『ネバーランド』"Finding Neverland"
演劇家バリが、本当に自分が描きたかったものは何かということに目覚め、観客に喜ばれ、受け入れられる劇として『ピーター・パン』を仕上げていく様子が丹念に描かれている。日々の生活の中で埋もれてしまっていた本当に描きたかった大切なことを、未亡人シルヴィアとその4人の息子達との触れ合いの中で思い出していく。
バリは少年ではないし、ピーター・パンでもない。シルヴィアとふれ合うことで失っていくものがあることも知っている。自分の家庭とシルヴィアの家庭、双方に対する責任があることもわかっている。しかし、彼は芸術家だ。本当に描きたいことを見つけてしまったのだ。
彼は、大人になってしまっているからこそ、少年の頃の心の大切さがわかり、それをいとおしく思う。少年というものは早く大人になりたいと思うことはあっても、少年のままでいたいなどとは思わないものだ。
少年の心を思い出した大人で才能ある劇作家バリと、少し早く大人にならざるをえなかったピーター。最後の場面は、少年を卒業してしまったピーターと、ピーターのおかげで少年の心を思い出した2人が完全にわかりあえた瞬間を表しているのだと思う。
大人の部分を完全になくして、少年の心そのままのバリを演じようと思えばできたはずのジョニー・デップだからこそ、あの押さえた演技のすばらしさが光ってくるのだと思う。25の客席の秘密と、観客達の表情が変化していく場面はすばらしい。アカデミー賞、ジョニー・デップにも作品にも取って欲しかった。
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