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2005/02/13

『白いカラス』"The Human Stain"

 白人の容姿を持って生まれついた黒人コールマンは黒人であることを隠してハーバード大学に進学し、小さな大学の教授となる。ところが、講義中に発した一言をもとに黒人差別者として糾弾され、30年以上も勤めた大学を辞職に追い込まれる。しかし、黒人であることを告白さえすれば救われるという、その期に及んでも自分が黒人であることは告白できない。それほど、その嘘をつかざるを得なかった苦悩は重く、その嘘をつくことによって心の中に広がっていった「シミ(stain)」は深いものだったのだ。

 コールマンだけではない、特権階級に生まれながら、性的虐待を受け、家を飛び出し、結婚してからも不幸に陥っていったフォーニア、そしてベトナム戦争から帰ってきたその夫。すべてが深く沈潜していく「シミ(stain)」を抱えている。

 しかし、壮絶な過去を持ちながらも、彼らは静かで、その感情は内部に埋め込まれているように見える。悲しみに疲れ果て、他人との交わりを拒否する孤高の人々。その魂と魂が触れあう時、初めて小さな平安が訪れるのだろう。

 「シミ」を抱えた人達の、奥底に秘められた人間的感情を、押さえた演技の中からにじみ出すように、しかし確実に感じさせる名優たち。アンソニー・ホプキンス、ニコール・キッドマン、エド・ハリス、ゲイリー・シニーズ、すべてがすばらしい演技だった。
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2003年
監督:ロバート・ベントン(「クレーマー・クレーマー」)
コールマン・シルク/アンソニー・ホプキンス(「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」「ハンニバル」「羊たちの沈黙」「日の名残り」)
フォーニア/ニコール・キッドマン(「ステップフォード・ワイフ」「ムーラン・ルージュ」「アイズ・ワイド・シャット」「コールド・マウンテン」「ドッグヴィル」「めぐりあう時間たち」「アザーズ」「プラクティカル・マジック」)
フォーニアの夫/エド・ハリス(「めぐりあう時間たち」「スターリングラード」「ビューティフル・マインド」「トゥルーマン・ショー」「ザ・ロック」「アポロ13」「奇跡の詩」)
/ゲイリー・シニーズ(「グリーン・マイル」「クローン」「ミッション・トゥ・マーズ」「スネーク・アイズ」「アポロ13」「フォレスト・ガンプ一期一会」「二十日鼠と人間」)

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コメント

ばんわー。この映画観ましたけど、内容をいまいち覚えてないです。ただ、なんでアンソニー・ホプキンスが黒人なんだろう???って不思議に思ったのを覚えてます。若いころの回想シーンは確かに黒人でしたけど。
私もニコール・キッドマン好きですけど、ちんとんさんのブログでまだ取り上げてない出演作品で好きなのは『バースデイ・ガール』と『アイズ・ワイド・シャット』です。

投稿: 多感な奴 | 2005/02/13 00:30

多感な奴さん、いつもありがとう。

ウェールズ出身のアンソニー・ホプキンスは、いかにもそういう顔立ちですものね。
ニコール・キッドマン、好きなんですが、その2作品はまだ見ていないんです。特に『アイズ・ワイド・シャット』はかなり評判になっていたので、ぜひ見たいと思っているのですが。

投稿: ちんとん | 2005/02/13 14:19

『アイズ・ワイド・シャット』はキューブリック監督の遺作ですよー。とうとうブログの本格的お引越しをすることにしました。

投稿: 多感な奴@CINEMA IN/OUT | 2005/02/14 20:53

多感な奴さん

『アイズ・ワイド・シャット』、今日、ビデオを借りてきて、引き込まれるように見ました。あのピアノの音、恐い。
お引っ越し先、もうお邪魔させていただきました。

投稿: ちんとん | 2005/02/14 23:58

こんにちは。

二人の過去はとても辛いものだと思いましたが、なんとなく二人とも自分で自分を追い込んでいるように思いました。
心を許せる人との出会いがなかったからなんでしょうが・・・。

『その魂と魂が触れあう時、初めて小さな平安が訪れるのだろう。

私もそう思います。
苦しんできた二人が、ホッとできる相手を互いに見つけることが出来て、私もホッとしました。

投稿: ムム | 2005/05/30 17:41

ムムさん、いつもありがとうございます。

2人が受けた心の傷は大きく、深すぎて、口にする方法もわからないほど重いものだったのだと思います。

コールマンは自分が黒人であることを口にした途端にすべてを失うことを恐れ、隠すだけの人生を送ってきたため、逆にそれを口にすることによって、すべてを失うことを免れたかもしれなかった今回のできごとに対して、それができなかったほど深い傷を負っています。フォーニアはすでに受けて来た大きい傷の上にさらに大きな傷を受けた時に、傷の元のところに向かってSOSを送ったのに拒否されます。

ここまで来たら、もう、「心を開く」という以前の「心を見せる」こと自体が難しいほど、心の中が未整理のままぐちゃぐちゃになっていたことと思います。そんな2人だったから理解できたのでしょう。もしかすると、ことばという形にする前に、体のを通して、魂の触れ合いを感じたのかもしれないと思わせる描き方だったと思います。

投稿: ちんとん | 2005/05/30 19:12

さるおです。
『ぼくの神様』、さるおはまだ観てないんですが、最後のほうに光るセリフがあるんなら、それを殺しちゃうタイトルは絶対ダメだよねぇ。作品が台無しになっちゃうもん。
さるおも『チョコレート』はまぁまぁだなーと思いました。『MONSTER'S BALL』の方が深いようには感じますが、『チョコレート』も悪くないですね。
邦題ってほんとに難しいね〜。
つくづくさ、だめだよね、『白いカラス』じゃ。

投稿: さるお | 2005/07/21 04:58

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