2007/01/28

『ペイチェック 消された記憶』"Payceck"

★どう展開するのか、全然読めず、ハラハラ、ドキドキ、最後まで楽しんだ。

茶封筒に入ったガラクタが、絶体絶命の危機から主人公を救うアイテムとなるのだから、おもしろい。

世界観、働く者の倫理感、恋愛観、いろいろ詰め込まれているようではあるのだが、それもガラクタアイテムと一緒になって、どこかに飛んでいってしまう。

DVDの特典映像で、監督のジョン・ウーが下手な英語でしゃべりまくる様子が実に楽しげでおもしろかった。あのノリで撮っているのがそのまま伝わってくるようだ。

登場人物は、ドクターも、超優秀な技術者も、悪役も、みーんな何にも考えていない軽薄な人間に見える。しかし、それがこの映画のテンポにぴったりで、一気に最後まで進み、気がついたら終わっていた。深く考えず、ケーハクに楽しむのがこの映画の正しい見方。

記憶モノ」コレクションがまた1つ増えた。

監督:ジョン・ウー/ベン・アフレック「チェンジング・レーン」「夏休みのレモネード」「恋は嵐のように」「アルマゲドン」「恋におちたシェイクスピア」「グッド・ウィル・ハンティング」/ユマ・サーマン「プロデューサーズ」「ガタカ

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2007/01/27

『オーメン』&『オーメン666』

★映像と子役が良いのは2006年版だが、1976年版も捨てがたい。

2006年版を見た。すごい映画だと思った。オカルトの走りという程度の認識で見た映画だったが、凄惨な場面は思ったより少なく、静かな場面に感じるなにものかの存在に凍り付いてしまうような映画だった。それで、続けて1976年版も見てしまった。

見終わってもわからなかったのは、悪魔の存在は真実なのか、狂気のなせる技なのか、という点。映画のセオリーに従って見ると、ギリギリで正解は「存在する」になる。しかし、現実の世界でこれを子細に見せられたとしても、それを信じることはできない。つまり、正解は「存在する」であるように見せつつも、「狂気」に収まる範囲で描かれているのだ。

この「自分は狂っているのかもしれない」という自問自答の部分を、2006年度版は言葉によって示している。1976年版はその問いかけがあまりない分、グレゴリー・ペックの年輪を感じさせる成熟した大人としての演技から感じられるようにできている。

「神の存在を信じるか」の裏返しのような問いかけをこの映画は扱っているように思えた。

両者のストーリーと場面の運びはほとんど変わらない。もちろん2006年版のほうが新しい分、映像がきれいだ。しかし、1976年版もすごい。特にマントヒヒの場面は迫力がある。これが実写なのだからすごい、というより、実写ならではの迫力なのだろう。また教会に近づく場面の引き込む力の強さも負けてはいない。

一方、ダミアンのかわいさと気味悪さがミックスした怖さは2006年版のほうが際立つ。たぶん子役の演技が重視され、それにつれて子役側も演技ができるようになってきたことと、メイクの技術の進歩によるものだろう。

両方見るほどのこともないが、両者とも捨てがたい。

1976年版 監督:リチャード・ドナー/グレゴリー・ペック「ローマの休日」/リー・レミック 2006年版 監督:ジョン・ムーア/リーヴ・シュレイバー/ジュリア・スタイルズ「モナリザ・スマイル」/ミア・ファロー「華麗なるギャツビー」

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2007/01/20

『サスペクト・ゼロ』"Suspect Zero"

★ベン・キングズレーの苦悩の演技がすばらしい。

そう。アメリカでは食品製造会社の協力で、牛乳パックに行方不明者の顔写真と情報が印刷されている。それほど、忽然といなくなる子どもが多いという事実がある。解決されないままの事件が積もっていく。

だから、いなくなった子供を表す数字の紙が埋め尽くしている地図が説得力を持つ。そして、証拠を残さず、手口に関連性がない「サスペクト・ゼロ」という連続殺人鬼の存在感が、わけのわからない恐怖と共にすぐそこにあるもののように感じられる。

