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2006/01/14

『笑の大学』


話の大部分が、がらんとした広い取調室で進む。高い天井、モノトーンの光。舞台で演じられているような雰囲気があり、無駄を排してあるので、そこで荒唐無稽なことが行われても、日常とは切り離されたものとして入り込むことができる。その一方で、取調室の外廊下は非日常から日常へ渡る長い道のようでもあり、そこで起こるできごともまた印象深く残る。廊下にいつもいる警官(高橋昌也)はひと言もことばを発しないが、一般大衆や観客の気持ちを代弁しているような存在感がある。

取調官(役所広司)は、ときには声を荒げ、諭し、ときにはぎこちなく世間話をする。しかし、本当はどうしようと思っているのか。本心はどこにあるのか。彼の心も揺れているのか。それは笑いの要素に隠されて、今ひとつわからないまま話が進む。

ひとつひとつの言動に反応して大笑いするような笑いではない。共感を誘いつつ出てくる笑いが重なって、ひとりひとりの心に秘めた気持ちや、その時代の哀しみがじわりと伝わってきて、それがまた温かい大きな笑いとなり、心の中に残っていく。

私はこれまであまり邦画を見てこなかったが、この映画を見て、太宰治の『御伽草子』の笑いもこの時代のこの状況下で作られものであったことを思い出し、「笑い」を作る三谷幸喜のことをもっと知りたくなった。

原作・脚本:三谷幸喜「みんなのいえ」/役所広司「Shall we ダンス?」「SAYURI」/稲垣吾郎

笑の大学@映画生活

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» 笑の大学 [銀の森のゴブリン]
2004年 東宝【スタッフ】脚本:三谷幸喜 監督:星護音楽:本間勇輔撮影:高瀬比 [続きを読む]

受信: 2006/01/15 00:36

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