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2005/10/31

『ドライビング・ミス・デイジー』"Driving Miss Daisy"


この映画を見るのは2回目だ。1回目はこの映画がアカデミー賞を取った15年前。あの時、何の疑いもなく、この映画のテーマは人種問題を扱っているのだと思ってしまった。今はそれがほんの味付け程度に過ぎないことがわかる。

胸を張って、志を高くして、ちょっと無理して、矜持を持って生きてきた老婦人。しかし、その誇りが、頑固なほうへシフトして、扱いにくい頑固な老婦人になっていた。ところが、お抱え運転手としてやってきたモーガン・フリーマン演ずるホークのゆったりした人柄に包まれて、かわいらしいおばあさんに見えるようにさえなっていく。

テーマは、人種問題ではなくて、老いることではないかと思えて見てしまった。私が年をとったからかな。

1989年/監督:ブルース・ベレスフォード(「グッド・マン・イン・アフリカ」)/ホーク:モーガン・フリーマン(「ブルース・オールマイティ」「ディープ・インパクト」「ショーシャンクの空」)/デイジー:ジェシカ・タンディ(「コクーン」)

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2005/10/26

ムーア批判をどう考えるか/『ボウリング・フォー・コロンバイン』


昨日書いた記事で、この映画に感銘を受けたことを書いた。あまりにも感銘を受けてしまったので、マイケル・ムーア批判がどういうものなのか、もう少し調べて、自分が"洗脳"されたのかどうか確かめたいと考えた。

主に参考にしたのはこのページ。↓
http://www.mooreexposed.com/bfc.html

このサイト、かなり詳細に映画を分析している。ざっと読んでみて、自分が"洗脳されて"、間違った判断に導かれていたと、はっきりわかる部分が1か所あった。

私はこの映画を見て、「NRAは、銃による悲惨な事件があると、わざわざそこへ出かけていって、銃所持を正当化するキャンペーンを張っているのだろう」と思った。そして、それが批判をかわす戦術なのだろうと思った。

しかし、チャールトン・へストンの元の演説と、映画に出てくる演説のことばを比べてみると、真ん中が削除され、別の文の主部と述部が編集されて、ひとつ文のようになっているところがあることがわかると指摘されていた。

 *「市長へこう言った」のあと、「私は18歳の時に志願して軍に入り、ナイジェリアからベトナムまで従軍した」に続くメインの部分が削除され、演説のさらに先に出てくる、「この国はアメリカ人として自由に行き来できる国だ。来るな? 私はもう来てしまっている。」の部分がそのまま編集して付けられている。

また、これほど大規模な大会だから、事件が起こったからといって急に企画するのは無理があり、前々から決まっていたもので、変更できなかったのだとする主張も頷けるものだった。

また、6歳の子供の事件のあったフリント近くでの演説はNRAの大会ではなく、大統領選のキャンペーンの一環としてチャールトン・へストンが出ておこなったものであり、しかも3日間で3州にわたる地域の9か所をめぐってした演説のうちの1つであることを知ると、映画の最後のほうに出てくるインタビューで、8ヶ月前にその事件がその地で起きたことを、彼が「知らなかった」と答えているのも、無理はないことであり、嘘をついているのではなさそうだと感じた。

たぶん、チャールトン・へストンの部分はかなりねじまげられてしまったのだろう。それ以外の批判については、「そんなこと、最初からわかって見ている」という部分と、「難しすぎてわからないし、両者にはそれぞれの見解があるのだろう」と思える部分とに分けられた。

私は昨日、この映画の感想を書いた時、まだこの批判サイトを読んでいなかった。しかし、感想の中にはチャールトン・へストンについての部分は書かなかった。彼を不当にバッシングする気になれなかったし、この部分についてわざわざ書くほど、映画自体の主張と明確につながっているように思えなかったからだ。彼が登場する部分はあまりに情緒的に扱われすぎている。

その部分をなしにしても、前に書いたようなメッセージは充分に伝わってくる。他の作品も見てから、この監督のことを判断したいが、この作品については、「ねつ造」と叫ぶより、自分が受け取ったメッセージのほうを大切にしたいというのが私の出した結論だ。

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2005/10/25

『ボウリング・フォー・コロンバイン』"Bowling for Columbine"



極端な考え方に洗脳されたくなかった。事件の時、たまたまアメリカに住んでいて、TVで目の当たりにしてしまったあの悲劇をこれでもかと見せつけられるのは嫌だと思った。同じ日に行われた、クリントン大統領のコソボ攻撃もあの事件で薄らいでしまった。苦々しく、救いようのない気分にされたあの日がよみがえる。

