『ショーシャンクの空』"The Shawshank Redemption"
こんなに感動し、気分が高揚する映画には、出会ったことがない。何度見ても、仕掛けを知っていても、毎回新たな感動を味わうことができる。あのエンディングは年齢を積み重ねるごとに味わい深く感じられるようになっていく。なぜそんなに心を動かされるのだろう。
その鍵は、この物語の語り手に、穏やかで人の気持ちを理解する調達屋レッド(モーガン・フリーマン)を設定したことにあるだろう。主人公アンディ(ティム・ロビンス)の魅力はその寡黙さにある。したがって、そのまま彼を映しているだけでは彼の心は見えない。しかしレッドを通して語られることによって、アンディの中にあるよくわからない部分を伏線として残したまま、彼の人柄の魅力が浮き出てくる。観客は安心してレッドの語りに気持ちを同化しながら見ることができる。語られずに残され、張られたままになっている複数の伏線は、最後の場面になだれ込むようにして明らかになっていき、心が解放されるような高揚感へと形を変える。
テーマは「希望を持つこと」だ。希望はこれまでにもさまざまな映画で語られてきている。それは多くの場合、勇気や心の持ち方で語られる。しかし、この映画は「知性と教養」によって希望を保ち続けることが描かれている点が特異だ。知性と知識を磨くことによって、まわりの事柄が明確になり、正しく考えることが可能になる。彼は知力のスーパーマンなのだ。しかし、肉体派のスーパーマンと違って、観客が「磨いた分だけスーパーマン(希望)に近づくことができる」と思える点が違う。
自分の生きている空間に閉塞感を持つことは誰にでもあることだろう。そういう時に、この映画を観るととりあえずの応急処置はできるだろう。何度も観て、深く感じれば、完治するかもしれない。
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