« 『バタフライ・エフェクト』"The Butterfly Effect" | トップページ | 『ドラムライン』"Drumline" »

2005/12/04

『16歳の合衆国』"The United States of Leland"


恋人の弟であり、知的障害者である少年をリーランドは殺す。家で熱帯魚の水槽を見つめながら、静かに、「…think I made mistake」 とつぶやくリーランド。

彼は、その凶悪な犯罪からは想像もつかないほど、物静かで、感性が鋭く、知的で、深く考える力を持っている。

青春期には、こういう鋭い、人生の断面を見抜く力に優れる時があることを思い出す。成長するにつれて、それらを統合する力が出てくると、ひとつひとつの断片に対する鋭さは鈍くなっていく。

リーランドは、特に知的能力が高く、作家である父親譲りであろう洞察力も備えていた。しかし、父親不在の環境もあって、それらを統合する端緒を見出すことができなかった。しかし、彼の考える力はすばらしい。安易に「理由」を見つけず、安易に「意味づけ」をせず、ひとつひとつを結論の出ない状況のまま抱え込み、文章にし思考していく。

犯罪は取り返しのつかないものであった。それによって、たくさんの人間関係が崩れていってしまった。それらに対する哀しさを感じると同時に、犯罪者である青年にも哀しさを感じる。「ごく普通の…」とは思わない。犯罪者の青年はたぐいまれなる感性の持ち主だと思う。それは「美徳」のようにも見えるのだ。それなのに、それが犯罪を引き起こしている。哀しい。

『アメリカン・ビューティー』にも似た、いわゆるWASPの悩める姿が、よりわかりやすい形で、心に染み入るように描かれていると感じた。

2003年/監督:マシュー・ライアン・ホーグ/リーランド:ライアン・ゴスリング/ベッキー:ジェナ・マローン/教官パール:ドン・チードル「ホテル・ルワンダ」「オーシャンズ11」「ミッション・トゥ・マーズ」「トラフィック」「ブルワース」/アルバート:ケヴィン・スペイシー「光の旅人 K-PAX」「シッピング・ニュース」「ペイ・フォワード」「アメリカン・ビューティー」「交渉人」「ライフ・オブ・デビッド・ゲール

|

« 『バタフライ・エフェクト』"The Butterfly Effect" | トップページ | 『ドラムライン』"Drumline" »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『16歳の合衆国』"The United States of Leland":

» 16歳の合衆国 [TRUTH?ブログエリア]
原題:THE UNITED STATES OF LELAND監督・脚本:マシュー [続きを読む]

受信: 2006/01/13 00:07

» 16歳の合衆国 [cinema mode○○●こころからストーリーを味わう●○○]
16歳の合衆国  近年多発する少年犯罪。犯罪を犯す若者たちのこころの中にはいったい何が流れているのか?  恋人の弟、知的障害者の少年を殺害してしまった16歳。繊細さゆえに世の中にあふれる哀しみに耐え切れず心を閉ざした彼の心の弱さや、苦しみ悩みながら生きる人々の姿を描いた映画。  全てのことを悲しいこと、暗い方向へ考えてしまう自分の姿とこの主人公がリンクして、自分のことが少し解ってきた気がする。  実際問題、事件のことをニュースで見て、うちの母もよく「どうしてこんなことがで... [続きを読む]

受信: 2006/03/16 23:04

« 『バタフライ・エフェクト』"The Butterfly Effect" | トップページ | 『ドラムライン』"Drumline" »