『ジェイコブス・ラダー』"Jacob's Ladder"
☆正常さと隣り合わせに存在するように感じられる悪夢に、すっかり滅入ってしまった。
この映画を高く評価する人達は、ものすごく健康で、健全なのだと思う。私は見ていてこの悪夢に飲み込まれてしまいそうな精神的不安を感じた。そうやって「ラダー」を登っていくのだという主張はわかる。でも、信じたくない。
ベトナムでの殺戮の記憶を軸に、夢と現実の狭間をさまよう主人公。気味悪い映像もたくさんあったが、一番恐怖を感じたのは、「家に帰りたいのに帰れない」という強迫観念。こんな不安定な状態がずっと続くなんて拷問に近い。ごく普通のホラーなんかよりずっと恐かった。非現実的な話なのに、脳内にこういう「混乱」が起きるかもしれないと想像することは容易だ。何かひとつずれるだけで、こういう感覚に襲われるであろうことも想像できる。精神的に弱っている時など絶対に見たくないタイプの映画だった。
最後に種明かしがされる。それは、見ている間、徐々にわかってくる事実であり、伏線がそこでひとつとなる納得できるものであった。しかし、それは私にとっては救いというにはあまりにも小さいもの。これが真実だなんて思いたくない。
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