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2006/05/28

『CUBE ZERO』


ハイテクかと思ったら、妙にローテクなところのある世界。そして、そのアンバランスであることにあまり意味が見出せない。蘇った兵士の弱点もあれではねぇ(苦笑)。「2」と違って、最初の『CUBE』の雰囲気は残している。確かに「ゼロ」というだけあって、「1」に続くものではあった。

しかし、解き明かしたところで何の意外性も見出せないところは説明しているのに、本当に知りたかったところはわからないまま。不満が残るどころか、そういう「CUBE」じゃなかったら良かったのにと思ってしまう。外側の世界も「やっぱりそうなのか」とは思ったものの、それを見せられてしまうと、急に「CUBE」の不条理な世界の広がりが断ち切られ、理解可能な狭い世界に押し込められてしまったようでがっかりする。

では、どういう世界だったら納得できたのかと考えてみたが、どういう世界であっても説明の付くものではやはり納得できない。むしろ、外に出た途端に、さらに光に満ちた不条理な世界が広がっていて、「これはなんなんだ!」となっていたら納得できたのではないかと思う。

*『CUBE』、『CUBE』と『CUBE2』の記事もあります。

2004年/監督:アーニー・バーバラッシュ

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2006/05/26

『月の輝く夜に』"Moomstruck"


なかなか自分の殻を破ることができない大人の男性や女性が観るのにぴったりの、おとぎ話のような雰囲気の恋愛映画。

イタリア系の大家族が、狭い社会の中、日本の下町を思わせるような距離感で、温かく見守ったり、ときには近すぎる気まずさを感じながらも思いやりを持って生活していく様子が心を温かくする。

シェールって本当に素敵。ニコラス・ケイジも雰囲気はそう変わらないけれど、若くてびっくりした。こんな時代から出ていたんだ。

1988年/監督:ノーマン・ジェイソン/シェール「イーストウィックの魔女たち」「ニコラス・ケイジ「シティ・オブ・エンジェル」「スネーク・アイズ」「ザ・ロック」

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2006/05/23

『日の名残り』"The Remains of The Day"


重層的な意味を持った深い作品。たぶん、小説はさらに重い意味を持つのだろうが、映画としてもすばらしい味わい深さが出ていた。

アンソニー・ホプキンスが演じる、執事スティーヴン。英国的品格を重んじ、厳格な執事として生きる。そして、その完璧さゆえに、ミス・ケントン(エマ・トンプソン)の彼への気持ちに気づかないだけでなく、自分自身の気持ちにも気づくことができない。

同様に、彼がすばらしい人格の持ち主と敬愛し執事として仕えたダーリントン卿も、別の意味で理想主義ゆえの間違った人生を歩む。ヒトラーが台頭してくる時代だ。ダーリントン卿は品格があり理想主義であったのに、その"理想主義"そのものによって、どこかで歴史を読み間違え、本来あるべき理想を見失う。

2人はだぶって見える。取り返しのつかない日々を、人生の日の名残りの時間に振り返る旅。

アンソニー・ホプキンスの押さえた演技に加えて、エマ・トンプソンの、背筋を伸ばした毅然とした演技が可愛らしさを漂わせている。2人の演技は本当にすばらしい。そして、歴史的な間違いを、身近なものに引き寄せて考えさせられる、上質な映画だと思った。

1993年/監督:ジェームズ・アイヴォリー/原作:カズオ・イシグロ/アンソニー・ホプキンス「白いカラス」「9デイズ」「ハンニバル」「アトランティスのこころ」「ハーモニーベイの夜明け」「羊たちの沈黙」/エマ・トンプソン「ラブ・アクチュアリー」「ウィンター・ゲスト」/ジェームズ・フォックス「チャーリーとチョコレート工場」/クリストファー・リーヴ「裏窓」「スーパーマン」/ピーター・ヴォーン/ヒュー・グラント「ウェールズの山」「ブリジット・ジョンズの日記」「ノッティングヒルの恋人」「恋するための3つのルール」「ラブ・アクチュアリー
日の名残り@映画生活

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2006/05/17

『ガンジー』"Gandhi"


ガンジーの「無抵抗(非暴力)主義」ということばは知っていた。また、あの大虐殺の話と大行進のシーンは何かで見たことがあった。しかし、「非暴力」のあとにくる「非服従」の本当のすごさはわかっていなかった。単なる熱意を示すキャンペーンの大行進ではなく、生活に根ざし、経済格差を生み出す世界の構造を示唆する行動であったことは、この映画を観て初めてはっきりと見えた。

英国の支配構造と経済の仕組み、パキスタン独立、マスコミの力、各宗教が心をひとつにしようとする様子、彼のまわりにいた多様な人々、史実に基づいた盛りだくさんな内容なのに、ひとつひとつの重さがしっかり感じられるように描かれている。

