『ALWAYS 三丁目の夕日』
★懐かしさはどこから来るものなのか。
私は東京タワーが輝かしいものだった時代を知っている。また、映画の随所に出てくる小道具には懐かしさを覚える。でも、ここに広がる世界は私が知っている世界と少し違うような気もする。それなのに懐かしい。なぜ懐かしさを感じるのだろう。
茶の間の続きにある駄菓子屋。「本職」の片手間に店番をする店主。町工場は、家の中と工場が続き、家庭と職場と外の通りとが緩くつながっている。家の構造と社会の構造が、家族と知人と他人の距離を近くし、心の距離も近くなる仕組みを作り出している。私の家は、お店でも町工場でもなかった。ところが、子どもの時代を振り返ってみると、世界の狭さと人間の近さは、このジオラマのような「三丁目」の世界に近かったような気がする。
観客はそんな人の距離に郷愁を感じるのかもしれない。もしかすると、この時代を過ごした人が感じる懐かしさと、全く知らない世代が感じる懐かしさは、「あの時代」にあるのではなく、それぞれの「子どもとして過ごした時」の中にあるのかもしれない。
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