『ビハインド・ザ・サン』”Behind the Sun(英語題)""Abril Despedacado(ポルトガル語題)"
「坊や」と呼ばれるだけで、家族から名前もつけてもらっていない男の子がこの映画の語り手だ。最初の場面から、語りの深い思考に引き込まれていく。
さとうきびを砂糖にするのがこの家族の生業。「おじいちゃんの時代には奴隷がやった。今は僕らがやる」という過酷な労働。1910年のブラジル。坊やの一家は近隣の一家と憎しみ合い、何代も前から果たし合いを続けてきている。ただし、その殺し合いは「流した以上の血は流さない」「シャツの血の色が黄ばむのを待って」という掟に則っているので、すべてはじわじわと進む。
語り部の才能があったであろう「坊や」の短く、端的な状況を表すことばを聞き、静かな画面を見ていると、人間の生き方、変えられない観念のむなしさ、喜びは本当は手の届くところにあるはずなのにといったことがどっと迫ってくる。
良質の短編小説を読んだ時のような、静かな思いが心に残る。
・ビハインド・ザ・サン@映画生活
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