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2005/04/13

『デッドマン・ウォーキング』"Deadman Walking"

 救いようのない残忍な強姦殺人事件を起こした死刑囚とそれに付き添うことになったシスターの話。前面に出ているテーマは死刑制度の是非だ。またキリストと共に磔にされた極悪人の話があぶり出されて見えてくることからもわかるように、キリスト教の影響は大きい。

 こういう問題を正面からまともにとらえているので、映画のテーマはとても重い。しかし、見終わっての後味は悪くない。それは、悲しみ、憎しみ、罪、後悔を抱えながらも人は安らかに生きていくことが愛によって許されているというメッセージが底に流れているからだ。被害者の家族の苦しみも、憎しみを持つ心も、裁かれる犯人のエゴイスティックな心も、弱い心も、それらすべてを包み込む大きなものの存在が緩やかに表現されている。

 人の苦しみを吸い取って苦悩するシスター・ヘレンを演じるスーザン・サランドンはすばらしい。また、静かに流れる音楽が側面から穏やかにそのメッセージを支えている。

 *死刑制度が描かれている映画には他にこんなものがあります。

1995年/監督:ティム・ロビンス「ジェイコブス・ラダー」「ミッション・トゥ・マーズ」「オースティン・パワーズデラックス」「隣人は静かに笑う」ショーシャンクの空」/シスター・ヘレン:スーザン・サランドン(「グッドナイト・ムーン」「ムーンライト・マイル」「ジャイアント・ピーチ」「若草物語」「イーストウィックの魔女たち」/ショーン・ベン/
*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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コメント

岡枝です、お久し振りです。
『デッドマン・ウォーキング』、私も観ました。ちんとんさんのログを読んでいて、色々と思い出してしまいました。死刑の是非に関しては…実は私は肯定派なのですが…でも、この映画を観まして、死刑が決定している犯罪者の方々が、刑の執行されますまでに己の罪と真っ向から向かい合い、懺悔します気持になって頂けなければ、何方様もお一人として救われないのだな・・・と、感じました。日本では最近、異例の速さで死刑が執行されました、池田小学校児童殺傷事件のあの犯人…彼は「早く死刑にしろ!」みたいなことを叫びまくっていらしたそうで、お望みが叶ったみたいですね。でも、彼がああまで早く死刑を望んでいたのは、己の罪と向かい合って何時か後悔と自責の念が自分の中に芽生えてしまうことを恐れていたからかも?なんて、『デッドマン・ウォーキング』を思い出しながら推測しちゃいました。彼にもちゃんと罪を悔いる気持になってから、死刑になって頂きたかった。被害者の御遺族のお気持も、あのような中途半端な形で終ってしまっては、如何にも治まりようが無いでしょう。『デッドマン・ウォーキング』は、罪と罰の間に‘救い’を提唱している一作だと思います。では、また♪遊びに来ますね♪

投稿: 岡枝佳葉 | 2005/04/14 08:33

岡枝佳葉さん、コメントありがとうございます。

「罪と罰の間に‘救い’を提唱している」とのこと。その通りだと思います。

以下ネタバレ!ネタバレ注意!

監督のティム・ロビンスは死刑反対を唱えているそうですが、この映画の死刑囚のように、死刑がせっぱつまって実感されて初めて改心する極悪非道の犯人をテーマにしてしまうと、死刑がなかったらこの人は改心することはなかっただろうと思えるので、逆効果ではないかなどと思ってしまいました。

でも、死を前にしてここまでまともな人間になれるのなら、やはり人間は動物と違う。死刑はいけないという考え方もできるのかもしれませんが…。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2005/04/14 23:53

ばんわー。

>しかし、見終わっての後味は悪くない。それは、悲しみ、憎しみ、罪、後悔を抱えながらも人は安らかに生きていくことが愛によって許されているというメッセージが底に流れているからだ。

素晴らしい表現ですね。たしかに後味は悪くなかったです。たった一人で厳罰に望めば恐怖や後悔、孤独しか感じないのかもしれないですが、シスター・ヘレンのようなサポート役がいれば「救い」も訪れるかもしれませんね。

死刑をテーマにした映画では他に『ライフ・オブ・デヴィッド・ゲイル』という作品が好きです。死刑廃止論者の大学教授が死刑を宣告されてしまうという話ですが、こちらのほうが死刑廃止というメッセージが伝わっていると思います。でも後味はやや悪いかもしれません。またサスペンスチックでもあります。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/04/15 00:37

多感な奴さん、コメントありがとうございます。

『ライフ・オブ・デヴィッド・ゲイル』は、ケビン・スペイシーが出ているんですね。『アメリカン・ビューティ』も『交渉人』も好きだったので、ぜひ見てみたいと思いました。

こうやって映画のお話を伺っていると、○○モノというテーマで続けて見たくなってきます。

投稿: ちんとん | 2005/04/15 22:07

>多感な奴さん

『ライフ・オブ・デヴィッド・ゲイル』、見ましたよ。正真正銘の「死刑廃止モノ」ですね。サスペンスチックな面も引き込まれて見ました。

同じテーマの、良い映画を紹介してくださってありがとうございました。

投稿: ちんとん | 2005/04/27 01:07

観ましたか。
私はケビン・スペイシーが出てるということで観てみましたが
なかなかの作品だと思いました。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/04/27 23:02

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281.デッドマン・ウォーキング 製作年度 1995年 製作国・地域 アメリカ 上映時間 123分 監督 ティム・ロビンス 製作総指揮 ティム・ビーヴァン 原作 ヘレン・プレジャン 脚本 ティム・ロビンス 音楽 デヴィッド・ロビンス 出演 ギル・ロビンス ...... [続きを読む]

受信: 2006/11/22 10:37

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