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2005/06/06

『レナードの朝』"AWAKENINGS"



 映画の邦題がとても良い。原題は"Awakenings"だが、「目覚め」「覚醒」とせずに『レナードの朝』としたことが映画全体を生き生きとさせている。そして、これが事実に基づいているというのだから圧倒されてしまう。

 20歳の頃から体が硬直し、意識もなく、無反応のような状態に陥っていたレナード(ロバート・デニーロ)に、30年ぶりの朝が来る。新任の引きこもりタイプの医師、セイヤー(ロビン・ウイリアムズ)が、精神病院の中で、治療の意味なしとされていた一連の患者にLドーパという新薬を試した結果、奇跡のようなできごとが起こったのだ。

 この場面は本当に感動的だ。30年の眠りから目覚めたレナードが、扇風機に風を感じ、動き出した自分の体を感じる。筋肉の動きをぎこちなく確かめながら、少年の時の感性のまま、とまどいながらも、初々しく外の世界との触れ合いを開始する。ずっと看病してきたスタッフ1人1人と「初めまして」と挨拶していく場面は静かな感動を呼び起こす。そして、セイヤー医師は人々の基金を得、他の患者達にも新薬を試みる。残りの患者達が一斉に静かに目覚める夜の病院の場面もすばらしい。

 しかし、楽しい時は長くは続かない…。

 ボールを反射的に受け取るこの病気の患者の特性を診断する時の様子など、様々な場面でくすっと笑ってしまう。また、ほのぼのする場面、はらはらする場面、すべてが、「そう感じて良いんだよ」と言われているかのようにわかりやすく描かれている。そのため、安心して、素直に感動に浸ることができる。

 どんでん返しの連続だったり、オチがあったりする映画とは違った、古き良き時代の秀作を見たというような満足感にじっくりと浸ることができた。

1990年

監督:ペニー・マーシャル

レナード/ロバート・デ・ニーロ(「ハイド・アンド・シーク」「ミート・ザ・ペアレンツ」「アナライズ・ミー」「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」)

セイヤー医師/ロビン・ウィリアムズ(「アンドリューNR114」「奇蹟の輝き」「パッチ・アダムズ」「フラバー」「グッド・ウィル・ハンティング」「ジャック」「ジュマンジ」「ミセス・ダウト」)

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コメント

こんばんは。

私もこの映画見たことあります。
主人公が元の姿に、だんだん戻っていく時、
食堂のような所で好きな女性に会うシーン。
あそこが一番、印象に残っています。
命が消えるわけではないけれど、元の姿に戻れば、会いに行くことも、話すことすらできなくなってしまう。
好きな人(好きな女性だけではなくて)と意思の疎通が図れなくなってしまうというのは、とても辛いことだと思ったし、元に戻ることへの彼の焦りというか、見ていてとても切なくなりました。

私もこのように丁寧?な感じの映画ってとても好きです。

投稿: ムム | 2005/06/07 22:39

ムムさん、いつもありがとうございます。

あの食堂でのダンスのシーンはいいですよね。食堂にいる他の人たちの見守る目もが静かで、温かいのがまたいい。レナードの心が無垢な少年の心のままであることが伝わってきます。だからこそ、元の状態に戻っていくことが痛々しいのですが…。

本当に「丁寧な感じの映画」ということばがぴったりの作品だと思います。

投稿: ちんとん | 2005/06/08 08:38

「丁寧なつくりの映画」っていいですよね。
最近の映画はプロットの複雑さやどんでん返しで盛り上げようとするきらいがあって、それはそれでいいのですが、たまにはこんなゆっくりした作品を観て涙を流したくなります。
『いまを生きる』もそんな映画で、やはり大好きな作品の一つです。

当初、ロビンはレナード役をやりたかったらしいですね。
大御所のデ・ニーロを相手にして、そこまで強行もできず、譲ったらしいですが。
もしレナードをロビンがやっていたら、また一味違った作品になったでしょう。
観てみたかったですね。

投稿: つっきー | 2005/06/09 18:28

つっきーさん、いつもていねいなコメントありがとうございます。

『いまを生きる』もロビン・ウイリアムズが出ているんですね。

レナード役はロバート・デ・ニーロ以外考えられないような気がしていますが、ロビン・ウイリアムズの可能性もあったんですね。

この間、ひさしぶりに『アンドリューNR114』を見たのですが、ロボットとも人間ともつかない、微妙な表情の動きがうまいですよね。映画によっては、過剰な演技が嫌になることもあるのですが、こういうのを見ると、やっぱりすごい役者だと思います。そう考えてくると、ロビン・ウイリアムズのレナードも見てみたかったような気がしてきます。

投稿: ちんとん | 2005/06/10 00:19

いつまでも色あせない名作ですよね。
今観ても同じ感動を味わえました。
よろしかったら、こちらにTBさせて頂きますね。

投稿: かんすけ@シアフレ.blog | 2005/07/25 14:32

コメントありがとうございました。あとでかんすけさんのシアフレにお邪魔して、☆印の評価に参加してきますね。でも、とびっきり気に入っている映画にばかりコメントつけていただいているので、いつも評価が高くなる傾向がありますが、いいのかな。

投稿: ちんとん | 2005/07/27 10:35

ちんとんさんへ。
こちらこそ、いつもコメントありがとうございます★
自分の好きな映画の記事ばかり書いてるんで、評価が高くなるのはとても嬉しいです(^^
またお邪魔させていただきますので、よろしくお願いします。

投稿: かんすけ | 2005/07/27 11:52

TBありがとうございます^0^
あのシーンは感動的でしたね。
医者としても人間としても30年ぶりによみがえった瞬間実際どのぐらい感動したのか想像につきませんねー。
デ・ニーロとウィリアムズのすばらしい演技も最高でした。
良い映画ですね。

投稿: KAZU | 2006/03/04 10:00

KAZUさん、コメントありがとうございます。

すごい勢いで映画をご覧になっているんですね。それをちゃんと書き留めていくところがまたすごい。

エリート校モノの「いまを生きる」の他、問題作モノの「アメリカン・ヒストリーX」など、見たいなあと思いながら、お薦め度を参考にさせていただいています。

見たらまたTBさせていただきますので、よろしくお願いします。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2006/03/06 23:20

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オリヴァー・サックスの実話を基に、治療不能の難病に挑む医師の奮闘を、一人の重病患者との交流を軸に描いたヒューマン・ドラマ。 実話を基にしただけあって、テーマはあまりに重く、そのリアル感に惹きつけられ心を打たれます。 レナードが永い眠りから奇跡的に目覚め、... [続きを読む]

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■今回は『レナードの朝』をお届けします。 「これは真実の物語である」  そう、この映画は事実に基づいているだけに、観ていてとても重いものがあります。  ■炉鳩は映画を観てて、 「この作品、配役を変えて観てみたい」と思うことが少なくありません。  それは... [続きを読む]

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