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2005/06/12

『恋愛小説家』"As Good As It Gets"


不潔恐怖症で、外に出る時は手袋をしないとタクシーのドアにも触れられない。レストランにはフォークとナイフを持参するという恋愛小説家ユードル(ジャック・ニコルソン)が主人公。本当は優しい心を持っているのに、口から出てくるのは毒舌。書いている小説とは正反対の男ユードルとその一風変わった思いを受けて立つウエイトレス、キャロル(ヘレン・ハント)の話。

2人はこの作品でアカデミー主演賞を取っているのだが、その陰で見逃せないのが、ゲイの画家であるサイモン。絵を描きながら、その純粋な心でモデルの一番良いところを引き出す才能がある。モデルもそれを感じて良き心が解放されていく。心底優しい人間であることが彼の表情、身振り、しぐさすべてにあらわれている。

ひらめきを感じて少しの間一緒に仕事をしたモデルの男性がいた。その彼が泥棒の手引きをしたことがわかる場面がある。サイモンの顔は「こんな良い面を持っている君がそんなことをするなんて」と傷つき、曇る。モデルのほうもそれを受け止め悲しい顔になる。(端役なのに、彼の演技も光っている)

少し弱いくらいのキャラクターであるサイモンが、この映画のカナメにいることによって、個性的過ぎて、とても分かり合えるとは思えない人たちの心が解きほぐされていく。この映画の本当の主人公はサイモンではないかと思えてくる。

* 余談だが、この映画を見て、アメリカの医療保険制度の過酷さを改めて感じてしまった。自分の入っている保健がカバーしているかどうかによって受けられる治療が限定されてしまう。そして事故で短期間入院しただけであっても、保険外の治療を受けようとすると破産することさえあるのだ。そして、その社会には、高い保険料を払うことのできる人もいれば、カバーされていないその額さえも簡単に払うことができる人たちもいるという社会。厳しい。

1997年
監督:ジェームズ・L・ブルックス
ユードル/ジャック・ニコルソン(「アバウト・シュミット」「シャイニング」「イーストウィックの魔女たち」「カッコーの巣の上で」「イージー・ライダー」)
キャロル/ヘレン・ハント(「ペイ・フォワード[可能の王国]」「キャスト・アウェイ」「ツイスター」)
サイモン/グレッグ・キニア(「ギフト」「ユー・ガット・メール」)
フランク/キューバ・グッディング・Jr(「奇蹟の輝き」)
ヴィンセント(モデル)/スキート・ユーリック(「スクリーム」)

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コメント

この作品、けっこう前に観ましたが、
サイモンの存在の重要性はちんとんさんが述べていらっしゃるとおりだと思います。

ところでアメリカの医療制度の不条理さを扱った作品として
『ジョンQ 最後の決断』というのがあるのですが、
ご覧になったことありますか。
個人的にはとても印象に残っている作品です。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/06/12 23:42

多感な奴さん、いつもありがとうございます。

『ジョンQ 最後の決断』、観ました。普通の「人質モノ」とは全然違った展開で、とても印象深い映画でした。また、医療制度を正面から扱った映画でもありますよね。

ただ、この映画、初めて応募した試写会に当たって、銀座で観た映画だったのですが、椅子が窮屈で閉口しました。映画は遅れて観るので構わないから、やはり自分の好きな場所で観たいと思ってしまいました。

投稿: ちんとん | 2005/06/13 00:14

私も試写で見たんですよー。
同じNYに暮らしていても、生まれ育ってきた環境(経済的なものも含めて)によって、人間関係の作り方が変わってくるんですねえ。
私はよく分からないのですが、キャロルが住むブルックリン(でしたよね?)から、ユードルの高級アパートがあるマンハッタンというのはバスで行く距離なんですね。
その距離を超えていこうとするガッツのあるキャロルが、とてもカッコイイなあと感じました。

投稿: バウム | 2005/06/14 21:52

バウムさん、いつもありがとうございます。

バスで行く距離ですね。大きな橋もありますし。

私も、バスの中だけが明るいあの夜の風景が目に焼き付いています。距離もさることながら、あんな時間に行ってしまって、帰りのバスのことは考えなかったのだろうけれど、大丈夫だったのかななんて思ってしまいました。

投稿: ちんとん | 2005/06/14 23:41

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