風景と人々の様子がラヴィ・シャンカールのシタールとタブラの音と一緒になってインドの奥深さと壮大さとパワーを感じさせる。3時間の大作があっという間に感じられた。

1983年/監督:リチャード・アッテンボロー「遠い夜明け」「エリザベス(出演)」「34丁目の奇跡(出演)」「ジェラシック・パーク(出演)」/ベン・キングズレー「デーヴ」「A.I.」「砂と霧の家」/キャンディス・バーゲン

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2006/05/09

『レント』"RENT"


ロンドンとニューヨークで合計3回見て、CDも繰り返し聞いている"RENT"が映画になった。舞台と比べてがっかりしたくなかったので、見に行くかどうかかなり迷ったが、見に行った。行って良かった。

冒頭、出演者が一列に並んで"Seasons of Love"を歌う。引き込まれた。歌唱力もすばらしい。当然だ。あとで知ったのだが、映画俳優ではなくほとんどがオリジナルからのメンバーだったのだから。

そして最初の聞かせどころ、ロジャーの歌う"One Song Glory"。舞台は古いビルの屋上。遠くには新しいビルが見える。ニューヨークのあのあたりの雰囲気が蘇る。舞台だとここで「今日のロジャーはいける」あるいは「はずれだ」と思い、がっかりしたり喜んだりするのだが、やはり映画だと、歌だけでなくまわりの映像も力となる。

"RENT"は見る度に、違った印象を持つ。それは、主要な登場人物8人がそれぞれ全く違った個性の持ち主であり、どの役にも目立つチャンスがあるからだ。しかも、誰もが重要な位置を占めている。しかし、たとえば、マークがあまり目立つとロージャーとの友情が今ひとつ感じられなくなってしまう。モーリーンにカリスマ性がないと女性2人の愛情が嘘っぽく感じられてしまう。

今まで私が見たジョアンヌ役は、なぜか皆もう少しで聖歌隊のおばさんになりそうな雰囲気の迫力ある歌い手ばかりだったのだが、今回は、優秀で切れ者なのにかわいらしいという雰囲気の役作りで、実に魅力的だった。このジョアンヌがモーリーンに振り回されているのかと思うと、"Tango:Maureen"という歌が一層生き生きと感じられる。

エンジェルだけはいくら目立っても良い。逆に目立たないと全体が台無しだ。きれいで、純粋で、突き抜けるように本音で生きていて、最後は透き通るようでなくてはならない。だからこそ、それを受けるほうのコリンズ役は難しい。映画のコリンズは今まで見たコリンズの中で一番良かった。歌ももちろんだが、アップになって映る優しい表情が良かった。舞台では、表情で演技することが難しいから、映画だからこそできることなのかもしれないが、このコリンズなら、エンジェルとお似合いだと思えた。

舞台装置で抽象的に表されていた風景が、映画になるとしっかり見える。その映像は、だいたいにおいて良い方向に生きていた。特に、地下鉄のシーンなどは、上手に入れたなあと思う。しかし、後半のエンジェルのシーンは、白い布を使った舞台のあの方法のほうがずっと心に迫るものがある。難しいところだ。

映画は、舞台のストーリーをかなり忠実に追っている。ただ、私には勝手な思い込みがある。舞台の"RENT"のクライマックスは、実はストーリーの最後ではなく、幕が下りたあと皆が揃って挨拶する場面、その中でも、特にエンジェルが真ん中から登場し、観客の拍手と歓声に包まれるところではないかと思っている。映画ではそれができない。…ということで、映画はとても良かったのだけれど、『オペラ座の怪人』と同じで、やっぱりまた、舞台の"RENT"を見に行きたくなってしまった。

2006年/監督:クリス・コロンバス/ロザリオ・ドーソン/テイ・ディブス/ジェシー・Lマーティン/イディナ・メンゼル/アダム・パスカル/アンソニー・ラップ/ウィルソン・レディア/トレーシー・トムズ
レント@映画生活

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2006/05/06

『シャイニング』"The Shining"


怖い。しかし、その怖さは化け物に襲われるとか、殴られるとかいったものではなくて、何か正体不明の怖いものが漂っているという怖さであり、音楽、インテリア、色彩、構図、おもちゃの車が走る音、といったものが醸し出す心理的な怖さだ。私が一番恐怖を感じたのは、改行され様々に段落分けされているあの原稿用紙だった。狂気の描き出し方にこんな方法があったとは。

