『ムーンライト・マイル』"Moonlight Mile"
結婚式寸前の娘を失った両親の深い悲しみが、拍子抜けするような淡々とした調子で描かれていく。事件の背景も、どんな娘だったのかも詳しくは描かれない。しかし、観ている側は次第に「それをいくら描いても、娘の真実を語ったことにならない」というメッセージが、語らないこと自体に含まれていることに気づかされていく。
母親のジョージョーが、人々が掛けるお悔やみの言葉のもつ「作りごと」に傷つき、苛立ち、プレゼントされた、いかにも「心を癒します」といったタイプの本をどんどん暖炉にくべていくシーンが出てくる。こちらのほうこそ「真実」なのだ。
「真実」はお望みの展開の中にはない。悲しみのストーリーを作って浸ったり、悲しみを克服するストーリーを作って鼓舞させたりしようとしても、それは作り物でしかない。
押さえた、すばらしい演技の中で「安らぎ」がどういうものなのかが、じわーっと心にしみこんでくる映画だった。
---
2002年
監督・脚本:ブラッド・シルバーリング(「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」「シティ・オブ・エンジェル」)
父ベン/ダスティン・ホフマン(「卒業」「レインマン」「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」「クレイマー・クレイマー」「ネバーランド」)
母ジョージョー/スーザン・サランドン(「グッドナイト・ムーン」「デッドマン・ウォーキング」「若草物語」「イーストウィックの魔女たち」)
バーティ/(「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」)
婚約者ジョー/ジェイク・ギレンホール(「遠い空の向こうに」)
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント