『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』"Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events"
子どもの頃、『不思議の国のアリス』がとても恐かった。その本の近くに行っただけで、表紙がうわっと広がって不思議な、理解できない広がりを持った世界に取り込まれてしまうのではないかと心配だった。年月が経ち、いつしかその恐怖が消えた頃、その世界は魅力的なものに変わった。
そして、そんなことを感じていたこともすっかり忘れていた今、この映画を見た。レモニー・スニケットの世界は懐かしい感覚を思い出させてくれるものとして私の中に飛び込んできた。蛇の館も、蛇と戯れる子どもも、断崖絶壁の横にはりついたあぶなっかしくも魅力的な家も、そして焼け落ちた家も、その家が建っていた街も、すべてが心の底からわくわくしてくるものだった。画面を静止させておいていつまでも細部をのぞき込んでいたくなるような、そんな世界が広がっていた。
望遠鏡(spy glass)はどういう意味を持つのだろう。なぜ、あの人たちはそれを持っていたのだろう。きっとシリーズを通して読んで、初めて意味を持つものなのだろう。
あの不思議な望遠鏡はひょっとすると、現実世界と隣り合わせの「世にも不幸な世界」への入り口なのかもしれない。反対向きにしたら、「世にも幸せな世界」に戻ることができるのではないだろうか。でも、もうしばらくの間、不幸の側を覗いていたいと思った。
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