今まで見てきた映画で「怖い」と思った数々の場面と重なる部分が多い。冒頭は『シークレット・ウィンドウ』と似ている。しかし、『シャイニング』のほうが、わけのわからない何かに引き寄せられるように車が走り、どこかに呼び込まれていくという雰囲気があり、さらに怖さを倍増させる。青と赤のインテリアと服装とをシンクロさせた色遣いは『クルーエル・インテンションズ』でもうまく用いられていたが、『シャイニング』ですでに使われていたのだ。

他の映画のネタバレは避けたいので書かないが、あれもこれもこの映画から…という気がしてならない。それほど斬新なものをこの映画は持っている。すばらしい映像と音楽の組み合わせだと思った。

ところが、一緒にこの映画を見た家族はすでに原作を読んでいて、違う!と言っていた。ホテル自体の持つ怖さ、それにスティーブン・キング特有の温かさ、大事なこの2つの要素がこの映画では薄まってしまっているというのだ。映画としての作りが良くても、原作を読んだ人には満足できないものなのだろうか。この映画に満足できずにキングが自分で作ったというTVシリーズのほうを見てみたいと思った。

*その後、スティーブン・キング版も見て感想を書きました。こちら→キング版『シャイニング』

1980年/監督:スタンリー・キューブリック「アイズ・ワイド・シャット」「バリー・リンドン」「2001年宇宙の旅」/原作:スティーヴン・キング「シークレット・ウィンドウ」「アトランティスのこころ」「グリーンマイル」「スティーヴン・キングのシャイニング」「ショーシャンクの空に」「イット」「やつらはとこどき帰ってくる」「スタンド・バイ・ミー」「キャリー」「ミザリー」/ジャック・ニコルソン「アバウト・シュミット」「恋愛小説家」「ア・フュー・グッドメン」「イーストウィックの魔女たち」「カッコーの巣の上で」/シェリー・デュヴァル/ダニー・ロイド

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2006/05/03

『薔薇の名前』"The Name of the Rose"


中世の修道院での連続殺人事件をウィリアム修道士(ショーン・コネリー)が解いていくというストーリー。そのサスペンスとしてのおもしろさも最上級だが、さらに中世の修道院のおどろおどろしい雰囲気や、宗教界の対立の構造や異端の問題などの濃い味付けが加わる。

その上、知性とその象徴である「書物」の持つ力というテーマが底に流れている。本の力は強い。宗教心を奪うこともあれば、真実を正しく見る助けともなるのだ。見応えのある映画だったが、このあたりをもっと深く知りたくなったので、原作もぜひ読んでみたいと思った。

修道院の遺跡を見てまわったことがあるが、その時の説明で想像していた様子が、実際に大勢の人が修道士となって演じている映像を見ることができて非常に興味深かった。塔の部分についても、実際にはどういう階段があったのだろうかと思っていたのだが、納得した。

先日、話題の『ダヴィンチ・コード』を本で読んだ。サスペンスに宗教的おどろおどろしい味付けという点でこの映画と似ているが、もしかするとこちらのほうが深みがあっておもしろいかもしれないと思ってしまった。

1986年/監督:ジャン・ジャック・アノー/ショーン・コネリー「リーグ・オブ・レジェンド」「小説家を見つけたら」「エントラップメント」「マイ・ハート・マイ・ラブ」「ザ・ロック」「理由」「グッド・マン・イン・アフリカ」「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」/F・マーリー・エイブラハム「小説家を見つけたら」/クリスチャン・スレーター「告発」

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2006/05/01

『翼のない天使』"Wide Awake"


物事を深く考える子どもは可愛らしい。この映画の場合、可愛らしさを通り越して痛々しくさえあるのだが…。

可愛がってもらっていた祖父に死なれ、死後の祖父を心配するあまり、神の存在を疑い、信仰について悩み出す少年。苦しみは彼の年齢には深すぎる。両親も、カトリックの学校の教師達も、神父様でさえ、答えを示すことができない。しかし、まわりの大人が暖かく、真摯に向き合い、幼い子どもの悩みを見守る様子はとても良い。

NHKのこどもニュースの制作者が番組の制作意図について語ったのを聞いたことがある。「こどもニュース」はこどもだけを視聴者として想定して作っているわけではなく、こどもの疑問という形を取ることによって、抵抗なく、大人の疑問にもわかりやすく答えることを考えて作っていると。

この映画はそれに似たところがある。子どもの目を通すことによって、ナイト・シャマラーン監督は、自分の語りたかった宗教観をていねいに描き出すことができたのではないだろうか。後の作品に流れる思想が素直な形で読み取れる作品だ。

1998年/監督:M・ナイト・シャマラン「ヴィレッジ」「サイン」「アンブレイカブル」「シックス・センス」/ジョセフ・クロス/ロージー・オドネル/デニス・リアリー

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