ベン・キングズレーはすばらしい。彼の演技からその苦悩が十二分に伝わってくるので、オカルト的要素も疑うことなく、納得して、その苦悩を受け入れてしまった。

最後の場面を見て、それまで持ち続けていた疑問点がすべて解消されたが、スッキリする間もなく、さらに重い感覚に襲われた。殺人事件の重さと奇怪さ。それに、悪しき運命に引き込まれていくような感じは「セブン」に似ていた。その「セブン」の上に、超能力なのか狂気なのかという要素が加わったストーリーだ。B級になりそうな要素が多いのに、こちら側に留まっているのは、ベン・キングズレーの品格に寄るところが大きい。

2004年/監督:E・エリアス・マーヒッジ/アーロン・エッカート/ベン・キングスレー「砂と霧の家」「2999年異性への旅」「デーヴ」「シンドラーのリスト」「ガンジー」/キャリー=アン・モス「マトリックス」「ショコラ」「メメント」

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2007/01/19

『シンドラーのリスト』"Schindler's List"

★これだけの大作、さらには歴史的事実を前にして、「でも…」とは言いたくないのだが……。

それなのに、どうしても言わずにはいられなくなる。

見せ方がうますぎる。赤いレインコート。雪が美しく降っているのかと錯覚させる風景。それらが伏線となって導き出されていく事柄。

シンドラーは金儲け主義の野心家として描かれている。しかし緻密な計算はできず、おおらかでアバウトな人の良さはアメリカ人の典型に近い。いくら彼がナチスに属していたと言っても、いわゆる「典型的なドイツ人」の良さも悪さも持っていないように思う。もちろん、こういう「典型」としての見方が偏見につながることは知っているが、そういう見方の上に映画が作られていることは否定できないと思う。

そして、こういうシンドラーのような人物の正しい行動は、聖人が偉いことをする話より、受け入れやすい。画面のこちら側で眺めている観客の感覚に近く、普通で身近なものに思えるからだ。しかし、異様な社会状況の中でそういう意味での「普通」にしていることがいかに難しいかは、レイフ・ファインズが演じる将校を見るばかりでなく、列車に乗せられていくユダヤ人に罵声を浴びせかける一般民衆を見ただけでも容易に想像できる。

すごい映画だと思う。でも、敷かれたレールに導かれて、用意された考え方にそのまま連れて行かれることに、私の感覚は拒否反応を示してしまう。そこに何があるのか、まだよく分析しきれないままでいるのではあるが……。

1993年/監督:スティーブン・スピルバーグ/リーアム・ニーソン「愛についてのキンゼイ・レポート」「ラブ・アクチュアリー」「ギャング・オブ・ニューヨーク」「判決前夜」/ベン・キングズレー「サスペクト・ゼロ」「砂と霧の家」「2999年異性への旅」「デーヴ」「ガンジー」/レイフ・ファインズ「ナイロビの蜂」「オスカーとルシンダ」「イングリッシュ・ペイシェント

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2007/01/06

『遙かなる大地へ』"Far and Away"

★小さなヤマには見どころがあるのだけれど……。

5回完結、各30分のテレビドラマを見ているようだった。「アイルランド編・虐げられた小作人」「アイルランド編・出会い」「ボクサー編・新天地へ」「苦難の中で」「大地へと」といった感じ。

毎回、それなりの見どころがあって、それはそれで結構良い。しかし全体で1つの映画なのに、小さなヤマだけが何回もあるというのはちょっと物足りない。それをまとめるべき掘り下げたテーマが今ひとつ欠けていたのが残念だ。

しかし、上流階級の出でありながら型にはまりたくない女性というのはニコール・キッドマンにぴったりだし、この頃のトム・クルーズは、荒削りで新天地に放たれた若者という役どころにぴったりだ。そういう面から気楽に、新世界への夢を楽しみ、若き2人のラブストーリーを気楽に楽しむには良い映画だと思う。

