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2006/12/23

『スティング』"The Sting"

★ラグ・タイムのリズムにのって、ギャングの世界が軽妙に展開していく。

一旦、軽快なあのピアノのメロディーにのせられると、洒落た展開にぐいぐいと引き込まれていく。こうなるだろうなあと思って見ていると、あれっという小さな肩すかしを何度もくわされ、最後はドーンと……。

現代と善悪の基準が少し違うので、出だしは少し引いてしまったが、それはほんの最初だけ。

あちこちに仕掛けられた伏線に、ハラハラドキドキし、一時代前の正統派美男の詐欺師コンビに見とれる。スパイスの効いた小気味良い小品だ。

1973年/監督:ジョージ・ロイ・ヒル/ポール・ニューマン「明日に向かって撃て」「タワーリング・インフェルノ」「ロード・トゥ・パーディション」/ロバート・レッドフォード「明日に向かって撃て」「二重誘拐」

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2006/12/20

『真実の行方』"Primal Fear"

★エドワード・ノートンの、狂気と神経質さが入り交じった演技がすばらしい。

以下、ネタバレしますので、未見の方は読まないほうが良いかもしれません。

* * * * *

10年前であっても、このネタはすでに本も出版され、話題となっていた。

ビリー・ミリガンから始まり、こういう事実を心理学の面から扱った話も複数、知っているので、この筋自体はあまり衝撃ではなかった。普通は、監督の意のままに操られ、いつもどんでん返しにあっと言わされる素直な観客なのだが、今回は、その嘘も見抜けてしまった。むしろ、「この第3の人格が話していることも真実で、前の人格を統合するとすればこの人格が鍵になるのではないか」などという展開もありだと思えてしまったので、見終わってからも不満が残った。それに、他の伏線も、「あれはどうなったの?」という感じで、放り出されたまま。

しかし、悪徳弁護士のように見えるマーティンが酔っぱらって語った、性善説を信じているから被告人を救いたいというところに本音があると考えると、彼のほうの苦悩のストーリーは興味深い。

大司教がああいう人物であったのが真実なら、やはり、アーロンは被害者だ。このあたりや、元恋人であるジャネットとの絡みにも何かがあるはずだ。じっくり考えたい内容があったのに、エドワード・ノートンの演技に度肝を抜かれ、目を奪われてしまって、頭が働かなかったのが残念だったというのは、皮肉なことだ。

1996年/監督:グレゴリー・ホプリット/リチャード・ギア「シカゴ」「オータム・イン・ニューヨーク」/ローラ・リニー「愛についてのキンゼイ・レポート」「ライフ・オブ・デイビッド・ゲイル」「ラブ・アクチュアリー」「トゥルーマン・ショー」/エドワード・ノートン

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2006/12/15

『硫黄島からの手紙』

★アメリカ人がこういう映画を作ったことに驚きを感じた。

アメリカ人の作る、第二次世界大戦を描いた映画など、不愉快な描き方になるに違いないと思っていた。しかし、それは間違いだった。

まず、手紙という題材の使い方がすばらしい。一人一人の兵士が、家族への深い思いを手紙に綴る。そこには階級の差はない。暗い洞窟の中で鉛筆を持ち、書き続ける。この思いがテーマとなっている。

硫黄島が取られてしまえば、そこから本土に爆撃機が飛ぶことになる。それはとりもなおさず、自分の家族の頭の上に爆弾が落とされることを意味している。その硫黄島を1日でも長く守らなくてはならない。そういう思いからの戦いだった。そういうとらえ方をし、こういう角度から、アメリカ人がこの映画を作ったことに驚きを感じた。

渡辺謙の演技はすばらしい。穏やかでリベラルな行動。その彼の「万歳」は、上体を起こし、胸を張って手を天に伸ばす普通の万歳ではなかった。天皇に敬意を表して前屈みになっての万歳。この姿には、天皇への敬意だけでなく、死を賭しても守らなくてはならないものがある執念が感じられる。こんな万歳は見たことがない。鬼気迫るものだった。

感動した。しかし、感動し、硫黄島のことをこういう形で知ることができたことを良かったと思う反面、やはりという思いも残る。この映画で「良い」とされた人間は2人とも西欧の文化に触れている人間だった。現代を生きる日本人である自分の中にもまた、この「西洋の文明」という方向から照らされる見方が一番すんなりと理解できるものであることを感じる。そこに複雑な思いが残った。

2006年/監督:クリント・イーストウッド/渡辺謙「SAYURI」「ラスト サムライ」/二宮和也/伊原剛志/加瀬亮/中村獅童
硫黄島からの手紙@映画生活

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2006/12/14

『ノエル』"Noel"

★心が温かくなるクリスマス映画。

お正月とクリスマスが一緒に来たような祝い方のアメリカのクリスマス。家族が集まり、友達が集まり、みんなが集まり、騒ぎ、みんなが楽しく、心温まらなくてはならない。そんな強迫観念の下、そこから外れてクリスマスを過ごすのはなかなか辛いこと。(『クリスマス・キャロル』のスクルージが自分らしく生きられなかったことが、ふと気の毒に感じられる。

そんな視点から、さまざまなクリスマス模様を描いている。

年を取っても、内面の美しさがにじみ出てくるような人を演じられるスーザン・サランドンが素敵だ。そして、年齢的にもすべてが美しいペネロペ・クルスの姿にはため息。

*他にもこんなクリスマス映画があります。→こちらをクリック

2004年/監督:チャズ・パルミンテリ/スーザン・サランドン「ムーンライト・マイル」「17歳の処方箋」「グッドナイト・ムーン」「ジャイアント・ピーチ」「デッドマン・ウォーキング」「若草物語」「イーストウィックの魔女たち」/ポール・ウォーカー/ペネロペ・クルス「ゴシカ」「バニラ・スカイ」/ロビン・ウィリアムス「A.I.」「パッチ・アダムス」「奇蹟の輝き」「フラバー」「グッドウィル・ハンティング」「ジュマンジ」「ミセス・ダウト」「レナードの朝

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2006/12/03

『ALWAYS 三丁目の夕日』

★懐かしさはどこから来るものなのか。

私は東京タワーが輝かしいものだった時代を知っている。また、映画の随所に出てくる小道具には懐かしさを覚える。でも、ここに広がる世界は私が知っている世界と少し違うような気もする。それなのに懐かしい。なぜ懐かしさを感じるのだろう。

茶の間の続きにある駄菓子屋。「本職」の片手間に店番をする店主。町工場は、家の中と工場が続き、家庭と職場と外の通りとが緩くつながっている。家の構造と社会の構造が、家族と知人と他人の距離を近くし、心の距離も近くなる仕組みを作り出している。私の家は、お店でも町工場でもなかった。ところが、子どもの時代を振り返ってみると、世界の狭さと人間の近さは、このジオラマのような「三丁目」の世界に近かったような気がする。

観客はそんな人の距離に郷愁を感じるのかもしれない。もしかすると、この時代を過ごした人が感じる懐かしさと、全く知らない世代が感じる懐かしさは、「あの時代」にあるのではなく、それぞれの「子どもとして過ごした時」の中にあるのかもしれない。

2005年/監督:山崎貴/吉岡秀隆「博士の愛した数式」「阿弥陀堂だより」「北の国から」/堤真一/小雪「ラストサムライ」/堀北真希/もたいまさこ/三浦友和/薬師丸博子」

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