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2006/11/27

『ニュースの天才』"Shattered Glass"

★騙された側の「善意と良心」に気持ちを合わせて鑑賞すると、感慨深いものがある。

アメリカ人に残されている数少ない美点(←偏見あり)のひとつに、若い才能に惜しみなく力を注ぎ、助け、それに喜びを感じるというものがある。それが完全に逆手に取られてしまった事件……という描き方がされている。そして、私はそこに納得した。

たぶん、彼が若くもなく、才能を持った人間でもなかったのなら、「嘘かも」という小さな思いを抱いた誰かがチェックを入れていたことだろう。そもそも、若い才能の芽を伸ばすことに熱心でない社会(日本のようなとは言いたくないが…)であったのなら、若い彼が伝統ある雑誌に名前入りで記事を載せ続けることができたかどうかさえ疑問だ。

この事件のように、「アメリカの善意と良心」が踏みにじられ、少しずつすり減っていくのかと思うと、全然好きではないアメリカなのに、悲しい。

スティーブンが母校の生徒を前にジャーナリズムの仕事について語る場面のストーリーと、事件発覚前後のストーリーとを平行して見せていく手法が、無駄な説明なしに、ジャーナリズムの仕組みを語り、彼の心の隙間を垣間見せることに、成功している。

これは記事をねつ造したスティーブンの映画ではなく、騙された側の善意を、苦い思いで描き出した映画なのだと思う。

2003年/監督:ビリー・レイ/ヘイデン・クリステンセン「海辺の家」/ピーター・サースガード「フライトプラン」「愛についてのキンゼイ・レポート」/クロエ・セヴィーニー
ニュースの天才@映画生活

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