1992年/監督:ロン・ハワード「ダ・ヴィンチ・コード」「ビューティフル・マインド」「エドTV」「アポロ13」「コクーン」/トム・クルーズ「コラテラル」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」「ラストサムライ」「マイノリティ・リポート」「バニラ・スカイ」「アイズ・ワイド・シャット」「マグノリア」「ア・フュー・グッドメン」「レインマン」/ニコール・キッドマン「奥さまは魔女」「ザ・インタープリター」「ステップフォード・ワイフ」「コールドマウンテン」「白いカラス」「ドッグヴィル」「めぐりあう時間たち」「アザーズ」「ムーラン・ルージュ」「アイズ・ワイド・シャット」「プラクティカル・マジック

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2007/01/04

『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』"Proof"

★好きです。こういう、ぱっとしないけれど、まともに考えることのできる、知性で生きる人。

狂ってしまった天才数学者をアンソニー・ホプキンスが演じているので、その天才という面が狂気と同じくらいにリアリティをもって感じられる。一方、その血を引いているかもしれないという不安から、自分の天才的な部分さえも肯定できないでいる彼の娘キャサリン(グウィネス・パルトロウ)。

その数学的大発見は彼女がなしたものか、父親が狂気の隙間で解いたのかというミステリーじみた展開がまずおもしろい。さらに、父の教え子ハルが彼女の真の理解者、そして恋人になれるのかなれないのかという展開に、"常識的"な姉の雑音が入りハラハラさせられる。

私が特に興味深いと思ったのは、知的な彼女にとって、"愛"は論理を超えた気持ちで示されないと安心できないものであるのに、それと同時にやはり論理的にも証明されないと安心できないという点。最後のベンチのシーンを見ながら、「ほらね」と心の中でクスッと笑ってしまった。

*数学者モノとしては他に、「博士の愛した数式」「ビューティフルマインド」「グッドウィル・ハンティング」がある。

2004年/監督:ジョン・マッデン「恋におちたシェイクスピア」/グウィネス・パルトロウ「愛しのローズマリー」「リプリー」「恋におちたシェイクスピア」「スライディング・ドア」「セブン」/アンソニー・ホプキンス「白いカラス」「9デイズ」「アトランティスのこころ」「ハンニバル」「ハーモニーベイの夜明け」「ジョー・ブラックをよろしく」「羊たちの沈黙」「日の名残り」/ジェイク・ギレンホーク「デイ・アフター・トゥマロー」「遠い空の向こうに」

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2007/01/03

『黄泉がえり』『天国の本屋~恋火~』

亡くなった同窓生を偲んで邦画を2つ借りた。
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『黄泉がえり』

死なれてしまった側の人間にとっては、こんなことがあればなあと思える映画かもしれない。ある時、なぜかわからない自然現象で突然、故人が、亡くなった時の年齢、姿で戻ってきてくれる。蘇ってほしいという思いが深い人にだけ蘇ってくるのだから、残された側は思い残したことを伝えることができる。

しかし、「去る者、日々に疎し」というのは真実だ。いくら懐かしい思いがあり、いてほしいと思っても、大抵の場合は、その状況を維持できなくなる……というところまでは書いていないが、なんとなくそのあたりが見えてきてしまう。上手に最後を締めくくってはいるのだが…。

(監督:塩田明彦/草薙剛/竹内結子)

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『天国の本屋~恋火~』

発想はおもしろい。人間には100年の命があって、死んでしまった人間は残りの年月を天国で過ごし、合計100年の年月を過ごすとまた地上に生まれる。

その天国の本屋へアルバイトとして連れてこられた青年ピアニストの話だったが、ピアノの曲も、演奏(もちろんプロの吹き替えだろうが)の腕も表現力も今ひとつだったのが残念だ。ストーリーに無理があったとしても、ピアノの音に『戦場のピアニスト』ほどの輝きがあれば、そんなもの取り込まれてしまっていたのにと思う。

(監督:篠原哲雄/竹内結子/玉山鉄二)
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その後、上記二作と同時に借りた『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』を観た。奇しくもこちらが、数学を専攻したその友人の記憶につながった。

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