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2006/05/09

『レント』"RENT"


ロンドンとニューヨークで合計3回見て、CDも繰り返し聞いている"RENT"が映画になった。舞台と比べてがっかりしたくなかったので、見に行くかどうかかなり迷ったが、見に行った。行って良かった。

冒頭、出演者が一列に並んで"Seasons of Love"を歌う。引き込まれた。歌唱力もすばらしい。当然だ。あとで知ったのだが、映画俳優ではなくほとんどがオリジナルからのメンバーだったのだから。

そして最初の聞かせどころ、ロジャーの歌う"One Song Glory"。舞台は古いビルの屋上。遠くには新しいビルが見える。ニューヨークのあのあたりの雰囲気が蘇る。舞台だとここで「今日のロジャーはいける」あるいは「はずれだ」と思い、がっかりしたり喜んだりするのだが、やはり映画だと、歌だけでなくまわりの映像も力となる。

"RENT"は見る度に、違った印象を持つ。それは、主要な登場人物8人がそれぞれ全く違った個性の持ち主であり、どの役にも目立つチャンスがあるからだ。しかも、誰もが重要な位置を占めている。しかし、たとえば、マークがあまり目立つとロージャーとの友情が今ひとつ感じられなくなってしまう。モーリーンにカリスマ性がないと女性2人の愛情が嘘っぽく感じられてしまう。

今まで私が見たジョアンヌ役は、なぜか皆もう少しで聖歌隊のおばさんになりそうな雰囲気の迫力ある歌い手ばかりだったのだが、今回は、優秀で切れ者なのにかわいらしいという雰囲気の役作りで、実に魅力的だった。このジョアンヌがモーリーンに振り回されているのかと思うと、"Tango:Maureen"という歌が一層生き生きと感じられる。

エンジェルだけはいくら目立っても良い。逆に目立たないと全体が台無しだ。きれいで、純粋で、突き抜けるように本音で生きていて、最後は透き通るようでなくてはならない。だからこそ、それを受けるほうのコリンズ役は難しい。映画のコリンズは今まで見たコリンズの中で一番良かった。歌ももちろんだが、アップになって映る優しい表情が良かった。舞台では、表情で演技することが難しいから、映画だからこそできることなのかもしれないが、このコリンズなら、エンジェルとお似合いだと思えた。

舞台装置で抽象的に表されていた風景が、映画になるとしっかり見える。その映像は、だいたいにおいて良い方向に生きていた。特に、地下鉄のシーンなどは、上手に入れたなあと思う。しかし、後半のエンジェルのシーンは、白い布を使った舞台のあの方法のほうがずっと心に迫るものがある。難しいところだ。

映画は、舞台のストーリーをかなり忠実に追っている。ただ、私には勝手な思い込みがある。舞台の"RENT"のクライマックスは、実はストーリーの最後ではなく、幕が下りたあと皆が揃って挨拶する場面、その中でも、特にエンジェルが真ん中から登場し、観客の拍手と歓声に包まれるところではないかと思っている。映画ではそれができない。…ということで、映画はとても良かったのだけれど、『オペラ座の怪人』と同じで、やっぱりまた、舞台の"RENT"を見に行きたくなってしまった。

2006年/監督:クリス・コロンバス/ロザリオ・ドーソン/テイ・ディブス/ジェシー・Lマーティン/イディナ・メンゼル/アダム・パスカル/アンソニー・ラップ/ウィルソン・レディア/トレーシー・トムズ
レント@映画生活

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コメント

この記事の一段落目を拝読していてもたってもいられなくなり、早速今日観に行ってしまいました!(水曜日ですし)
ちんとんさんのおっしゃっる通り、冒頭の"Seasons of Love"は素晴らしいです。この曲だけで私のツボ押し完了!
キャストも魅力的だし、歌も素晴らしいです。ただ、わざわざ映画にする必要はなかったのでは…と思われるフシも。私は舞台は観ていないので、いつか必ず観るぞ、と心に決めました。
記事を書いたらリンク&TBさせていただきますね。

投稿: バウム | 2006/05/10 22:03

 バウムさん、コメントありがとうございます。バウムさんの記事、楽しみにしています。「フシ」がどこかも楽しみにしています。
 "RENT"の舞台は特別いいですよ。見に来る人たちにリピーターが多く、ノリがいいんです。モーリーンが「ムーーー」と言うと、客席から「ムーーー」コールが起き、映画の中の観客よりノリの良い観客が出現するんです。だからこそ、エンジェルのカーテンコールがクライマックスだと感じられてしまうんですよね。
 ただ、舞台では8人とも良いキャストがそろうということは
なかなかないので、いつもどこかでがっかりさせられます。そういう意味では、この映画はがっかりするところがなくて良かった。それに、新しいタイプの弁護士ジョアンヌと正統派の魅力たっぷりの元哲学教授コリンズに出会えただけで、この映画には満足してしまいました。このところ、毎日"RENT"を聞いています。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/05/10 23:00

わ。TBいっぱい…これじゃ、ひつこい人みたい(涙)大変失礼しました。このところココログが調子悪いですね。お手数ですが、削除をお願いいたします!(このコメントも削除くださってけっこうです)

投稿: バウム | 2006/05/11 01:46

バウムさんTBありがとうございます。重複TB削除しておきました。このところココログ調子悪いですよね。はやく落ち着いてもらいたいものです。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/05/12 00:21

初めてコメント書かせてもらいます。
ワタシはブロードウェイで観たRENTに心を打たれて、今までにNYで10回くらい観ています。
去年の秋に映画のRENTが公開されて、あちらに映画も観に行き、GWの日本公開をドキドキしながら待っていました。
映画は映画で、もちろん舞台は舞台でとても素晴らしいですし、おっしゃるとおり、観るたびに違った印象を持ったり、ホント何度観ても魅せられてしまう舞台、それがRENTです!
日本で観た映画のRENTは翻訳に興味があって(私は英語がつたないので確認の意味もあって)、字幕ばかり追ってました。
日本語にすると、なんだかな~と思われるところもあったけど、ありったけの涙を流しての鑑賞になりました。
今年は舞台の日本公演もありますので、それも楽しみです。
たまにブログ、また覗かせてもらいますね。

投稿: tamaki | 2006/05/12 01:43

tamakiさん、初めまして。コメントありがとうございます。

"RENT"って、客席にいると、リピーターが多いことが感じられますよね。でも、日本から10回も行くリピーターというのはそんなにはいないでしょうね。

他にもいろいろご覧になっていらっしゃるんでしょうか。どんなものがお好きでしたか。私は、もう上演されなくなってしまったらしい『マルタン・ゲール』というのが好きでした。見た人もあんまりいないのかもしれませんが…。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/05/12 20:14

TBの処理、ありがとうございました。エンジェルのカーテンコールがクライマックスだとおっしゃる理由、わかります。映画版で私が感じたもどかしさの理由も、きっとそこにあるんだと思います。きっと一度舞台を観たら、私もリピーターになるだろうなあ。私も「ムー」って言いたいです。ミュージカルがお好きなちんとんさんの記事を拝見してから観に行って、本当によかった!ありがとうございました。
tamakiさんが書かれておられるように日本公演があるとか。NYまで観に行けない私は、こちらに興味シンシン。来日キャストはどうなんでしょう?なんて、またちんとんさん頼みのバウムでした。

投稿: バウム | 2006/05/12 20:25

日本公演のキャストがどうなるのか、発表されていないのか、公式サイトには出ていませんね。
一度"私はあの公演の誰"と思ってしまうと、なかなか他のキャストでは満足できなくなってしまうんです。私はもう、自分が最高だと思うエンジェルに出会ってしまったので、やっかいです。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/05/13 09:02

私の友人は、私なんかよりもっとRENTにはまってる人が多いので、ちょっと聞いてみたところ、
来日のキャストは良くないのが来るのだとか。。。
でも、一応E+(イープラス)とぴあでプレリザーブをしておきました。
日本からのリピーター、すごく多いんですよ!
東急Bunkamuraの映画公開日初日も、NYであったことのある人が居たくらいです(笑)
GW前に、RENTの10周年の公演がネダーランダーシアター(NYの)であったんですけど、友人達はそのためにNYに行ってました。私は今年はNYに1月3月と行っているので、行けませんでした。。。
マルタン・ゲールはロンドンで観られたのでしょうか?ブロードウェイでは公演できたのでしたっけ???
じつは私は海外はNYでしかミュージカルを観たことがないので、わからないんです。キリスト教徒の話らしいですね。
ここ数年NYでやってるのは、そこそこ観ていますよ。
クラシカルなものから、子供向けのもの、その他なんでも選り好みせず観ています。
AIDAやミスサイゴンが好きでしたが、どっちもクローズしました。。。
心を打たれたのはRENTです。
とりこになったのはWICKEDです。
あと、コメディー系も好きです。
NYに滞在している間に、5回以上は舞台を観ています。(オフも、オペラも含めて)

バウムさんもよかったら、日本公演観てみてください。
ただ、日本での公演は、箱が大きいので、あちらとは観客と舞台が一体化しにくいような気がします。
NYでは私の場合、RENTはよくRUSHチケット(抽選で当たると20ドルで観れるんです)で観るので、最前列か2列目での鑑賞が多いんです。
だから、役者との距離がすごく近いんですよ。
なので、ノリノリで観れるかどうかちょっと心配です。
でも、また日本に来てくれることがうれしいので、きっと興奮すると思います♪

投稿: tamaki | 2006/05/16 00:26

tamakiさん、こんにちは。

やっぱり来日キャストはイマイチですか。昨年の夏行った時のブロードウェイでさえ、そろそろ勢いが落ちてきたのかなという気がしていたので、しかたがないのでしょうね。でも、そういう中にも掘り出しモノみたいな才能があるところがブロードウェイの深さだから、それなりの期待はしたいような気もします。それにしても、かなりハードな公演スケジュールですよね。いつ行けば良いものが見られるのかなあ。

『マルタン・ゲール』はロンドンで見ました。カトリックと新興のプロテスタントの亀裂がある小さな村での話で、財産相続のために無理矢理結婚させられた2人の話です。結局、未熟な夫が戦争に行き、なぜか、戦死を伝えにやってきた夫の友達が夫に間違われ…というコメディみたいな話なんですが、まじめなストーリーです。ストーリーが好きだったというわけではないのですが…。

『AIDA』は見たかったのに、時期が合わず見られませんでした。『WICKED』、良かったですね。レビューを書いているので、よかったら見てください。上のタイトルの「ちんとんのホームビデオシアター」の下に「ミュージカル作品ABC順 こちらをクリック」というところから探すことができます。

私は今年の夏はイギリスに行きたいと思っているのですが、行けるかなあ。ポンドがずいぶん高くなっているので、一時よりずっと割高な感じがしますよね。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/05/16 18:56

ちんとんさん、tamakiさん、来日公演の情報、ありがとうございます。お二人のような筋金入りのファンの方の情報が頼りです。
うーん、来日キャストは…ですかあ。でもお二人とも「観ちゃダメ」とはおっしゃっていない…よーし、私もプレリザーヴに挑戦してみます。以前「キャバレー」の来日公演をS席で観たらとてつもなく素晴らしかったので、今回も奮発してみようかと。S席狙いはさすがにもったいないでしょうか?

投稿: バウム | 2006/05/18 02:14

バウムさん、こんばんは。

難しいところですね。
S席で行くか、行かないかの選択だなんて思っていたりもするのですが…。
そうそう、1度、舞台に向かって右手の前のほうの席に座った時、モーリーンがお尻をパッのところが見えて、ドキッとしたことがありました。まあ、それは別として、あんまり後ろだと感動が届かないですよね、特に大きい劇場だと。私は日本でミュージカルを見たことがないのでよくわからないのですが。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/05/20 22:30

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