『硫黄島からの手紙』
★アメリカ人がこういう映画を作ったことに驚きを感じた。
アメリカ人の作る、第二次世界大戦を描いた映画など、不愉快な描き方になるに違いないと思っていた。しかし、それは間違いだった。
まず、手紙という題材の使い方がすばらしい。一人一人の兵士が、家族への深い思いを手紙に綴る。そこには階級の差はない。暗い洞窟の中で鉛筆を持ち、書き続ける。この思いがテーマとなっている。
硫黄島が取られてしまえば、そこから本土に爆撃機が飛ぶことになる。それはとりもなおさず、自分の家族の頭の上に爆弾が落とされることを意味している。その硫黄島を1日でも長く守らなくてはならない。そういう思いからの戦いだった。そういうとらえ方をし、こういう角度から、アメリカ人がこの映画を作ったことに驚きを感じた。
渡辺謙の演技はすばらしい。穏やかでリベラルな行動。その彼の「万歳」は、上体を起こし、胸を張って手を天に伸ばす普通の万歳ではなかった。天皇に敬意を表して前屈みになっての万歳。この姿には、天皇への敬意だけでなく、死を賭しても守らなくてはならないものがある執念が感じられる。こんな万歳は見たことがない。鬼気迫るものだった。
感動した。しかし、感動し、硫黄島のことをこういう形で知ることができたことを良かったと思う反面、やはりという思いも残る。この映画で「良い」とされた人間は2人とも西欧の文化に触れている人間だった。現代を生きる日本人である自分の中にもまた、この「西洋の文明」という方向から照らされる見方が一番すんなりと理解できるものであることを感じる。そこに複雑な思いが残った。
・硫黄島からの手紙@映画生活
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