それでも、もしかすると良い作品なのかもしれないとふと思い立ち、見ることにした。全然極端ではなかった。「銃による悲劇は、米国人の中に巣くう恐怖の念がもたらすもの」という考え方はストレートに心に響くものだった。また、そのことばが、コロンバイン高校の悲劇の原因となった歌だとされたマリリン・マンソンの口から出てきたことばに基づいているのが印象的だった。思い描いていたイメージとは違って、静かで考え深い語り口のロック歌手だった。

あの悲劇が起きた高校の天井のカメラに撮られた、犯人となった2人の青年の動き回る姿が映し出された。あんな映像があったのだ。悲しくなった。『サウス・パーク』の作者、マット・ストーンがインタビューの中で言っていた「学校ではめられる型以外の生き方が、外の世界にはたくさんあるのだ、ということを知らされずに袋小路に追い込まれていく若者」のことをくっきりと思い描くことができた。

日本の銃による殺人は極端に少ない。それは私たちが銃を持っていないということだけの話だ。ここに描かれている「恐怖」の原理に動かされてしまう心を、私は自分の中にも感じることができる。あそこに出てきた、鍵を掛けずに生活し、「なんでそんなこと聞くの?」という顔をするカナダ人と私は違う。

古き良き時代を思わせる、ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」"What a Wonderful World"が、バックグラウンドに使われている。しかし、映るのは、あの悲惨な映像。そして、同じ曲が最後に違った調子で歌われる。逆説的に使われているのに、メッセージがしっかり伝わってくる。効果的な使われ方であり、また、曲自体もすばらしい。

マイケル・ムーアの作品がもっと見たくなった。(その後「華氏911」も見ました。)

*その後、「ムーア批判をどう考えるか」という記事を書き足しました。

2002年/監督:マイケル・ムーア(「ザ・コーポレーション」「華氏911」「ロジャー&ミー」)/チャールトン・へストン(「ベン・ハー」「猿の惑星」「ソイレント・グリーン」)/マリリン・マンソン/マット・ストーン/ジョージ・W・ブッシュ

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2005/10/15

『スイミング・プール』"Swiming Pool"



「イギリスの女は一番もてない」と書かれた雑誌やユーモア本をイギリスの書店でよく見かけたが、まさにそれを地でいく人気作家のサラ・モートンが主人公。

ファンから声を掛けられても、うるさそうに冷たく反応するし、話し方も、ホルモンバランス崩しているんじゃないの?という筋金入りの感じ悪さ。

でも、違うんですねえ。最後まで見て、びっくりしてしまいました。作家ってすばらしい。なんて魅力的で、生き生きしていて、みずみずしい感性を持っているんだろう。きっと自分が、どう見られているかもしっかり知った上で、客観的に自分を見て、その自分を笑うことさえできる。こういう知的な熟年の女性になりたいものだと思ってしまいました。

ネタバレしたらおしまいなので、筋に触れそうなことは書きません。でも、ここ数年で見た映画のなかで、一番好きなものになりそう。

ネタバレコメント(反転させて読んでください)→プールはビニールで覆われたまま1度も開かれなかったのではないかと思う。

2003年 監督:フランソワ・オゾン/シャロット・ランプリング「家の鍵」/リュディヴィーヌ・サニエ(「ピーター・パン」)/チャールズ・ダンス

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2005/10/02

『ア・フュー・グッドメン』"A Few Good Men"



キューバの米軍基地での殺人事件をめぐる法廷モノ。それぞれの立場の人が信じる「正義」について考えさせられる。

非常時の海軍という特殊な空間の中でできあがる特殊な規律、そしてそれを正しいと信じている人達。しかし、別の基準で見ると違った「正義」が現れてくる。

ハラハラする真実が次から次へと暴かれていくという法廷劇ではないが、それぞれの立場の人がよりどころとしている基準と、「正義」に目覚めることにより、変化していく様子が、弁護人側にも、被告の側にも見られて、そこが一番の見所となっていた。

唯一、絶対にその基準をブレることなく持ち続ける男を演じたジャック・ニコルソンの演技はすばらしかった。トム・クルーズもはまり役。

1992年 監督:ロブ・ライナー(「ハリウッド・ミューズ」「スタンド・バイ・ミー」「ミザリー」)/トム・クルーズ(「コラテラル」「ラスト・サムライ」「マイノリティ・リポート」「アザーズ」「バニラ・スカイ」「アイズ・ワイド・シャット」「マグノリア」「ミッション・インポッシブル」「レインマン」)/ジャック・ニコルソン(「アバウト・シュミット」「恋愛小説家」「シャイニング」「イーストウィックの魔女たち」「カッコーの巣の上で」「イージー・ライダーー」)/デミ・ムーア(「GIジェーン」)/ケヴィン・ベーコン/キーファー・サザーランド

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