『卒業の朝』"The Emperor's Club"
地味な映画だ。しかし、内省的で穏やかなその主張は『華氏911』より厳しく、アメリカの社会と政治腐敗に一石を投じるものだと感じた。『華氏…』と違って、その一石は派手なマスコミにではなく、観る人ひとりひとりの心の底に投じられたのだが。
ハンダート先生(ケビン・クライン)は古代地中海史を通して、人間の正しい生き方を考えさせようとする背筋をピンと伸ばした厳格な教師。エリート男子校で学ぶ生徒達もそれぞれに可愛い。そこに来た異分子、下院議員の息子ベル。
厳格な教師が人間らしさをもってした小さな「間違い」。それはやはり間違いだったのか…。熱血教師モノのような安易な解決をせず、それぞれの人間がすべてを抱えて生きていかなくてはならないことを描いている点が共感できる。
先日、教師モノのエリート女子校版『モナリザ・スマイル』を観たので、今回はエリート男子校版『卒業の朝』を観てみたのだが、対比できないほど重みの異なる映画だった。モナリザのほうはあのヒラリー・クリントンの体験を書いた本から発想を得ているというのだから、むしろ逆の立場と言えるほどかけ離れたものだったのかもしれない。
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