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2006/05/23

『日の名残り』"The Remains of The Day"


重層的な意味を持った深い作品。たぶん、小説はさらに重い意味を持つのだろうが、映画としてもすばらしい味わい深さが出ていた。

アンソニー・ホプキンスが演じる、執事スティーヴン。英国的品格を重んじ、厳格な執事として生きる。そして、その完璧さゆえに、ミス・ケントン(エマ・トンプソン)の彼への気持ちに気づかないだけでなく、自分自身の気持ちにも気づくことができない。

同様に、彼がすばらしい人格の持ち主と敬愛し執事として仕えたダーリントン卿も、別の意味で理想主義ゆえの間違った人生を歩む。ヒトラーが台頭してくる時代だ。ダーリントン卿は品格があり理想主義であったのに、その"理想主義"そのものによって、どこかで歴史を読み間違え、本来あるべき理想を見失う。

2人はだぶって見える。取り返しのつかない日々を、人生の日の名残りの時間に振り返る旅。

アンソニー・ホプキンスの押さえた演技に加えて、エマ・トンプソンの、背筋を伸ばした毅然とした演技が可愛らしさを漂わせている。2人の演技は本当にすばらしい。そして、歴史的な間違いを、身近なものに引き寄せて考えさせられる、上質な映画だと思った。

1993年/監督:ジェームズ・アイヴォリー/原作:カズオ・イシグロ/アンソニー・ホプキンス「白いカラス」「9デイズ」「ハンニバル」「アトランティスのこころ」「ハーモニーベイの夜明け」「羊たちの沈黙」/エマ・トンプソン「ラブ・アクチュアリー」「ウィンター・ゲスト」/ジェームズ・フォックス「チャーリーとチョコレート工場」/クリストファー・リーヴ「裏窓」「スーパーマン」/ピーター・ヴォーン/ヒュー・グラント「ウェールズの山」「ブリジット・ジョンズの日記」「ノッティングヒルの恋人」「恋するための3つのルール」「ラブ・アクチュアリー
日の名残り@映画生活

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