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2005/03/13

『クルーエル・インテンションズ』"Cruel Intentions"


 キャスリンとセバスチャンはマンハッタンの豪邸に暮らし、名門校に通う義姉弟。両親は2人にお金をふんだんに与えたまま、滅多に家には帰ってこない。美貌に恵まれた2人は権力もお金も握り、やりたい放題。

 そんなキャスリンがセバスチャンに持ちかけた賭が、「新しい校長の娘でまじめな生徒アネットの処女をセバスチャンが奪ったら自分の体を与え、失敗したらセバスチャンのジャガーをもらう」というもの。

 ヒトの気持ちを踏みにじっていく2人のやり方を見ていると、嫌な気持ちになっていくのだが、あの均整の取れた顔には見とれてしまう…などとぼーっと見ているうちに、思っていたのとは違った展開に。

 アメリカのティーンズ向けの映画は結構いろいろ見ているのだが、これはそういう軽いジャンルに入れてしまうのが少しためらわれるような何かがあった。たぶんそれは、セバスチャンのそうせざるを得なかった気持ちの部分に何かがあったのだろうと軽い感動に耽っていた。描かれてはいない部分に思いをはせながら…。

 ところが、オーディオ・コメンタリーがちょっとまずかった。監督が出てきて、愉快そうににこにこと「本当はこういう場面も挿入しようと思っていたのだけれど、そうするとセバスチャンがあまりにも嫌なやつに見えるのでやめた」というところが次々と紹介されていったのだ。「やっぱりただのそういう奴だったんじゃないか」となってしまった。感動してしまった私の気持ちはどうなるの?

 編集の仕方によってずいぶん印象が変わるのだと感心したが、こういうシーンは見たくなかったなあと思う。

[3/14追記]「私はこう理解し感動した」というところを以下に書きます。【ネタバレしているので反転させて読んでください】→セバスチャンがアネットに惹かれていく気持ちがよくわからなかったので、2度目はそこに焦点を当てて見た。

 老人ホーム訪問あたりでセバスチャンの心が微妙に変わる。ドライブのシーンではセバスチャンがこれまでの自分のめちゃくちゃな生活とは反対側にあるアネットの世界に「更生」したいと思い始めているように見える。アネットがドライブする最後のシーンは唐突だが、この部分と呼応させたいのではないだろうか。

 最初、セバスチャンはキャスリンに魅力を感じていた。言われる通りに何でもしたいというほどに。しかしその魅力は、部分的にはキャスリンに手出しできないこととも関係があったのだろう。キャスリンのほうも実はセバスチャンが好きだったように思う。しかし、複雑に屈折しているキャスリンは、「思い通りにならない女だから」ではなく本当の意味で愛が欲しかった。

 セバスチャンがアネットに本当の意味での愛情を持ってしまったことを知ったキャスリンの表情から、このあたりの気持ちが感じ取れる。しかし、キャスリンは失恋するような女ではない。キャスリンはセバスチャンのことを「単なるオモチャだった」と思うことにした。

 クルーエル・インテンションズ(残酷な意志)は2人にこの映画のラストのような形で働いたのだ。

1999年/キャスリン:サラ・ミシェル・ゲラー「スクリーム2」「ラストサマー」/セバスチャン:ライアン・フィリップ「クラッシュ」「ラストサマー」/アネット:リース・ウィザースプーン「カラー・オブ・ハート」セシール:セルマ・ブレア

*「 」内はその人の作品のうち見たことのあるものの題名

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コメント

ラクロの『危険な関係』を現代に置きかえて、さらに登場人物を若くした映画ですよね。私も観ました。
セバスチャンとキャスリンの末路に私も単なるティーンズ向け青春映画とは違う重みを感じました。

レビューにも書かれていますが、オーディオ・コメンタリーも良し悪しがありますねぇ。聴いたおかげで理解が深まるものもあれば、苦労話で終始するもの。でも一番困ったちゃんは、映画の印象を変えてしまうくらいの暴露話だと思います。

一昨日観た『ソウ』のオーディオ・コメンタリーも実のところ、低予算・18日間撮影の苦労話に終始しており、最初観たときの衝撃的な印象が薄まってしまいました。(笑)
でもインディーズで映画を撮ることの苦労、低予算でも良い作品は作れるということが理解できたので聴いて良かったかなと思っています。

投稿: つっきー | 2005/03/13 12:18

コメントありがとうございます。つっきーさんもこの作品、ご覧になっていたんですね。

オーディオ・コメンタリーについては、だいたいにおいて良い印象を持っています。「ラブ・アクチュアリー」は、出演した人と一緒にカウチポテトでビデオを見ているような雰囲気を味わうことができて、2度楽しめましたし、「コールドマウンテン」は時間がなくて最後まで見ることができませんでしたが、まじめに映画を語っていました。

でも、この作品の場合は、書かれていない部分の余韻を楽しもうと思っていた、まさにそこが、描かれてしまっているんです。それも「良いほうの想像」とは逆の形で。削ったのだから、そういうふうにしたくなかったということなんでしょうが…。

制作者の人たちも悩んでいることでしょう。

投稿: ちんとん@ホームビデオシアター | 2005/03/13 12:52

コメントを書いているうちに、ネタバレ部分につっこんだ内容をもっと書きたくなったので、反転表示で書き足しました。

投稿: ちんとん | 2005/03/14 18:09

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