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2005/12/28

『SAYURI』"Memoirs of a Geisha"


不思議な着方の着物、たどたどしい英語にあやしげな発音の日本語が混ざる話し方、それはないだろうという立ち居振る舞い、しかし、それがかえってエキゾチックで魅力的にも感じられる。下手な京ことばで日本人の女優さんが演じるより良かったのかもしれないと思った。いや、あれは東京だったのかもしれないけれど…。

日本の文化からはひとつスライドしたところにある花街。外国人が作った芸者の世界を見て、やはりそれは異国のような世界なのだなあと感じた。

屋根の上から見た風景は、屋根瓦が日本的だというだけで、まるで、中東の旧市街にありそうな景色。しかし、そこには、日本の時代劇風の整然とした屋根では表現しきれない、千代の目に映った自分の小ささと無力さが浮き出て見えてくる。そしてそれを見ていると、『千と千尋の神隠し』に出てきそうな、それでいて、ヨーロッパのバレエ学校を思わせるような大規模な芸者学校が存在しそうな気がしてくる。

それらの不可思議さが、異次元の世界にある別の日本のようで、私には魅力的に感じられた。

話は、どろどろした女の戦いのはずなのに、そのどろどろの表現がストレートすぎて、悲哀も凄みも深さもすべて物足りなかった。が、そのために、かえって、芸者の世界の美しさに集中して見ることができたのは良かった点かもしれない。

日本人がこの映画を作っていたのなら、先輩芸者の伝授で、さゆりが次第に立ち居振る舞いから、芸事、艶やかさまでを身につけていく姿を克明に、納得できるように描いただろう。おかぼは、もっと細やかな気持ちが秘められたセリフをさりげなく言い、観客はもっと感情移入して見ることができただろう。

1人1人の描き方はすべて物足りない。しかし、その分、外側の艶やかさと、不思議な魅力に満ちた世界が充分に描かれていたのではないだろうか。感動はしなかったけれど、ため息をついてその世界に浸り、堪能した。

*観る前にこの映画への期待を書いた記事はこちら→「観る?観ない?『SAYURI』

監督:ロブ・マーシャル「シカゴ」/チャン・ツィイー「ラッシュ・アワー」/渡辺謙「ラスト・サムライ」/ミシェル・ヨー/コーン・リー/役所広司「笑の大学」「Shall We ダンス?」/桃井かおり/工藤夕貴

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コメント

「外見の艶やかさ」と「不思議な魅力」。おっしゃるとおり,これを表現することが目的の作品ですね。その点で見事に成功していると言えます。
深みのないキャラクターの中で「延さん」だけが“身近な日本人”だったような気がするんです。彼が茶碗(?)を素手で割るシーンでは,想いをうまく表せないもどかしさが伝わってきて胸がぎゅっと締め付けられました。

投稿: バウム | 2005/12/29 00:53

バウムさんコメントありがとうございます。

確かに延さんの思いは伝わりましたね。延さんは、語らないことで思いを語るというタイプだったので、もしかしたら脚本が思いを語るように作られていなかったとしても、役者が充分に演技する余地があったのかもしれないという気がしています。

映画鑑賞後、しばらくおいて振り返ってみると、男性では延さんの気持ちが、そして、女性のほうでは、おかぼの落胆した気持ちが強く伝わってきます。

やっぱり、心の底では物足りなかったと思っているのかなあ。

投稿: ちんとん | 2005/12/31 22:07

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