『海の上のピアニスト』"The Legend of 1900"
船で生まれ、生涯、船から下りることのなかったピアノ弾きの話。主人公のナインティーン・ハンドレッドは「ピアニスト」ではなくて「ピアノ弾き」と呼ぶほうがぴったりくる。
普通、ピアノ曲というものは、同じ曲を繰り返し聞くことによって、頭の中に映像を描くことができるようになるものだと思う。しかし、この作品は、そのものずばりの映像を一緒に見せてくれるので、曲が語りかけてくる感覚を最初からつかんで楽しむことができる。
ディナーに来ているお客ひとりひとりを観察しながらそれを音に表していく場面、窓越しの少女の動きを音にする場面、嵐で大揺れになるホールでピアノと一緒にスケートしながらのワルツ。そこでは、音が言葉に置き換わったかのようにわかりやすい形で聞き手に語りかけてくる。音楽ってこんなに理解しやすいものだったのかと思う。ジャズピアニストとの対決もわくわくする。
映画のストーリーそのものより、ピアノを介した音で語られるモチーフを楽しむ作品だ。
「ピアノもの4作品」(←勝手に命名)のピアノの音を比べると、ピアノの語りかけが一番楽しめるのがこの作品。音に情念を感じるのが『ピアノ・レッスン』。正統派の演奏を聞けるのが『戦場のピアニスト』。本人の弾く演奏会に行きたくなるのが『シャイン』。甲乙付けがたい4作品だと思う。
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1999年
監督:ジュゼッベ・トルナトーレ
ナインティーン・ハンドレッド 1900(ピアニスト)/ティム・ロス
マックス(トランペッター)/プルット・テイラー・ヴィンス(「シモーヌ」)
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コメント
ネ
タ
バ
レ
含むコメントです。
>映画のストーリーそのものより、ピアノを介した音で語られるモチーフを楽しむ作品だ。
そうですね。ちんとんさんが書かれているとおり、
ピアノの旋律が表現しているモノがとても分かりやすかったですよね。
でも最後まで船を降りなかったことが
引っかかってます。ビミョーです。
投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/04/25 21:11
ネ
タ
バ
レ
注
意
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多感な奴さん、コメントありがとうございます。
そうなんですよね。降りないという気持ちは分かるのですが、描かなくても…と思います。
降りなかったのかなあ…どこへ行ってしまったのだろう…くらいで終わりにして、余韻を残したのではいけなかったのかなあと思います。
投稿: ちんとん | 2005/04/25 22:56
そうそう、余韻とかどっちつかずで終わらせたほうが
良かったんじゃないかなと私も思います。
投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/04/26 21:25