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2006/05/06

『シャイニング』"The Shining"


怖い。しかし、その怖さは化け物に襲われるとか、殴られるとかいったものではなくて、何か正体不明の怖いものが漂っているという怖さであり、音楽、インテリア、色彩、構図、おもちゃの車が走る音、といったものが醸し出す心理的な怖さだ。私が一番恐怖を感じたのは、改行され様々に段落分けされているあの原稿用紙だった。狂気の描き出し方にこんな方法があったとは。

今まで見てきた映画で「怖い」と思った数々の場面と重なる部分が多い。冒頭は『シークレット・ウィンドウ』と似ている。しかし、『シャイニング』のほうが、わけのわからない何かに引き寄せられるように車が走り、どこかに呼び込まれていくという雰囲気があり、さらに怖さを倍増させる。青と赤のインテリアと服装とをシンクロさせた色遣いは『クルーエル・インテンションズ』でもうまく用いられていたが、『シャイニング』ですでに使われていたのだ。

他の映画のネタバレは避けたいので書かないが、あれもこれもこの映画から…という気がしてならない。それほど斬新なものをこの映画は持っている。すばらしい映像と音楽の組み合わせだと思った。

ところが、一緒にこの映画を見た家族はすでに原作を読んでいて、違う!と言っていた。ホテル自体の持つ怖さ、それにスティーブン・キング特有の温かさ、大事なこの2つの要素がこの映画では薄まってしまっているというのだ。映画としての作りが良くても、原作を読んだ人には満足できないものなのだろうか。この映画に満足できずにキングが自分で作ったというTVシリーズのほうを見てみたいと思った。

*その後、スティーブン・キング版も見て感想を書きました。こちら→キング版『シャイニング』

1980年/監督:スタンリー・キューブリック「アイズ・ワイド・シャット」「バリー・リンドン」「2001年宇宙の旅」/原作:スティーヴン・キング「シークレット・ウィンドウ」「アトランティスのこころ」「グリーンマイル」「スティーヴン・キングのシャイニング」「ショーシャンクの空に」「イット」「やつらはとこどき帰ってくる」「スタンド・バイ・ミー」「キャリー」「ミザリー」/ジャック・ニコルソン「アバウト・シュミット」「恋愛小説家」「ア・フュー・グッドメン」「イーストウィックの魔女たち」「カッコーの巣の上で」/シェリー・デュヴァル/ダニー・ロイド

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コメント

原作者のキングはキューブリック版を観て
激怒したという話が伝わっているくらいですからね。
TV版のほうが心温まるのは確かです。
しかし、恐怖をかきたてる様々な描写という点では、
キューブリックの凄さを思い知らされる作品だと思います。
『時計じかけのオレンジ』、未見でしたら是非!
とくに女性は不快に思うかもしれませんが、
セックス&バイオレンスに満ちているものの、
キッチュなところやアイロニカルなところが面白くて
ついつい何度も観てしまう作品なのです。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2006/05/07 03:17

 多感な奴さんのページにあるキューブリック版とキング版の文章を読ませていただき、ますますキング版を見たいと思っています。しかし、映像として描写するキューブリックの才能にはすごいものがありますね。そういう意味では勝てるはずはないだろうなと思ってはいます。
 『時計じかけのオレンジ』は『コックと泥棒、その妻と愛人』と同様、何度も手にとっては、ため息を付いて棚に戻している映画です。キューブのさいころステーキで震え上がったような視覚的恐怖に弱い私でも、見られるかなあ。相当覚悟しないといけないのでしょうね。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/05/07 14:48

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