『奇跡の詩』"The Third Miracle"
奇跡を描いた感動作ではなかった。奇跡を調査しなくてはならない神父の、信仰に対する苦悩を描いた作品だった。
エド・ハリスが演じるフランク神父は、奇跡が本物であったかどうか調査する仕事をしている。そして、数々の奇跡が偽物であることを証明していく。それは同時に、その奇跡を信じていた人々の信仰心を宙に浮かせ、打ち砕くものでもあった。
奇跡を疑い、奇跡でないことの証明をきっちり行う彼はまた、自分の信仰に疑いを持ち苦悩していた。しかし、苦悩する彼の姿のなんと真摯なことか。彼と一緒に神学校で学んだ神父ジョンは、「信仰を得たその日のことを覚えているか。その日から喜びに満ちた日が始まったことを」と屈託無く、そして幸福そうに話す。
ヒエラルキーの中にどっぷりと浸かって、教会という「俗」にまみれたとも見えるジョンの姿と、落ちこぼれて酒におぼれ、女性に愛を感じてしまうフランクの姿。
こういう、人間の描き方、私は好きだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント