『オペラ座の怪人』"The Phantom of the Opera"
ウエスト・エンドの劇場でこのミュージカルを見たことがある。ファントム(怪人)の声は本当に素晴らしかった。生のオーケストラをバックに歌う切々とした恋の歌は心に染みわたり、怒りの歌はオペラ座全体を貫く。まさに、怪人はオペラ座の魂そのものだった。ファントムに歌の魂を授けられたクリスティーヌは初舞台に立つ。まだ咲いたばかりの花のような、震える若さが初々しく美しい。それがまた声にあらわれていた。
その「声」によって綴られる物語は、ひとに恋をしてしまったファントム(怪人)の悲恋の物語だった。私がクリスティーヌなら、自分の才能を引き出し、愛してくれる人が化け物だとわかったとしても、闇の世界に身を投じて、音楽の世界で生きていきたいと思うだろうにと感じさせる声だった。
映画はかなり忠実にアンドリュー・ロイド=ウェバーの舞台を再現していた。しかし、映画になったことで、アップで映し出される表情によって語られるものが増し、殺人の生々しさが増し、また、怪人の人間という側面が強調されることになった。それによって、殺人には裁きの感情が必要になり、マスクの下の顔に対する配慮を示すストーリーが必要になった。そして、話は明確になり、2人の男に思いを寄せられ引き裂かれる若い女性の物語になった。
映画は映画で良かったのかもしれないけれど、これを見て、私はすぐにでもまた、あの舞台のファントムに会いに行きたくなってしまった。
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2004年
制作・作曲・脚本/アンドリュー・ロイドウェバー(「ジーザス・クライスト=スーパースター」「エビータ」「キャッツ」「スターライト・エクスプレス」「ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート」「サンセット・ブルーバード」)
監督・脚本/ジョエル・シュマッカー
怪人/ジェラルド・バトラー
クリスティーヌ/エミー・ロッサム(ディ・アフター・トゥモロー」)
ラウル/パトリック・ウィルソン
ファーミン/サイアラン・ハインズ(「ミュンヘン」「ロード・トゥ・パーディション」「オスカーとルシンダ」
*「 」内はその人の作品で見たことのあるものの題名
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コメント
TB&コメントありがとうございます。本場の舞台を観ているのですね。ちんとんさんは英語が得意みたいでうらやましいですね。私は半分くらいしか分からないです(汗)。映画版はファントムの人間性が強く出ていたという指摘は興味深いです。
投稿: 多感な奴 | 2005/02/08 20:43
得意というほどわかりません。何度も見て、何度も聞いて、気合いで聞く!という感じです。
好きなミュージカルはたくさんあるのですが、一番好きな人物はオペラ座の怪人。だから、映画版のように、あまり、にんげん、にんげん、してほしくないなんて思ってしまいます。
投稿: ちんとん | 2005/02/09 19:45
そうですか、最近のDVDは英語字幕が表示されるものがよくあるので便利ですよね。
映画版ではサーカスから逃げ出した生い立ちのシーンがあって舞台版にはないということですが、仮面を取る(取られる)シーンも舞台版ではないんですか?もしそうだったら、舞台のほうが神秘性がありますよね。顔のアップもないし。
投稿: 多感な奴 | 2005/02/09 21:01
そうなんです。サーカスから逃げ出すシーンはありません。だから、人間というよりは怪人であり、オペラ座に棲む神秘的な音楽の精、ただし悪い奴というような感じかなと思っていました。でも、仮面を取るシーンはあります。ただ、アップにはなるわけではないので、あまり生々しく感じないんです。
投稿: ちんとん | 2005/02/09 22:02