『エターナル・サンシャイン』"Eternal Sunshine of The Spotless Mind"
<映画をまだ観ていない方は読まないほうが楽しめます>
破局を迎えた恋人同士は、本当にその記憶を消し去りたいなどと思うものなのだろうか。記憶除去治療を受けることになるジョエルと一緒に、観客はクレメンタインとの思い出を追体験することになる。ちりばめられた魅力的な思い出の数々を。
そして、ジョエルは、記憶除去治療が間違いだったことに気づく。彼が脳内で必死になって、潜在意識下に彼女の記憶を隠そうとするところが面白い。博士の下で働く間抜けな部下の行動が功を奏する(?)のだが、あんな医療スタッフ、映画で見ている分には笑ってしまうが、自分の治療をまかせるのはごめんだ。
この映画、つい『バタフライ・エフェクト』と比べたくなってしまう。『バタフライ…』の主人公は、魅力的に成長した場合の彼女も、落ちぶれた場合の彼女も、みすぼらしい彼女も、すべての場合の彼女をひっくるめた足し算の上で、彼女を好きになっていく。
一方、今回の映画、『エターナル・サンシャイン』は記憶消去治療で引き算してしまったあと、潜在意識の下に少しだけ残った良い記憶と、テープに残った悪い記憶だけを持って、再出発することになる。「また同じことになる」と言うクレメンタインに対して、ジョエルの言う「OK」ということばはとても良い。
「記憶を消す」と「記憶が脳に負荷を掛けるほどに増えていく」と正反対の方向を向いているが、どちらも、良い記憶だけではなく、悪い記憶や負の部分の記憶も抱えて、はじめて、愛情が深まっていくということを示唆している点に共感できた。
*「『フォーガットン』をみんなはどう見たか」のコメントで、GMN(TRUTH?ブログエリア)さんに「記憶モノ」として紹介していただいたので、見てみました。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>つい『バタフライ・エフェクト』と比べたくなってしまう
そうですね、時期的にも近かったですし。
「バタフライ」はかなりストーリーが入り組んでいましたが、こっちは幾分シンプルなストーリーでした。
でも映画自体の作り込み、トリッキーさはこっちの方が凄かったかもしれません。
投稿: starless | 2007/02/06 21:08
こちらのほうが「バタフライ…」よりシンプルなストーリーだったとは思うのですが、「記憶を消す」ということに最初は違和感がありました。「これを消したら、それとつながっているこういう記憶はどうなるんだろう…」と、限りなく自問自答してしまって…。
でも最近は、「ペイチェック 消された記憶」などでもこういう作業が当たり前のようになってきて(笑)、もう慣れてしまったので、今はすぐになじめます。
いや~、映画の世界の科学技術が日常の中に入り込んでくるスピードの速いこと。
投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2007/02/09 10:40