『シャーロット・グレイ』"Charlotte Gray"
ケイト・ブランシェットが従軍看護婦シャーロットを美しく演じる。彼女はパイロットのピーターと出会った途端に恋に落ちる。そして、フランスに飛び立つ寸前の彼と、ロンドンでつかのまの愛の時を過ごす。その後、彼女は、フランスで消息を絶った彼を探す目的を心に秘め、スパイとなりフランスの田舎の村に潜入する。
戦争映画としては地味だ。レジスタンス運動家を描いたものとしてとらえると、彼女はあまりにしろうとすぎる。使命感に欠ける部分も目に付く。感情移入するのは難しい。だんだんと、どういう価値観をよりどころにしてこの映画を見たら良いのかわからなくなってくる。しかし、そうなってくると同時に、その価値観の揺らぎこそがこの映画の言わんとするところだということがわかってくる。
最初にシャーロット自身の語りが流れる。「善と悪の戦い。だから善が勝つと思っていた。しかし、そう単純ではなかった」 世の中のできごとは、そう簡単に2つに分けることはできない。そして彼女は正しいと思うことをしていたはずなのに、知らず知らずのうちに、それが自分の思惑と違った結果を生み出すこともあることに気づき始める。「もう自分が何をしているのかわからなくなってきた」とつぶやく彼女。
困難と、混沌とした価値観を分かち合う経験を共にした者同士のみが分かち合える愛情、それを描こうとしているのだと思い至った時、この映画がすばらしい恋愛映画であることに気づく。
・シャーロット・グレイ@映画生活
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